[通常モード] [URL送信]

伸ばした手のひら
3>>玉依姫の役目
「お待たせ致しました」

準備を済ませ、儀式の斎場に姿を現す。

その姿は、この世のものとは思われぬほどに美しく。
その姿は、ピンと張り詰めた糸の上にあるように、少しでも触れたら崩れ去ってしまいそうで。

誰も、その姿に声を掛けることは出来なかった。




静かに開かれた、斎場までの道。

儀式の壇上に上がり、周囲を見渡す。
その壇上から、美鶴とアリアの姿を見つけた。


最後まで心配してくれた2人。

その2人への感謝を。
そして、心配はいらないと示すように。

柔らかく、微笑みかける。


穏やかに笑う珠紀の姿に、2人は瞠目し。
次いで、その姿を見ることが耐えられなくなったのか、フイと視線を逸らす。

そんな姿に、珠紀は心の中で謝った。



自分は納得して、今、この場に立っている。

けれど、
彼女たちはきっと、そうは思ってはいない。

そんな彼女たちにとって、今の自分の姿を見ることは苦痛だろうと思ったから。




次いで、視線を動かして視界に留めたのは自らの守護者。

確かめるように1人1人の姿を見つめて。
微笑みをたたえたまま、静かに頭を下げる。

珠紀は、そんな彼女の姿に訝しげに眉をひそめた守護者たちに気付かなかった。



次いで、祖母である先代玉依姫。

強い眼差しで彼女を見つめ、対する彼女は静かな眼差しを返す。
そんな態度の変わらない彼女の様子に苦笑するように微笑んで、深く、深く、頭を下げた。







そして、静かに開始された儀式。

遠くで、鬼切丸の鳴動を感じ取る。


儀式のやり方など知らなかったけれど。

玉依姫の血が。

自然と体を動かした。




ああ、やっぱり自分は玉依姫なのだ。

そんな事実を再確認して、苦笑する。


光に包まれたその姿。

もう、珠紀から、周囲の様子はうかがうことは出来ない。


[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!