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特別で、特別じゃない

「誕生日おめでとう」

いきなりの祝辞にキョトンと目を瞬いた。



今日は2月29日。
4年に1回の、本当の誕生日。

そのせいか、普段は親しくない人からも誕生日を祝う言葉をいただいていたが。
この、今目の前にいる人からの言葉は予想外だった。


彼女の名前は坂本千紀。

高校に入ってからの編入組で、あまり会話に参加せず独特の雰囲気のために周囲から微妙に浮いている少女だ。

それでも別に周囲を邪険にするわけでもなく、こちらが話し掛ければきちんと対応する。確かに愛想はないが、人で対応を変えることもなく人の悪口なども口にしない。
そのため、クラスメイトたちからは好意を持って受け入れられていたりする、そんな少女。

そして、彼女が声を掛けてきたことに当人である不二が驚いている理由といえば。
何故か、自分は彼女に嫌われているようだと自覚していたからだった。


「あ、ありがとう」

しかしさすがの不二。
直ぐに我に返った彼は、戸惑いながらも笑みを浮かべて礼を言う。

そのそつない対応に、彼女はただ片眉を上げただけだった。







「ねぇ、閏年が誕生日ってどんな気持ち?」

直ぐに立ち去るものと思っていた彼女は、何故かその場に止まり投げかけられた質問。
その質問の意図がつかめなくて、不二は首を傾げた。



「やっぱり特別な日だし、優越感とか感じる?
それとも本当の誕生日じゃない年は淋しかったりするのかな」

無表情で淡々とした質問。

その内容に馬鹿にされているように感じて、不二は内心眉をひそめた。
しかしそれを表面には出さず、穏やかな笑みを浮かべたまま質問へ返答する。

「別にそんなことはないよ。誕生日は誕生日だからね」

その、どこか突き放したような返答に、彼女はふぅんと気のない言葉を漏らす。


「なんだ。少しは共有できるかと思ったんだけど」

そして、続けられた言葉。
その言葉の意味がわからず、不二は軽く首を傾げる。それに気付いたのか気付いていないのか、千紀は淡々と言葉を続けた。

「私も、今日が誕生日だから」

その一言に、不二は目を見開く。


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