はじまりのふたり
※「はじまりもおわりもせず」その後
くるくるとよく変わる表情で今日の出来事を報告してくる可愛い奴。
我慢出来ずに顔を寄せ、鼻の頭に小さく音をたててキスをした。途端に目を白黒させて「な、何」なんて吃りながら聞いてくる。
「いや、お前たまに可愛いよね」
「別に可愛いとか思われたかねえけど……たまにかよ!」
「うん。たまに」
嘘。いつも、何その可愛さもうふざけんなとか思う程可愛い。
俺の大好きな、わざわざ泣かしてまで見たい泣き顔だって最高に可愛い。
でもこいつの反応が楽しいもんだからつい意地悪する。
「何だよ。俺なんていつも思ってんのに」
「何を?」
「え?御幸、カッコイイなとか、綺麗だなとか、さ」
「そう?いい子だねお前」
少し拗ねたような怒ったような顔で俺を見上げる。そういう事を平気で言っちゃう所とかね、もう。
見た目よりも柔らかい黒髪を撫でて掻き混ぜると、嬉しそうにクシャリと笑う。
あーその顔、すげえ好き。俺の事が好きで好きでたまりません、て顔。
自惚れじゃなくて、素直なコイツは全身で想いを伝えてくる。
どこまでも、真っ直ぐに。
コイツがぶつけてくる想いは強くて、大きくて、綺麗。
貪欲な俺はその全てを飲み込んでもまだ足りなくて喰らい尽くしてしまいそう。
もっと、もっと寄越せよ、お前を。
「ねえ、沢村。キスして」
「え?誰に」
「俺に決まってんだろ。俺以外の誰にする気だコノヤロウ」
「あー…ですよネー…」
「何、嫌なの」
「嫌じゃねえ、けど……」
「じゃあホラ」
手を伸ばせば届く場所にいる沢村にほんの少し顔を突き出して催促する。
ほら、お前からおいで。泣いたって今日は許してあげない。
困ったような顔で膝立ちになり固まってる。促すと躊躇しながらそのまま膝で二歩進んで触れ合える距離に来た。
照れて戸惑いながらも、してくるのはわかってる。だって俺の事好きで好きでたまらないもんな?
俺の肩に手を置いて、少し赤い頬をして拗ねたように囁いた。
「アンタほんとに性格悪い」
「うん。でも、好きでしょ?」
自分でも悪そうだなと思う、片方の口端を上げる笑顔で言えば唇に柔らかな感触。
一瞬の熱を伝えて去っていくそれを追い掛けてペロリと舐めた。
文句を言われる前に引き寄せて、胡座の中に抱え込む。
「ね?」
至近距離で微笑むと観念したように目を閉じた。
「あーもう!大好きだよコノヤロウ!」
照れ隠しかヤケクソか、叫ぶその唇にいただきますと喰らいついた。
end
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