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優しいヒト

「はい、いっぱい食べてね」

そうして目の前に差し出されたご馳走に飛びつく。
空腹に夢中になってむしゃぶりつけば、頭上でクスクスと楽しげな笑い声。

「ほら、そんなに慌てなくてもたくさんあるから」

すごく嬉しそうなお姉さんの声に顔を上げる。
ニコニコ笑って見つめてくるお姉さんの様子に首を傾げれば、手を伸ばしてボクの頭を撫でてきた。

少しくすぐったくて首をすくめる。
でも心地良くて、目を細めて手のひらの感触を楽しんだ。

「ほら、まだあるよ」

そう言ってお姉さんがひとつまみ差し出してきたご飯に、パクリと食いついて食事を再開した。
その間も、お姉さんの優しい視線を感じることが出来る。


「神子殿、そろそろ…」

お姉さんの後ろに控えていた男が、遠慮がちに声を掛けてきた。
口の中にいっぱいに含み、もぐもぐと口を動かしつつお姉さんたちの様子を眺める。

お姉さんは龍神の神子ってヒトなんだって。
怨霊ってコワイのを退治してくれて、ゴキョーの力っていうのを集めているんだって。
京のあちこちを回っているらしく、友達がいろんなところで見かけたと教えてくれる。

その忙しい合間を縫って遊びに来ては、こうしてご馳走を食べさせてくれるんだ。




「ごめんね、そろそろ行かなきゃ」

お姉さんがくれたご飯を粗方食べ終わった頃、そう言ってお姉さんは腰を浮かせた。
ボクがご馳走のお礼に花を差し出すと、嬉しそうに笑って受け取ってくれる。


「ありがとう。
また来るね、ウサギさん」

再び頭を撫でられて、ボクは手のひらに擦りつく。
去っていく後ろ姿が見えなくなるまで見送って、ボクは巣穴に潜り込んだ。










→アトガキ

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