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幸福な夢をみる方法 (R18)





「沢村、前に聞いた事あんだけどさ」
「………何?」

情事後のベッドの中で突然御幸が言い出した。
今にも眠りに落ちそうな所に話しかけられて不機嫌な声で返事をする。

「なんか、やっぱイキ寝が1番気持ちイイとか」
「イキネ?何それ」
「イった後そのまま寝んの」
「はぁ!?訳わかんねぇっ」

わざわざ意識を覚醒させてまで聞く内容ではなかったと益々不機嫌になる。

「訳わかんねぇってお前よくやるじゃん」
「…えっ?ちがっ!あれは…」

殆ど失神だと、言いかけてやめた。
言ってもからかいの材料になるだけで、わざわざ恥ずかしい思いをする事はない。

「照れんなよ」
「照れてねぇっ」

赤い顔を見られたくなくて背を向ける。

「…でも、さ」
「ん?」
「その、イキ寝ってのが気持ちいいんだとして、俺はやってもアンタは無理じゃん」
「あぁ、そりゃ抱かれる側の意見だからさ」
「…は?じゃあ女の意見って事かよ!ふざけんな」
「怒んなよ、だから抱かれる側だって」

腑に落ちないが自分が抱かれてるのは事実だし、さっさと寝る為に続きを促す。

「…で、それが何?」
「うん、沢村をイキ寝させてあげよっかなーなんて」
「はぁ?」

振り向くと枕に肘をついてニッコリ笑った御幸が見つめていた。

「何、それ…」
「だから、もっかいしよ」

尚も笑顔の御幸が言う。脱力感に苛まれた。

「あのさ、今したよな?俺まさに眠いんだけど」
「でもさー、せっかく俺の部屋に来てて明日は朝練ないじゃん?一回なんて勿体なくない?」
「…!勿体ないとかそういう問題!?」

確かに御幸の同室者の内一人は法事で実家へ帰り、もう一人は別の部屋に泊まりに行っている。
その上朝練が無い日曜なんて三拍子揃う事はもう二度とないだろう。

「でもこんな偶然無いかも知れないけど、アンタはこんな状況いくらでも作るだろ」
「えーひどーい沢村くん。人を性欲魔神みたいに言うー」
「言ってねーよ!思ってっけど…」
「そんなコト言うならこうしてやるー」
「あっ」

くちゅ、と音をたてて御幸の指が侵入してきた。
油断した、と思い慌てて体をよじり御幸を押しやろうとする。
ふざけていただろう顔はもういつもの口端を上げた笑みに変わっていた。

「…やめ、ろよっ」
「さっき中に出したからソレ掻き出すだけ」
「嘘つけ…っ」
「バレた?」

御幸はフフッと笑いながら指を動かした。
まだ先程の熱も覚めやらぬうちに敏感になっている所を弄られる。
途端にまた翻弄され始める。こんな、指一本で。情けなくもあり悔しくもあり、でもそんな感情を飲み込む程の快楽が押し寄せた。

「あ…あっ」
「大丈夫、最高に気持ちよくしてやるから」

何が大丈夫なんだと思いながらゆるゆると首を振る。

「そんで最高のイキ寝させてやるからな」

そう言いながら自分の頬にくちづける男は確か天才と謳われる捕手で。
こんな所を誰が想像するだろう。
でも、と思った時には口に出していた。

「俺、が…寝たら、俺ばっか…あっ…気持ち、いくて…」

はぁはぁと荒い呼吸の中何とか言葉を乗せる。

「ア、ンタに…気持ちよ、く寝て、もらいた…」
「…っ!沢村、お前なに挿れる前から俺をイかせようとしてんの…」
「え…」

急に片手で抱きしめられた。もう片方の手は動きを止めない所がさすがだ。

「はっ…あぁ…」
「沢村、俺はイキ寝したお前を抱きしめて寝るのが最高に気持ちイイの」
「…あ…っあ」
「だからお前は安心して寝ていい」
「んっ、ふ…」

言い終わると同時に唇が塞がれた。その間も御幸の指が蠢いて声も呼吸も吸い取られる。

「…あー、もぅ限界。挿れるから」
「……ああっ」

先程の御幸の名残もあり、あっさりと挿入を許した。
御幸の律動に合わせ耳を塞ぎたくなるような濡れた音が響く。でもいつも気になるのは初めのうちだけだ。
後はそんな事すら考えられなくなってくる。

「あぁ…はっ、みゆ…」

耳の側で御幸の荒い息遣いが聞こえる。いつも余裕たっぷりのこの男も快楽に溺れている。
その事にさえ感じている自分がいてもういい加減呆れてしまう。
何もかも塗り替えられた気分だ。

「あぁっ…」

御幸が突然沢村のものを握り、自らの動きに合わせ扱き始めた。

「すげ、感じてんじゃん」
「…ちが…っ」

違う訳がない。もうとっくに先走りの液で濡れている。

「お前が感じてるの見ると俺はもっと気持ちイイよ…」
「あ、はぁっ」
「もっと感じろよ、沢村」

御幸の動きが早くなる。もう耐えられない。

「みゆ、き…俺、もう…」
「…イキそう?じゃ、俺も」

もうヤバイ。本当にもう、御幸の言う通り。

(……最高に、気持ちイイ)

その瞬間、頭の中がスパークした。御幸の放ったものを体の奥に感じる。
そして、意識を手放した。

「…うん、寝ちゃったね」

御幸は満足気に口端を上げ呟いた。軽く処理をしあどけない寝顔を見つめる。

(可愛いね、ホント。…おやすみ、沢村)

チュ、と音を立ててキスをし予告通り眠りについた沢村を抱きしめて狭いベッドに横になる。
いい夢をみるために。






end



あきゅろす。
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