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移ろいやすき小春日和
1>>来訪者
今日も今日とてデーデマン家は騒がしい。

【かかったな、セバスチャン!】

「今日こそ滅してやる!」

異次元生物ヘイジと、怒り狂う最強の執事セバスチャンの追いかけっこ。

しかしその瞬間、追いかけっこという可愛らしい表現には物騒な武器が宙を裂く。それを紙一重でかわすヘイジ。
ちなみに使用人たちは2人の後を追っているが、その勢いに追いつけずにいる。むしろ追いつけたとしても、実際に追いつきたくはない。



また一方で、デーデマン家の正面玄関。
ちょうど訪問した客はヨハンにより迎え入れられ、客間へと足を運んでいた。

そしてあろうことか、その2組は鉢合わせすることになる。


来客は1人の少女だった。

金髪碧眼。穏やかな微笑みに、和やかで落ち着いた雰囲気。その仕草は楚々としていて立ち姿も美しい。

しかし案内された客間へと通され、勧められるままにソファへと腰掛けようとした瞬間。
荒々しくドアが開いたかと思うと、飛び込んでくる異様な物体。それを追いかけるようにして飛んでくる武器には言葉を失った。

対する異様な物体(ヘイジ)を追って部屋に飛び込んできたセバスチャンも、少女とは違う意味で固まった。
彼にしては珍しい失態。
誰の客かは知らないが、一見する限りでは真っ当に見える客がいる。こんな非日常的な姿は、客の前に晒すべきではない。


さてどう誤魔化すか、その刹那とも言える一瞬で、逡巡したセバスチャン。

「…これは失礼致しました。私は当家の執事でセバスチャンと申します。
お客様は、今回はどういったご用件でしょうか?」

今まさに目の前で繰り広げられた光景について、しらばっくれることにした。




しばらくは茫然とセバスチャンを見つめていた少女。

ハッと我に返ったかと思うと、先程自分が腰掛けようとしていたソファの上に転がる、異様な物体(ヘイジ)を凝視し始める。
部屋に飛び込んだ瞬間、ソファへと着地した彼女(?)は、セバスチャンが投げ込んだ武器によってソファに縫い付けられるという、一種グロテスクな光景を披露してくれている。ちょっと中身がはみ出している様は、ヘイジに慣れている使用人たちでも拒絶反応を起こしてもおかしくない光景だった。

しらばっくれるにしても、アレを処分してからにすべきだったか。

続く少女の反応を予測して、小さく舌打ちするセバスチャン。
少女はヘイジを凝視しているので、そんなセバスチャンの行為に気付いていない。


しかし、セバスチャンの予測に反して。

「まぁ…、新種の動物か何かですの?」

ほっこりと、周囲を和ませるような微笑みを浮かべたかと思うと、穏やかにそう言い放ったのだ。

その反応の異様さに、ちょうど追いついてきていた使用人たちはピシリと固まる。ヨハンでさえ、おやと目を見張った。
ちなみにセバスチャンは無反応。しかし無表情の裏で、ちょっぴり驚いていたりする。



【…見ない顔だな。お前、誰だ?】

中身が飛び出していようとも、そこはヘイジだ。
ムクリと起き上がった彼女(?)は、そう自分をニコニコと見つめる少女に尋ねる。

「まぁまぁ、言葉が話せるんですのね。私はユリアと申します。私はあなたを何と呼べばよろしいのかしら?」

【俺はヘイジだ】

「ヘイジさんですね。よろしくお願い致します」

ボトボトと中身が零れ続けているヘイジと、動じることなく接するユリアという少女。
そのままヘイジに近付くと、ヘイジの横…ソファに腰掛ける。穏やかな微笑みを崩さぬまま、会話を続けようかという雰囲気だ。

通常あり得ない光景を見せつけられている、使用人たちの心の声が重なった。


(強者だ…!)


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