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四月沢村






ひたすら元気が取り柄の沢村が浮かない顔をしている。部活の最中でちらっと見る程度だが間違いない。
何かあったのかと心配になり、俺の部屋に呼び出した。

「お前何かあったの?元気なくねぇ?」
「………別に」

口をへの字に結んでブーたれて何が別にだ。

「言ってみろよ」
「嫌だ」
「言えって」
「嫌だって」
「言わねーとチューして今すぐおっぱじめんぞ」
「…あのですね」
「うん?」

俺の説得によりようやく話し始めた沢村の頭を撫でてやる。

「今朝、寝坊しそうになって倉持先輩に叩き起こされて、その時」
「うん」
「"何やってんだ沢村ぁ!今日から乾布摩擦だって言われただろうがっ!今すぐ上半身裸でタオル持って食堂に集合っっ!!"って」
「……は?」
「で、俺半分寝ぼけてたけど慌てて起き上がったら皆いなくて"ヤッベー乾布摩擦遅刻する!"って思って…」

吹き出しそうになるのを必死でこらえた。乾布摩擦って。しかも春だし。
4月馬鹿とはよく言ったもんだ。

「上脱いでタオル持って走って食堂行ったら、メンバーが皆いて、爆笑してた」

目に浮かぶぜ、その光景。朝は用があって食堂に行かなかった事を後悔。

「絶対引っ掛かると思ったーって」
「つーか今どきエイプリルフールって…」
「なあ?もうホントに参ったよ…その後はくすぐり大会だよ」
「………は?」

上半身、裸だったんだよな?

「皆悪ノリしちゃってさ、下のスウェットも脱がされてくすぐられ放題だったぜ」
「な……っ!?」

ギリッ…

「ん?御幸、今何か音しなかった?」

あぁ俺の奥歯の音。つーか誰を殺ればいい?

「くそ!俺も誰か騙してぇな」

ちらっと俺を見た。ああ、俺に嘘つきたいのね。

「無理無理。お前顔に出るじゃん」
「そんな事ねーよ!出来る!」

つってる時点でもうエイプリルフールじゃねぇよな。今から嘘つきます、なんて。
沢村は必死で考えてる。手に取るように解るよ、ホント。
顔が少し赤くなってこっちを見た。

「なぁ"自分からキスする、やっぱ嘘"は無しな。言われた時点で俺押し倒すよ?」
「ぬうぅ…!」

図星かよ。またしばらく考えた後、初めて見るダークな笑顔でこっちを見た。

「なぁ"別れる、やっぱ嘘"も無しな。言われた時点で俺マジギレよ?」
「うぬぅ…!」

図星…!?その嘘はマジ許せねーな。

「なぁ諦めろって。馬鹿正直なお前に嘘は無理だって」
「くっそー…来年見てろ!」

来年もまた騙されると思うけどな。
それを言ったらさらに怒ってこの後のイチャイチャタイムに影響するので黙っておいた。
諦めろ、復讐は俺がしてやる。沢村の素肌に触れた罪は重いぜ。



end

2010 4.1






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