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天使に回し蹴り





「かわいいなあ」

練習の休憩中、突如として聞こえた声に隣を見た。
沢村がタオルで汗を拭きながら呟いている。
その目線上にいるのはノリと何やら話して笑ってる眼鏡。いや御幸。
まさかな。うん、まさか。違うって。あの眼鏡にそんな事を思うヤツがいてたまるか。

「あー……沢村」
「なんスか、倉持先輩」
「何が、かわいいって?」
「は?御幸先輩に決まってんじゃないですか」

え。決まってんの。周知の事実だったか。
やべー今まで知らなかった。ハズカシー。

「ってそんなわけあるか!」
「うわ、何なんスかもう」
「お前が何なんだよ!かわいいわけあるか!あんなヤツ!」

そう言うと沢村はデカい目を見開いて心からビックリした顔をした。
そんな沢村を見てこっちもビックリした。
おかしい。水分も摂って汗も拭いたのに、喉がカラカラに渇いて汗も流れてきた。拒否反応か。

「はあ」

何か、溜め息が聞こえて。
あの沢村に首を左右に振りながら“わかってない”みたいな顔で見られた。
凄え屈辱。こいつシメる。

「見てくださいよ、倉持先輩」
「………何を」
「あんな切れ長の目と通った鼻筋にシワ寄せてクシャって笑ってんスよ!可愛くないスか!」
「………何も思わねえ」
「汗かいてんのに綺麗なままの髪でキラキラしてて、うわ、天使か!」
「………お前大丈夫?」
「あ、春っちが呼んでる!じゃ、すいやせん!」

小湊の所へ走る沢村をボーッと見てしまった。不本意にも。
沢村が発した言葉の理解を脳が拒否してるらしい。当然だ。





「かわいいなあ」

突如として聞こえた声に凄い勢いで隣を見た。
いつの間に隣に来たのか、御幸がニヤついた顔を隠しもせず呟いている。
その目線上には言わずもがな、小湊と笑い合ってる沢村。
いや、もういいよ。大体わかったよお前ら。だから言うなよ。

「何あれ。大口開けて、デカい目がなくなるくらいクシャクシャに笑って!天使か!」

聞きたくねえよ。俺の周り天使だらけかよ。ああもうエンジェル同志お似合いだろ。
言っとくけどお前ら以外誰も思ってねえよ。
ぜってーうまくいくから早くどっちからでもいいから告っちまえ。

「あー!あの天使のかわいい口にキスしてえ!」

苛つきメーターがMAXをぶっちぎったので、とりあえず二匹いるらしい天使のうち、隣に立ってる天使のケツを蹴り上げた。



end




あきゅろす。
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