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残像 1





陽が落ちるのが早くなった。
空はうっすらピンクの混じった夕焼けの色から青、そして藍色まで綺麗なグラデーションを描いている。
そこに半分闇を纏った灰色の雲が浮かぶ。
眺めていると、そのまま仰け反って後ろに倒れてしまいそうな圧倒的な空。
この季節、夕闇迫るこの時間の空と街が好きだった。

薄暗い街に灯る商店街の明かり。スーパーに本屋、蕎麦屋に威勢のいい八百屋とコロッケが美味い肉屋。いつも常連しかいない喫茶店に定食屋。小さな頃は世話になった床屋。
あっという間に通り抜けてしまうこじんまりした商店街を過ぎると、どこにでもある静かな住宅街。
あちこちから漂う夕餉の匂いに鼻と胃袋が刺激される。ああ、ここの家は今日カレーだなとか、煮物のいい匂いがするなとかぼんやりと考えながら歩くのが好きだった。
共通するのは暖かさなのだろうか。

自分にはあまり縁のなかったもの。

取り立てて不幸な生い立ちな訳でもなく、早くに父親を亡くし母親がずっと働いている為に夕餉の匂いの漂う玄関などに縁がなかっただけで。
仕事を終えた母親が慌ただしく食事の仕度をするのを手伝っていた。手の込んだ食事などより、空腹をすぐに満たせる簡単なものが何より有り難かった。
そのおかげか、高校生になった今はある程度の料理なら出来る。作るのはやはりすぐに食べられる簡単なものばかりだ。
むしろ夕餉の匂いに迎えられるのは母親であり、その生活を案外気に入っている。
だからこそ、こうして他の家の生活を感じながら歩く事が好きなのかも知れない。
ほんの少しの痛みを伴う懐かしさと、確かに何かを感じているのに言葉に出来ない、そのもどかしさすらも。

商店街の中で一番の賑わいを見せるスーパーの前に通りかかった。
さして買い足すものはないけれど、何となく店先のお買い得商品に目がいく。目立つようにか、赤で書かれた派手な手書きポップ。

(卵一パック五十八円とか、底値中の底値…)

夕方のタイムセールの一番の売りであろうその張り出されたチラシに見入る。
しかし家に卵は充分にあるし、二人暮らしでそこまで消費は出来ないと惜しく思っていた。
突然、住宅街方面からバタバタと慌てたような足音が聞こえ、何事かと振り向くと同じ高校の制服を着た男と小学生らしき男の子二人がチラシに走り寄ってきた。

「お、あったあった卵五十八円!…って『ご家族様一パック限り』かよ!『お一人様』じゃねえ!」
「えー?じゃあ兄ちゃん俺ら来たの意味ねえじゃん!」
「あー、どう見ても俺ら家族だもんなァ」
「まじかよ!公園行けばよかった」
「じゃ今から行って来い。五時までだから一時間位しかねえけどな」
「やった!行ってきまーす!」

来た時と同じようにバタバタと走り去る男の子二人の後ろ姿を、何となく呆然と見送っていると不意に声が掛かった。

「沢村?沢村だよな」
「っス。御幸先輩、家この辺なんスか」
「おう、ここから5分位のつつじ公園のすぐそば。沢村は?」
「あー、俺逆の方です。十五分位の所」

当たり前のように会話を進めるこの先輩は、一つ上の二年生で弱小野球部の先輩でもある。
都立高校で、定時制もある為に夕方にはあっさりと部活は終わる。狭いグラウンドを交替で使用している為に練習のない日もあり、沢村としてはそのユルさが気に入っている。
野球も出来て家事も出来る、理想的だった。

「弟さんですか」
「うん、下の二人」
「下?」
「あー俺さ、中三の弟、中一の妹、小四の弟、小二の弟がいんだよね。今の、下の二人」
「……大家族スペシャルとか出れそうっスね」
「いやいやせめて兄弟八人以上いねえと無理だろ」
「まだこれから増えたりとか」
「………恐いこと言うなよ。簡単に想像出来ちまったじゃねえか」

やめろよー、と言いながら張り出されたチラシを目で追っている。その目の動きが、まるで自分と同じようで少し笑ってしまった。
この人も、家の事を。

「あ、沢村さあ、今急ぐ?」
「いいえ、帰るだけです」
「卵買う予定は?」
「ないっス。家にまだあるんで。俺一パック買いますよ」
「まじで!助かるわー。十個とか一瞬で無くなるんだよ」

掌に六十円を乗せられて、まるで子供のお使いのようで頬が緩む。本当は三パック買うつもりだったのだろう。

「そうそう見ない底値ですもんね」
「なに沢村、底値とか。結構手伝いとかしてんの」
「うち母子家庭なんで。俺もかなり主婦っぽい事してますよ」

へー、と感心されているとタイムセールの卵の準備が終わったようで、人が群がりだした為に慌てて確保した。
目玉商品は出遅れると確保できないのは身をもって知っている。
購入した卵を御幸に渡すと助かった、と満面の笑みで礼を言われた。

「なあ沢村、主婦っぽいことってさ、飯作ったりもしてんの?」
「してますね。母が働いてるんで帰るまでに簡単なモノを作ったりします」
「まじか。すげえけど、部活大丈夫なの?」
「終わってから作れる程度っスから」
「まあウチ終わんの早いしな」

互いに頷きながら、ふと横で嬉しそうに二パックの卵を眺める野球部の先輩を盗み見た。
捕手であるこの先輩はかなりの実力があり、なぜこの高校に来たのだろうかと時々考えていたが何と無く解った気がする。
きっと自分と同じ理由だ。

(家族が、大事なんだ)

「沢村の家、逆っつってたろ。左?」
「あ、そうっス。つつじ公園は右ですよね」
「おう。まじで助かったわ、サンキュ」
「いえ、お疲れ様でした」
「明日な」

いつの間にか商店街の出口まで歩いていて、小さな交差点に差し掛かっていた。左右に別れ、それぞれの帰路につく。
左に進みながら、つつじ公園までの道を頭の中で辿る。先輩の家はどこかと考えながら大人数の家族がいる生活を思ってみたけれど、想像も出来なかった。
いつも誰かが家にいるのだろうか、一回の食事量はどれほどか、米は何合炊くのかとそんな事が気になったり、あまつさえ聞いてみようと思っている自分に驚く。
暮れかかったグラデーションの空はすっかり闇を纏っている。西の空に沈んだ夕陽の名残りを思わせる光が僅かに見てとれる程度で、吐く息の白さを際立たせた。
寒さに背を丸め家路を急ぐ人の群れに紛れ、自然と足早になる。
最後に『明日な』と笑ったその顔が学校で見るものとは少し違っていて。
その笑顔が、眩しい太陽を見たあと目蓋の裏に残る光のように、瞳を閉じる度に浮かんできていつまでも残っていた。



◇◆◇◆



あっさりと終わった部活の後に、一緒に帰ろうと御幸に声を掛けられた。
あのタイムセールで卵を買った二日後、またご家族様一つ限りを手伝って以来ちょくちょく一緒に帰っている。
手伝う時もそうじゃない時も。
道すがら聞く、弟妹達のエピソードが面白くて飽きる事がない。沢山の話を聞いても翌日にはもう何かが起こっている。

「なあ、今日トイレットペーパーがさ、」
「いいっスよ。今朝チラシ見て御幸先輩これ買うかなって思ってました」
「さすが!もう家族だなお前」

そんな軽口に心臓が跳ねて鼓動が早くなった、その意味を測りかねて首を傾げた。

「トイレットペーパーの消費が早過ぎて参る」
「人数多いッスもんね」
「いや下の二人がさ、何回言っても使う量が多過ぎんだよ」
「まだ調整は難しいんじゃないスか」
「この前、トイレのドアの前で聞いてたらよ、いつまでもいつまでもカラカラカラカラ音が止まねえの!シビレ切らして怒鳴り込んじまった。ちょービビってたわ」

一番下の弟がビックリして目をまん丸にしてる所を想像したら、可笑しくて笑ってしまった。
笑いながらも、この人は弟妹達の面倒をどこまで見てるんだろうと考えたが、何と無く聞き辛い。
無事買い物は終わったが、トイレットペーパーと買い足した日用品で御幸の両手は塞がっている。これで自分がもっているトイレットペーパーまで渡したら持てないかもしれない。

「沢村は?買い物ないの」
「ああ、うち母が今日は出張なもんで晩飯は適当でいいんスよね」
「へえ」
「それより御幸先輩持てますか?俺時間あるし、家まで持ちましょうか」
「いや、……ああ、頼もうかな。そんでお前ウチで飯食ってけよ」
「は!?いえ、イイっすよ、そんな」
「遠慮すんなよ。飯作んねえんだろ?まあウチは俺が作る訳じゃねえけどさ」
「いや、でも……」
「いいって!いつもの礼だ、行こうぜ」

どちらにしてもトイレットペーパーは届けたいし、曖昧な返事で御幸に促されるまま歩き出した。
そんないきなりお邪魔するのは失礼だろという気持ちと、大家族の食卓はどんなだろうという興味がせめぎ合いながら並んで歩く。
近いだけにすぐに着いてしまう。もう誰もいないつつじ公園を横目に見ながら、そこの木から枯れ落ちたらしい葉を踏み締めた。色付いた大きな葉が乾いた音をたてながら粉々になるのが面白くて、夢中で端を歩いていると御幸の笑い声で我に返った。

「……何スか」
「お前、下の二人と同じレベルだし」
「こういうの懐かしくて、つい」

恥ずかしさから出た精一杯の強がりもレベルが同じな気がしてさらに恥ずかしくなった。
御幸の隣に戻ろうとしたが、数歩先に大きく膨らんだ葉を見つけ、最後の一踏みとばかりに踏み締めるとぱりぱりと今日一番の音がした。
御幸がそれを見て笑いながら「ここ」と示した家は、つつじ公園の目の前のかなり大きな家だった。でも家族七人で暮らすならこれ位の広さは必要なのだろう。

「ただいまー」
「お邪魔します」

当たり前のように中に促され、ここまでついて来た以上はと腹を括ってあがらせてもらうことにした。

「兄ちゃんおかえりー!」
「おかえりー!」

卵を買う時に見掛けた弟二人が出迎えにドタドタと廊下を走って来る。そのまま靴下で滑り上の子は止まったが下の子は止まれずにつるりとまわって派手に尻餅をついた。
転び方がおかしかったのか、二人で廊下を転げ回って笑っている。

「お前らこれがやりたくて来てるだけだろ」

御幸は靴を脱ぐと慣れたように二人を跨ぎながら、友達来てんだからどけよ邪魔だと爪先で軽く小突くのが見える。
自分が一人っ子のせいか、その仕草にすごく兄弟を感じて、弟が欲しかった小さい頃を思い出した。

「兄ちゃんの友達?」

気付くと二人がじっと見上げている。子供は『大丈夫か』を嗅ぎ分けるのが上手い。受け入れてくれるのか、遊んでくれるのか。
幸い自分より下の子供には何故かウケがいい。仲良くなるのは『本気で遊ぶこと』だ。本気になり過ぎてムキになり泣かした事もままあるが。

「兄ちゃんの後輩で、沢村栄純。ヨロシクな!」

二カッと笑い二人の頭を撫でたら、下の弟が「知ってる!ご家族様買ってくれてる人!」と笑った。
おかげで買い物に駆り出されないから沢山遊べると二人は嬉しそうで、何だかむず痒い。
沢村は『大丈夫』と認定されたのかリビングまで二人が纏わり付いて代わる代わる話し掛けてきた。
リビングで改めて挨拶をする。目に入ったのは六人掛けの大きなダイニング。お誕生日席に一つ椅子があり、成る程家族全員で食事が摂れるのかと感心した。
定位置なのか、カウンターキッチンを背にした真ん中の席に妹らしき女の子が座っている。どことなく御幸に似た面差しの利発そうな子は、こんばんはと会釈してくれた。
そのカウンターキッチンから「あら!」と叫んで飛び出してきたのは御幸達兄弟の母親らしい。

「沢村君でしょ?いつもありがとう。私が行くべきなのにごめんなさいね」
「あ、いえ、俺こそいつも御幸先輩にはお世話になってて!買い物は俺もよく行くからついでなんで、あの……これからも手伝わせて下さい!」

少し緊張していたらしく、何を言ってるんだと自分でも思った。横で御幸が肩を揺らしているのが目に入り、熱くなった頬のまま睨む。
顔を背けて小さく笑っていた御幸が沢村の視線に気付いて何とか笑いを堪えている。

「ワリ、だってお前……」
「何スか」

御幸はその先は言わず、宥めるようにポンと頭に手をおいた。

「沢村君て…いい子ね」

は、と音にならない声を発して御幸の母親を見ると、柔らかく細められた瞳で沢村を見ている。
その慈愛とも呼べるような微笑みが、からかっているのではなく本心からそう思っているのだと物語っており、益々顔が熱くなった。
嬉しくない訳ではないが、先輩やその兄弟の前で褒められるのは高校一年の男子としては勘弁して欲しい事だ。

「あ、ごめんなさいね。ご飯にしましょう」
「お腹減ったー!お母さん今日なにー?」
「ハンバーグ!」
「やったー!」
「チーズのせて!」
「俺のはチーズ中に入れて!」

ハイハイとキッチンに戻る後ろ姿が朗らかだ。
ソファで跳ねて遊ぶ弟達に「跳ねるな」と注意し、それならとゲーム機を引っ張り出すと「もうすぐ晩飯だからやるな」と注意している。
こうして御幸が「兄ちゃん」として弟達の面倒を見ている時、それを見るのは結構気に入っているかもしれないと思った。

「母さん、光舟は?」
「部屋で勉強中じゃないかな」
「呼んで来ようか?」
「もうすぐ焼けるし、全部用意出来たらお母さん行くからいいわよ」

了解、と返事した御幸にソファへ促される。弟達は今度はテレビに夢中で、やはりそこにも「近い、離れろ」と注意していた。

「光舟ってすぐ下の弟さんですか?」
「そうそう、中三の受験生。うちの高校受けるらしいから、もしかしたら来年の春には後輩かもな」
「へえ、うちの高校を」
「でもアイツも野球やってて、ホントは別に行きたい所あんじゃねえのかなぁ…」

ソファに凭れて思案げに天井を見上げる御幸に、この上にその弟の部屋があるのだろうと思った。
御幸の考えはすぐに解った。本当は私立の強豪校に行きたいけど、気を遣って公立を志望しているのではと心配している。
理由はどうあれ、実際公立に進んだ御幸が何を言っても説得力がないのだろう。

「こっちは犠牲になったつもりはないのにそう取られる事、ありますよね」

御幸は少し驚いたように沢村を見て、目を瞠ったまま「そう、それ」と呟いた。

「アイツ、まじ頑固なんだよ」

御幸は溜息を吐いて後頭部をがりがりと掻きながら困ったように笑う。「兄ちゃん」の顔で。
そこでちょうど御幸の母親からご飯が出来たと声が掛かった。そのまま廊下に出て階段の下から渦中の弟を呼ぶ。
ゆっくりと階段を降りる音と、「一也のお友達がいらしてるのよ」との会話が漏れ聞こえる。
リビングに入ってきた弟は、沢村と目が合うと軽く会釈をしてダイニングテーブルへ向かったが母親の「沢村君よ」の声に足をピタリと止めた。

「……沢村…?」

ゆっくりと振り返った弟にまじまじと顔を見られたと思ったら、その視線は探るように上から下までを滑り最後に左手へと注がれている。
何だかいたたまれずに今更ながらこんばんは、と小さく言うとようやく逸らされた視線の向こうから同じ言葉が小さく返された。

「沢村、光舟の隣に座ってくれる?」
「あ、ハイ」

テーブルを見ると妹の向かいに光舟、それぞれの隣に弟達が座っており、恐らく御幸は誕生日席に座り左右の弟達の面倒を見るのだろうと思った。
そして自分の席は普段父親が座る席で、想像していた賑やかな食卓を目の当たりにして自然と口元が綻ぶ。
食事が始まるとその賑やかさは想像以上、まるで給食の時間のようでよくこんなに喋って笑って食事が出来るものだと感心した。
チェダーチーズの乗ったハンバーグは美味しくて、よく見ると御幸と光舟そして沢村の皿には二個、他は一個ずつ置かれている。
きっと食べ盛りの特権なのだろうが、すぐに下の二人も同じ位食べる筈だ。

「騒々しいでしょう?落ち着いて食べられなくてごめんなさいね」
「いえ、俺一人っ子なんで賑やかで羨ましいです。ご飯の量も驚きました」
「今だけでハンバーグは十個、ご飯は八合炊いてるのよ」
「十個!?八合!?」
「そう、ハンバーグなんてフライパン二つで必死よ!ご飯四杯とかおかわりされたらもうお手上げ。ぼちぼち一升炊かなきゃだめかなあ」
「す、凄い…」

御幸を見ると弟二人と「野菜も食え」「イヤだ」「こっちに寄越すな」と大騒ぎだ。逆に言えば、騒々しいのはその三人なのだと気付いて笑ってしまった。
賑やかな食事の後は早々に部屋に戻った光舟は別として、皆と喋って遊んで楽しい時間を過ごした。
帰らないで泊まっていってと騒ぐ下の二人を、また来るからと宥めて何とか御幸と家を出た。
ひと気のない住宅街はすっかり夜の闇に包まれて、つつじ公園の街灯が白く辺りを照らしている。

「夜は一段と寒いな。大丈夫か」
「平気です。御幸先輩、ありがとうございました。ホント楽しかったです」
「また来いよ、まじで。アイツら喜ぶし」
「ハイ」
「お袋さん出張なんだろ、お前大丈夫?」

二回目の大丈夫かの問いは気遣わし気で「兄ちゃん」の顔をしている。まるで小さな弟を留守番させる兄貴のようだと笑おうとして、失敗した。
嬉しかったのか切なかったのか、どんな表情をしてしまったのか解らないが、御幸が一瞬何かを堪えるような顔をしたのが見えた。

「……泊まってくか」
「は!?いや、大丈夫ですよ」
「でも、」
「平気っスよ、出張とか昔からちょくちょくあるんで慣れたもんですよ」

今度こそ、笑えた筈。なのに御幸がさらに痛そうな顔をして、また失敗したのかと心配になる。
いつも弟達の面倒を見ている御幸にとっては自分も弟と同列で、一人で夜を過ごさせるのはしのびないのだろう。

「じゃあ、またお袋さんが遅い時とか出張の時はウチで飯食ってけよ。んで次の日が休みの時は泊まってけ」
「いや、でも…」
「そうしろ、一人増えた所でウチは何て事ねえし。アイツらの相手してくれよ」
「……はい。じゃあまた今度お邪魔します」
「ヨシ!」

満足気に微笑んだ御幸に頭をグリグリと撫でられ、これは同列でも下の二人と同じかも知れないなと思った。
気をつけろ、戸締りしろよと後ろ姿に声を掛けられ何度も振り返って手を振る。
兄貴とはこんな感じなのかと、真っ暗な部屋に灯りをつける時も冷え切った部屋に暖房を入れる時も、胸の中は暖かかった。



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