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ドジと巨人


朝の目覚めは突然やってくる。

『ウルキオラ様ぁ〜、いきなりそんなこと…照れちゃいまふわ〜うへへへ…』

―――ドンっ

『…ぎゃんっ』

鈍い音と共に体中に強い衝撃が走る。

どうやら昨日寝床に決めた木から落ちてしまったらしい。

頭を木の根っこで打ったのは本当に痛かった。

背中も打ちつけるわで不幸が続く。

『いったぁ…』

「……羽賀?」

『あ゛ぁん?』

ぶつけた頭を撫でていると背後から名前を呼ばれた。

ちょっと不機嫌だったため若干睨みつけてしまった。

まぁいいか、不機嫌な時に声かけた奴が悪い。

『……あんた誰?』

そこにいたのは色黒の巨人だった。しかしデカいな。ヤミーさんよりは小さいけど、なんか上から見下ろされると腹立つんだよな

「…大丈夫か」

私の質問を無視して手を差し出してくる。

どうやら手を貸してくれるらしい。

『どなたか知りませんが…どうも』

「同じクラスの茶渡泰虎だ」

『同じクラス?』

同じクラスにこんなにいかつい男子いたのか。
ていうかぱっと見、高校生に見えないし

あと思い出したけど、私昨日寝るか空見るかしかしてなかったんだ。

知らないのも無理ないか。

『ごめんなさい。まだクラスの人覚えてなくて』

「いや、構わない。それより木から落ちていたようだが大丈夫か」

茶渡くんのその言葉に顔がひきつる。
まさか見られているとは…

『見てたんですか!?』

「見たというより落ちた音がして、見てみたらそこに羽賀が頭を押さえていた」

『なるほど』

「それより木の上で何をしていたんだ」

『え?睡眠を…』

私がそう言うと茶渡くんは目を見開いていた。

何かおかしいこと言っただろうか。

「昼寝か…?」

『何言ってるんですか、いま朝ですよ』

「そ、そうだな…すまない」

『いいえ』

よし、今度ウルキオラ様に会ったら『私は人に時間を教えてあげたんだ、偉いでしょう?』って言ってみよう。

なんだか飛び蹴りとかされた後に頭を踏みつけられて終わりな気がするな。
ははは

「羽賀」

『へっ、なんでしょうか?』

「そろそろ学校に行かないと遅刻するぞ」

『そうなんですか、じゃあ行きましょうか。ちょっと待ってて下さいね』

「………え」

ぴょんと寝てた枝に登り、その近くの枝にかけてた鞄を持って飛び降りた。

「危なっ…!?」

―――ストン


『決まったぜ!着地!!』

綺麗で華麗すぎる着地にガッツポーズする私の隣で、茫然と立ち尽くす茶渡くん。

『さぁ、行きましょう』

「………一緒に行くのか」

『折角だし、クラスの人たちについて聞きたいことがあるのです。駄目ですか?』

「…構わない。」

そう言って歩き出した茶渡くんの隣に並んで学校への道を進む。

聞きたいことは、あのオレンジ色の髪をした人間のこと。

しかしなかなかどう切り出したらいいのやら。

『茶渡くんって仲がいい友達、クラスにいる?』

「ああ…、一護とかか」

『一護って?』

「オレンジ色の髪をした奴だ。教室ね後ろの方の席にいるだろう」

『オレンジ色の髪……?』

まさかまさかのビンゴですか!?
茶渡くんはターゲットの方とお友達ですか!

なんという偶然!
私って運良すぎですわ!

このまま色々聞き出してやるです。


『あの目立つ人…あの人一護って言うんですか?』

「黒崎一護」

『は?』

「あと目立って悪かったな」


茶渡くんじゃない声がして、振り返るとなんということでしょう。

ターゲットの方がすごい形相でこっち見てますわよ、奥さん

「おはよう…一護」

「おう、おはよーチャド。もう転校生と仲良くなったのか」

「いや、朝公園で倒れて『あーあーあー!!』

「公園でどうしたんだ?」

『ゆーあーどんとすぴーく!!』

茶渡くんが私の恥ずかしい朝のお話を黒崎くんに言おうとする。

必死で遮ってギリギリセーフなはずだ。

「何で英語?てかちょっとおかしいぞ」

『うるさい!何でもないったら何でもないんです!茶渡くんまた会う日までさようなら!』

「あ……あぁ」


喋るが早いか、走り出すのが早いか。

私は全速力で走って逃げた。

今日は朝から良いことが続いたかもしれない。

よし、これからあの巨人な茶渡くんから沢山情報を絞り出してやる。

あ、聞き出すの方がかっこいいかな?



*****

「なんだアイツ。変な奴だな」


朝、親父の暑苦しい挨拶をかわして学校に続く道を歩いていた。

すると目の前にはチャドと見知らぬ女子が一緒に歩いているのを見つけた。

(アイツ彼女出来たのかよ、へぇ)

同じ学年で見たことないから年上かとか考えながらどう声をかけようか思っていた。

んで声をかけてみたら、よくわからないことを言って学校へ走っていった。

「てかチャドなんで転校生と一緒に来てたんだ?」

「公園で会ったんだ」

「へぇ、そういやさっきもそう言ってたな。」

「ああ」


いつものようにぼーっと頷くチャド。

「なかなか面白い奴だったぞ」

でもその後小さく笑った。

「そう…なのか?」

面白いと言えばあの英語くらいだろうか。

「まあいいや、早く行こうぜ!」

「ああ」

チャドの背中を押して俺達も学校に向かった。



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