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ハニィハニー

「…仁王って、ね子のことが好きなのか?」

しばらくの沈黙の後、ブン太が導き出した答え。
しかしそれには柳生も首を傾げる。

確かにそう受け取れなくもないやり取りだが。
普段はそんな素振りなど見せたこともないし、詐欺師と呼ばれる彼がこんな簡単に自分の気持ちをさらすとも思えない。いつもね子をからかっている延長だという方が、まだ納得できるのだ。

しかし…、


「でも仁王くんは、ね子さんの返答が気に入らなかったみたいで…」

続けられた柳生の言葉。
それにブン太も思い至る。ね子は仁王にいじめられると言っていたのに、今までの話でその部分は出てきていない。

それまでの話に続きがあるのだと悟って、続きを促すつもりで柳生に視線を向けた。
すると直ぐに目を逸らされる。

「? なんだよぃ?」

「ね子の頬に、仁王が噛みついたんだよ」

首を傾げるブン太の背後から、その答えが返された。
振り返ってみれば、そこにはニッコリ微笑む幸村がいる。


「…は?」

「だから噛みついたんだよ。ガブリと」

「はぁ!?」

「それこそね子は、いつもの意地悪の延長としか思ってないんじゃないかな?」

幸村の言葉を理解し、真っ赤に顔を染めて絶叫するブン太。
それでも調子を変えることなく微笑んだ幸村が、未だじゃれあう仁王とね子を見つめながら補足する。

幸村につられるように2人に視線を移したブン太。

仁王につっかかるね子、そんなね子を軽々といなす仁王。
どことなく楽しげな様子の2人に、ブン太の眉根が次第に寄っていく。なんだか面白くない。

しかしそれも直ぐに終結を迎えた。


「ニオなんか、大っ嫌い!!」

声高に叫んだね子が、肩を怒らせてブン太の元まで来たからだ。

いつものように泣きついてくるね子に、ブン太は小さくホッと息をつく。
視界の端で、柳がなにやらノートに書き込んでいるが、そんなものは無視だ。俺は何も見ていない!

それでも必死にしがみついてくるね子が可愛くて。
無意識にゆるむ口元が、そんなブン太の心境を如実に表していた。

しかしその表情も、次の瞬間にはピシリと固まる。


「そうか、嫌いか。仕方ないのう。この菓子は別の奴に…」

「ニオ、大好きー!」

現金なね子が、見事なほど態度を翻した。尻尾があったら全力で振っているに違いない勢いで、仁王に飛びつく。



「…俺、練習してくる」

満面の笑顔で仁王にじゃれつくね子に、そんな片割れの姿を見つめるブン太には哀愁が漂っている。

お菓子か、ブン太か。

幸村の質問に、かろうじてブン太の方が好きだと答えたそうだが、きっと本当はお菓子の方が好きに違いない。
そんな確信めいた思いに、ブン太の口から乾いた笑いが漏れる。

練習に戻るブン太に、駆け寄ってきたジャッカルが黙って肩を叩いて。
そんな光景が、更に漂う哀愁を際立たせた。




―ぴぎゃあっ

形容しがたい悲鳴を上げたね子が、再びブン太に泣きついてくるまで。

あと、3分。


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あきゅろす。
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