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Room (R18)





「沢村さん、もう週末だけじゃなくてここに住めば?」
「嫌っス」
「…どうして」
「何か色々想像つくし。会社に住所変更すんのやだし」
「しなきゃいい」
「…でもバレたら困る。俺の給料で住める所じゃないしさ」

話題変えたい…。平日はゆっくり寝たいのだ。

「先生そんな事よりさ、」
「そんな、事?」
「…えーと語弊があったようですがそれよりお話が」
「何?」
「今週の金曜さ、転勤する先輩の送別会だから遅くなるんスよ」
「先輩ってあの?」

何か嬉しそうに見えるけど気のせいか?

「違う違う別の先輩。あの先輩いなくなったら俺マジで困るから」
「……どうして?」
「俺の仕事倍増。毎日深夜帰宅になるよ」
「ふーん…」
「会社の近所だから終わってからこっち来るよ。遅くなると思うけど」
「…了解」

比較的あっさりと終了。よかったよかった。前も一緒に住もうって言われた時に週末だけにするのが大変だった。
一緒に住むのは別にいいんだけどまだ自分一人の場所はとっておきたい気がした。



金曜日、皆で連れ立って会社を出る。近所のちょっと洒落た居酒屋までゾロゾロ歩いていたら、心臓が一回停まった。
……せ、せ、せん…!

「あれ?あの人沢村の通ってた歯医者の先生じゃねぇ?」
「ああああれぇ?そそう、みたいっスね」
「だよな、声掛けようぜ。御幸先生ー!」

ああああ先輩コロス。絶対わざとだよ、そうに決まってるよ。こんな会社のそばにいるのおかしいだろ!

「あれ?前にクリニックにいらした沢村さんの先輩の…」
「そうそう!奇遇ですね!沢村もいますよ」
「本当だ。こんばんは沢村さん」
「こここんばんは」

何が本当だ、だよ。ニッコリと笑った先生が恐ろしくそして妖しく見えるのはきっと俺だけなんだろう。
一緒に歩いてた女子社員達から黄色い声があがる。

「沢村君、お知り合いなの?」
「あ、うん。通ってた歯医者の御幸先生」
「こんばんは」

先生が今度は女子社員達の為に笑顔を向ける。また空気がピンク色だよ。

「沢村君よかったらぜひこちらの方もご一緒に…」
「あ、だけど予約の人数とかあるしさ」
「大丈夫!今日一人休んでキャンセル出来なかったから空いてるの!」

うわぁ最悪…。今日主役の先輩かわいそうに。きっと女子社員は皆先生んとこだよ。
掘り炬燵風のお座敷で案の定先生は俺の隣を陣取り、周りは女子社員で固められた。
かろうじて向かいに仲のいいあの先輩がいるけど、この場合は遠くにいた方がよかったかも知れない。
女子社員達が根掘り葉掘り先生に聞いている。酒がまわりはじめたらおおっぴらになってきた。

「御幸先生、好きなタイプは?」
「そうだな。目が大きくて天然入っててちょっとガサツで…」
「えー意外ー」

顔が熱くなってきた。まるで自意識過剰みたいだから話には入らず食うのに専念する。

「で可愛くて、エロい」

キャーと歓声があがると同時にテーブルの下にある俺の腿に手が置かれた。
思わずビクッと震えてしまった。払ってもまた腿を撫でてくる。
さっきのが俺の事だとしたら間違いです、俺はエロくない。
女子社員達の話に付き合いながら俺の腿を撫でるこの人をエロいと言うんだ。
たまに脚の付け根の方を撫でる時に反応してしまう。勘弁してくれ…。

「沢村ー二次会行く?」
「あっは、はい?」
「お前も行くんだったらさー」

…あ。ヤバイヤバイ先輩言うな。

「飲み会の度に毎回悪いんだけどさ、」
「いや、俺今日は帰…っ」

先輩っ!それ以上言うと来世でもコロス!

「今日もお前んち泊めてくんない?」

腿に置かれた手にギュッと力が篭った。聞かれてたね、うん。終わったね、俺。
あまりの恐ろしさに横を見れないが、先生がゆっくりこっちを向く気配がする。

「そうなんですか、よく沢村さんの家へ?」
「そうそう!俺んちは沢村んとこからさらに乗り換えだから終電間に合わない事が多くて」

きっとこういうのを針のムシロと言うんだろうなと遠い目でボンヤリと考えた。

「も、こいつんちのソファ俺専用ベッドですよ!ワハハ」

フフ、どこまで余計な事を?先輩…。

「そうなんですか、まぁでも沢村さん自身は俺専用だか…」
「ちょちょちょちょーっと!先生!?あっ!歯が、俺歯が痛いんスけどーっ!!」
「そうなの?」
「今からっ今から診てもらえませんかねっ!?」
「…いいよ」

先生はニッコリと笑った。眼鏡の奥の目は笑ってないけどね。
女子社員達が一斉に「えーっ」と声を上げる。会社に於いて女子社員を敵にまわしたらやって行けないのに明日から大丈夫か、俺。

「じゃすんませんっ!お先に失礼しますっ」

慌てて挨拶して店を後にする。とにかく会社の人達から離れなければ!

「先生!何とんでもない事口走ってんスか!」
「……」

振り向くと俺の怒りの比ではない程にお怒りのご様子。おかげで俺の怒りはシュルルルとしぼんだ。

「あいつ、毎回泊めてるの?」
「いや、毎回っつー訳では…でも一応先輩だしさ」
「続きは後でゆっくり聞くよ。行こう」
「え?どこに」
「沢村さんち」
「はぁ!?」

タクシーで我が家へ向かう。すげぇ気まずい。
俺んちなんて普通のマンションで何も面白い事はない。だがさすがの俺も何で先生が来たいのかは解るので何も言わない。

「ここ、この305っス」
「お邪魔します」

俺の城へ招き入れる。変な感じだ。
先生が冷たい目でソファを見る。それ先輩本人じゃないから。

「沢村さんはどこに寝てるの?」
「この隣の部屋のベッド」

続き間になってる部屋を見せる。

「ホントは最初、ベッドの隣に布団敷いたんだけど先輩のイビキが煩くてさ、ここ閉めて、ソファに」
「二度と、駄目だから」

先生が抱きしめてきた。

「…何もされてないよね?」
「あのさ、先生。ある訳ないじゃん、ただの先輩後輩だから」
「今日は二人でここに泊まろう」
「…わかったよ」

思わず背中に手をまわした。初めて、先生を可愛いと思ってしまった。
先生がフフッと笑いながら言った。

「沢村さんのベッドでするの、凄い新鮮」

…前言撤回。可愛いと思った純粋な俺の感情を返せ。

「でもウチ壁薄いかも…」
「へぇ、自分がよく声出す事自覚してるの?」
「ちげーよ!出さねーし」
「エロいもんね、沢村さん」
「はあ!?自分だろっ!」
「ああいう時、自分がどれだけエロい顔してるか知ってる?」

知るか!そう言おうと開いた口は塞がれた。
いきなり深いキスで、ついていけない。先生の舌が咥内を貪るように舐めまわし絡め取る。

「ん、…っふ」
「ほら、この顔。…俺を骨抜きにしようとしてるでしょ」
「な、に…」
「何でもない。いいよ、そのまま…感じてて」

再び唇が塞がれた。駄目だもう、何も考えられない。
どんどん脱がされてベッドに横たえられる。

「このベッド、沢村さんの匂いがするね。…凄い、興奮する」

そういう事は口にするなといつも言うのに聞く耳を持ちゃしない。
唇が首筋から胸元へ降りていく。時折舌を這わせたり吸い付いたりしながら。
先生によって変えられた体はささいな刺激も拾って快感にすり替えてしまう。

「あぁ…っ」

先生の手が下腹部に延びゆるやかに愛撫を始めた。
思わず漏れる声を気にして手元にあったシャツで口を覆う。すると先生がそのシャツを外した。

「声、聞かせてよ。…気になるなら俺の唇で塞ぐから」
「…っあ、あ」

その耳元で囁く言葉に、甘く低い声に感じてしまった。やってらんない。
溢れる先走りを塗り込めるように先端を撫で強く扱かれてもう限界だ。

「あっ、せん、せ…」
「イキそう?」
「…っん!」

一際大きな声が漏れそうになった所を先生が唇で塞ぎ、そのまま舌を絡ませ合った。
息つく暇なく先生の指が侵入してきて掻き回す。

「あ、…あぁっ」

敏感な箇所を先生が刺激する度に腰が浮いた。暫くの間弄られていたがようやく指が引き抜かれた。
ホッとするもつかの間、先生が入ってくる。

「んっ、ああっ」

挿入を終えた先生が小さく息を吐き、ゆっくりと動き始めた。
労るように頬に手が添えられ、罪悪感が募る。今日は嫌な思いをさせたに違いない。乱入した先生が悪いけどな。
だから、おそらく初めての言葉を贈る。最初で最後かも知れない。

「は…っせ、んせ、一度しか…言わねぇ」
「ん?」
「好き…、だぜ」

先生は驚いたように目を見開いてのち、優しく微笑んだ。

「うん。知ってたよ」

だよね。俺より先に気付いたもんな。
俺も笑おうと思ったけど途端に激しくなった動きに翻弄され目を閉じた。
漏れる声はやはり先生の唇によって塞がれた。


結局はこの人とこうして一緒にいるのが幸せなんだろうと思う。
だけど、まだしばらくこの部屋は解約しない。






end


4000hit 水無月霜葉さんへ リクエスト→歯科医パロ(沢村が好き過ぎて暴走する御幸) 
ご本人様のみご自由になさってくださいv リクエストありがとうございましたv






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あきゅろす。
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