笑顔と予感
「ルイス、起きろ命令だ」
『……もうちょっとー』
「無理やり引きずり起こされたいのか」
『ふぎゃっ、ちょっ、ウルキオラ様!引きずり起こすの前に足がすでに私を蹴り飛ばしてますよ』
今朝もいつものごとくウルキオラ様に蹴り起こされた私です。
『あの、ウルキオラ様』
「なんだ」
『この制服は……どこから?』
「細かいことを気にするな」
聞いちゃ駄目みたいなので話を変えてみる。
『ウルキオラ様、どうですか似合います?』
「あぁ、子どもっぽくさらにマヌケな感じで最高だな」
一つもほめられてない。なんだ、これイジメか!?
『鬼だ…ちょっとぐらいほめてくれたって…』
「何か言ったか」
『いいえ、何も』
ウルキオラ様のチョップを両腕で防いだと思ったら「甘い」と言って蹴りが入る。
足癖悪すぎですね、ウルキオラ様。
そして私は今、ガルガンタを通って来て空座町の上空にプカプカと浮いています。
『ウルキオラ様ー、しつもーん』
「なんだ」
『ウルキオラ様は私を見張るって言ってましたがウルキオラ様の霊圧ってすごいじゃないですか。死神の方にバレません?』
「いちいちうるさい奴だ。さっきも言っただろう。細かいことを気にするなと」
今度は腕を取られ、なんか背負われたかと思ったら背負い投げですか!?
すごいスピードで私は地面に向かって落ちてるんですけど!
『ちょっと!?なにするんですかぁぁあああ!!』
「逝け」
『字が違いますよ!』
体勢も直せないまま私は地面に墜落。
そして、墜落した真横にウルキオラ様が着地する。
「おい、馬鹿ルイス。お前の任務と潜入時の設定を言ってみろ」
『げほ、げほ。痛いー、この暴力上司ー』
「さっさと言え」
『人間の中に潜入しオレンジ頭の人間を監視そして弱みを探る。潜入後は、羽賀るいすと名乗る』
「まあ、そんな感じだな。では、いってこい」
『はい』
めんどくさいなって思ってるのがバレたらきっとすごく怒られるんだろうな。
「目標に接触したら俺に報告しに来い」
『どこにいるんですか?』
「いなかったなら探せ」
え、探せって?え?
「おそらく学校近くにはいるはずだ」
『マジですか!?』
「当たり前だ。響転だってあるんだ、簡単だろう」
なんつう無茶言うんだこの人は!?
『え、ちょっと無理ですって!んじゃあ、お昼に屋上にいてください』
「嫌だ」
『嫌じゃなくていて下さいね!絶対ですからね』
「考えておく」
念をおすとそう言ってウルキオラ様は目の前からいなくなった。
私は、地面から起き上がり今日から潜り込む“学校”という場所に向かって歩き出した。
『ところで私はどこに行けばいいんだっけ』
任務の説明しか聞いてない私は、学校にきたはいいけどこれからどこに向かって歩けばいいのかしら。
『ウルキオラ様、肝心なことの説明してくれないよね。いつも』
きっと聞いたら自分で考えろクズ並みに言われるんだろうなー。
そう呟いていると背後から声をかけられた。
「どうしたの?あれ、見たことない子だ」
目に入るのは女の子としてはとても憧れるむ、むねが!?
てかデカ…くないですか?
『えっと、えっと』
「あー、もしかして転校生の子?わー、かわいい!私、井上織姫っていうの。良かったら仲良くしてね」
『え、私は…羽賀…るいすです。あの、よろしく』
「なんだかかわいい名前だね!」
な、なんだろう。初めてほめられた気がする。
『あ、ありがとう。』
「それでどうしたの?道に迷ったのかな?」
『そ、そうなんです。良かったら最初にどこ行けばいいのか教えて下さい』
「多分職員室だと思うよ。じゃあ一緒にいこう!」
その女の子の理想と言えるような子は私を握って歩き出した。
なんだか馴れ馴れしいと思ったけど、連れて言ってくれるみたいだからそれでいいや。
「じゃあね〜」
たどり着いたのは“職員室”という札がついた扉の前だった。
井上さんは手をブンブン振りながらどこかへ行ってしまった。
できればもう少し案内して欲しかった。
『ここに行けばいいのか』
井上さんが私をここに放置したということはここに行けばいいと言うことだと思い、私は思いっきりその扉を開いた。
*****
「転校生を紹介するぞー」
越智サンがそう言いながら教室に入ってきた。
転校生って言葉にケイゴが「美少女希望」とか騒いでるがあんまり興味ない。
「入ってきて」
越智サンが廊下に向かって声をかけるとカラカラと扉が開く音がした。
入ってきた人物を見て教室がざわつく。
「黒板に名前書いて名前言って簡単に自己紹介して」
『はい』
声からして女子だ。
遠くからケイゴの喜ぶ声が聞こえる。
カツカツと黒板に転校生が名前を書く。
“羽賀るいす”という名前の転校生らしい。
それにしても、
「ちいせぇな」
身長がちっさい。
『羽賀るいすです。よろしくお願いします』
小さくお辞儀をしたその女子の笑顔はこっちを向いていた。
(気のせいか…?)
スッと細められた目に何か不思議なものを感じた。
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