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如月の





珍しく夜中に目が覚めた。
そのまま目を閉じるがめぐり始める思考のせいで上手く眠りに入れない。
仕方なく隣に眠る沢村を起こさないようそっと起き上がる。
安心しきった寝顔に少し疲れが浮かぶ。
夕べはちょっと激し過ぎたかと眉をしかめる。
でも仕方ない。久々に会ったのだから我慢なんてきかない。
高校生の頃はこんな夜を過ごす機会が少ない代わりに毎日顔をつき合わせていた。
どちらがいいなんて思わない。沢村が傍にいればいい。

そこまで考えて自分の惚れっぷりに笑ってしまう。
こんな自分、想像もしていなかった。ここまで一人の人間に固執するとは。

自分がプロの世界に入り沢村には寂しい思いをさせているとは思う。
沢村はおくびにも出さないが。考えていた以上に沢村は強い。
いつも会いたくて欲しくて我慢できなくなるのは自分の方だ。
もしかしたら自分より強いかもしれない沢村の寝顔を見る。
昔から好きだった大きな瞳は閉じられていてもどこか勝気で。
守って欲しいなんてこれっぽっちも思っていないのだろう。
だからこそ沢村よりも強くあろうと思うのだ。

体が冷えてきた。沢村の温もりであたたかな毛布を被る。

「さむ…」

思わず漏れた声に沢村が目を開けた。

「…寒い?だいじょぶか、冷たい」

温かい両手が包み込むように自分の頬に添えられた。
沢村はそのまま寝息をたてた。
強くて優しくて温かい沢村の手。
その手から誘眠剤でも出ているのか、もう今日は訪れないと思っていた心地良い睡魔がやってくる。

ああ、この手は離せない。




end

2010 2.4〜2.28


あきゅろす。
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