ブルームーンの満月
自販機の横のベンチで夜空を見てた。隣の御幸からは小さく何かを口ずさんでるのが聞こえる。
月が、まん丸だ。
「今日は満月なんだな」
「ああ、ブルームーンだ」
「ブルームーン?何それ」
「ひと月に2回満月がある時、その2回目の満月の呼び名」
「…へー。なんか綺麗だな」
「だな。見ると幸せになるんだってさ」
「マジ?じゃ俺幸せになれる?」
「はっはっ!なれるんじゃね?」
じいちゃんに小さな頃言われた事を思い出す。
「満月をまん丸ってわかる人は心がまん丸なんだってさ」
「へー」
「俺、それ聞いてから見ても満月かどうか自信なくなってさ、」
「あー、わかるわかる」
御幸が笑いながら同意した。
「満月かなと思っても端っこが欠けてるかも、これを満月って言ったら俺の心はまん丸じゃないのかも、ってさ」
「考えちまうよな、そんな事言われたら」
「うん、でも今は満月って思った」
まん丸な月をもう一度見上げる。
「考えちゃ、ダメなんだよな」
「そうだな」
御幸が静かに、月みたいに笑う。
「さっきの、ブルームーン見たら幸せになれるって言ってたのって、」
「うん?」
「こんな風に"満月だな"ってブルームーンを一緒に見れるのが幸せじゃね?」
そう言うと御幸の目が満月みたいにまん丸になって笑ってしまった。
でもすぐにいつもの不敵な笑顔になって言った。
「もっと幸せにしてやるよ。この先のブルームーンをずっと一緒に見れるように」
今度は俺の目がまん丸になった。顔が熱い。
まったく、アンタは負けず嫌いだよね。
熱を冷ますようにまた夜空を見上げる。
綺麗な青い月はそこにあるだけで無限の宇宙を思わせた。
幸せな未来すら目をこらせば見えるかのようだった。
end
2010 3.30
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