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theory





沢村は時々御幸を抱きしめる。
今も明日の予習の為に机に向かっていたら沢村がやってきた。
部屋に誰もいないのを確認すると御幸の肩を掴んで椅子ごと回転させた。
沢村の太陽を閉じ込めたような輝きの瞳が御幸をとらえている。

「何?」

微笑んで聞くと沢村は少し屈んで肩に置いていた手をゆっくりと背に回し御幸を抱き締めた。
為すがままにしているものの御幸の右手は所在無さげにシャーペンを回している。
ふわりと沢村の匂いに包まれた時に観念して瞳を閉じた。
シャーペンを静かに床に落とし沢村の背に手を回す。
心ごと、委ねる。

どのくらいそうしていたのか御幸が口を開いた。

「ぼちぼち襲うぜ?」

ゆっくりと離れた沢村が御幸の顔を確かめるように見つめ、小さく息を吐いた。

「アンタが人に弱みを見せないとか本心を隠すとか勝手だけど…」
「うん?」
「…何で俺にはそんなに解りやすいんだよ」
「そんなつもりはねぇんだけどな」
「嘘つけ……まぁいいや。こんな事でアンタの何かが消せるなら」

すっかりいつもの笑顔に戻った御幸が笑いながら言う。

「愛を感じちゃうね」
「…!言ってろ!」

少し顔を赤らめながらも強気の言葉で返す。


自分にだけ解るように不安を見せ癒しを求める、というのが沢村の説。
そんなそぶりは見せないのに敏感に察してやって来る、というのが御幸の説。
どちらが正しいのか。

御幸は静かに笑い沢村の腰を引き寄せて椅子に座る自分の足の間に導いた。

「なあ、今日はそれ以上何もしねぇからキスだけさせて?」
「………仕方ねぇな」

沢村は引き寄せられるまま少し屈んだ。そして御幸の唇に自らのそれを重ね合わせた。


end

2010.5.19





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