[携帯モード] [URL送信]

よく頑張っていい演奏したね会

地方大会2日目。
公園でたまたま至誠館のメンバーと鉢合わせた星奏学院のアンサンブルメンバー。

星奏学院のOBだという火原と衛藤に連れられて、火原曰わく
「よく頑張っていい演奏したね会」なるものを執り行うために中華街へと向かっていた。

見慣れない街並みに周囲を見回す高校生たちを従えて、時々振り返りながら
そんな様子を楽しそうに見つめる火原。
高校生たちがはぐれないように歩調を合わせながらも、真っ直ぐに目的地へと向かう衛藤。

すると街並みの中に、見知った姿を見つけた衛藤が声を上げた。

「香穂子!」

衛藤が上げた声に反応して、火原もパッと前方に向き直る。
様子の変わった大人2人に、後ろを歩いていた高校生たちはなんだなんだと様子をうかがう体勢に入った。

「あれ、和樹先輩に桐也?
どうしてこんなところにいるの?」

すると、人波からひょこりと1人の女性が顔を出して合流する。
不思議そうに2人を見上げて、後方に控える高校生たちを見て合点がいったように表情を明るくさせた。

「あの子たち、昨日のコンクールの…」

「そう。おれの教え子なんだ。今から“よく頑張っていい演奏したね会”なんだよ」

「ふふ、そうなんですか。
…だったら、私もご一緒してもいいですか?」

「今日は冬海先輩たちと会うんじゃなかったのかよ」

「それが2人とも急用が入ったみたいで」

そんな会話を繰り広げた大人たち。
そうして香穂子も一緒に食事をすることになったのだ。



そしてその一方で、高校生たちの間ではこんな会話が繰り広げられていたりする。

「ね、律くん、響也。
あの女の人…日野香穂子さん、じゃないかなぁ…」

「ああ、おそらく…」

さすがにヴァイオリンを専攻する3人は、合流した女性が誰だかわかったようで声を潜めて囁き合う。
そんな会話を耳にした新が、きょとんと目を瞬いて質問した。

「なに? 有名な人なの?」

「まだ若手だが、世界的なヴァイオリニストだ。星奏学院の卒業生だが…」

「星奏学院出身のヴァイオリニストには有名な方が多いですよね…」

「あの衛藤さんもそうだしな」

そんなことをコソコソと囁き合っているうちに、高校生たちに振り向いた3人から
香穂子も参加するということが説明されたのだ。
その際に香穂子からも昨日のそれぞれの演奏について褒められて
特に弦楽器でコンクールに臨む星奏学院のメンバーたちは恐縮するしかなかった。

そうして改めて目的地へと向かい始めたメンバーだが、こうなると物珍しい街並みも気になるが
それ以上に、前を行く3人が気になった。
自然と3人の会話に耳をそばだてることとなる。


「昨日は楽しかったよね。どうせなら全員そろえば良かったけど…」

「王崎先輩も月森先輩も、ちょうど忙しかったみたいだからな」

「みんなでアンサンブル組んでたことを思い出して、懐かしかったなー。今度はみんなそろうといいね」

(もしかして王崎信武と月森蓮のことかな?)
(え、もしかして一緒にアンサンブル組んでたのか?)
(なんですか、その豪華すぎるメンバーは…)


「でもみんな変わらなくて安心したな、冬海ちゃんは明るくなって良かったけど」

「志水先輩も相変わらずだったしな…。あの人にはもう少し変わって欲しいくらいだけど」

「あのあとまた新しい曲想が浮かんだって、曲書き始めちゃって大変だったよねー」

(もしかしてクラリネット奏者の冬海笙子と、作曲家の志水桂一のことでしょうか…)
(もしかしなくても、さっきのアンサンブルのメンバーとか?)
(いや、だから豪華すぎるだろう…)

そんな会話に聞き耳を立てているうちに、目的地へと到着する。

食事の間中、まさか話に聞き耳を立てていたというわけにもいかず
真偽を確認することもできなくて、高校生たちは悶々としたまま食事をすることになったのだった。










→アトガキ

[次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!