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きらきら





十一月も半ば、色付き始めた街路樹が目にうつる景色を彩り始めた。
沢村に急かされて、まだ早いってのに今日の休みを使ってツリーを飾り付けていた。
街は確かに赤と緑に染まり始めて、沢村はまるで今出すのでも遅いかのように、慌ててツリーの箱を出してきた。
二人で飾りをつけたいからと、おれの休みを待ってたらしい。
「今年はおれがてっぺんの星を飾るから、御幸は来年な」そうニカッと笑う沢村に、去年もそう言わなかったかとツッコミはしなかった。
来年、また同じ台詞が聞けるかもしれない。そうしたら来年こそ指摘してやると決めた。
沢村と暮らし始めて何度目の冬だろう。
ひとつ、ツリーから外して手のひらに置いた。
こうして手の中に入れてしまえばそれはただの光る玉で、ツリーを飾っていたときのような輝きはなくなった。
きっとあるべき場所にあって輝くものであり、手の中に閉じ込めてしまえばその価値はなくなるのかもしれない。
自分だけのものにするなど、間違っているのかもしれない。
しばらく手の中の飾りを眺めていた。

「何してんの?飾り付け終わったろ」
「ああ」

箱をクローゼットにしまい終わったらしい沢村が戻ってきて、おれの手の中の飾りに目を遣り、小さく笑った。

「何だよ、綺麗でほしくなっちまった?」
「まあな。……でも、ダメだな」
「何が」
「ツリーから外しちまうと途端に色褪せる。どんなに欲しくても自分だけのものにするなんてできない」

指でつまんで光に透かしてみると、反射してキラキラと光りおれと沢村が覗き込む顔が歪んでうつる。

「そう?いいじゃん」

これだけたくさんあんだから、ひとつくらい自分だけのために輝くものがあったって、そう言って沢村はもうひとつ外して、キラキラの中を覗き込んだ。

「色褪せて見えるのは自分がそう思ってるだけだ。ツリーで本来の姿の時も、手の中にある時でも、何も変わらず同じように輝いてる」
「…………」
「なのに勝手に色褪せたとか、この飾りもたまんねえよな」
「沢村……」
「どうすんの。もうもとのツリーに戻すの。いらねえの。それとも、ずっと大事にすんの」

沢村はまるで見透かしたような悪戯な笑みで見つめる。

「ずっと大事にすんなら、ずっと輝いてんじゃねえの。アンタ次第だろ」
「……まじ、かなわねえ」

小さな溜息で、キラキラの飾りが曇り、そしてすぐに元の輝きに戻る。
シャツで軽く磨いてツリーに飾ると、沢村は持っていたものを、同じ枝にぶら下げた。
はずみでぶつかり、軽い音をたてるふたつの飾りをながめたあと、ニシシと笑いおれを見る。
ああ、降参だ。どうせ手放すことなんて出来やしないんだから。ずっと大事にするに決まってんだろ。
そして、おれの一番大事なキラキラの宝物を、腕の中に閉じ込めた。



end



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