[携帯モード] [URL送信]
俺、男前化計画





いつも。

好きだと囁かれて赤面したり。
キスをされてシャツにしがみついたり。
転びそうになって横から出た手に守られたり。


いやいやいやいや、俺、乙女かっ!


ないわ。いやまじで。対御幸の俺、ないわー。
御幸の持つ、こう余裕みたいなの、俺も醸し出したい。何を言われても軽く受け流して「あ、そうなの?」みたいな。
うわ、何か大人の男っぽくね?かっこよくね?
あれ、じゃあまるで御幸は大人の男っぽくてカッコイイと誉めてるのか俺は。いや違う、別にそうじゃない。
そういうことじゃなくて、余裕。いちいち赤面したり吃ったりしない、余裕。

よし、今日から実践だ。来い、男前な俺。

もうすぐ御幸がこの部屋に来る。消灯前の僅かな時間、誰もいない部屋で二人で過ごすために。
何だか初めてのチャレンジに緊張してるせいでつい正座していた。足を崩そうなんて、そんな余裕はない。
あ。すでに余裕ないとか言っちゃってる俺。
また頭を振って腿の上に置いた拳を握り締めた。

軽いノックの音と同時に開くドア。閉じたあとに鍵の音。まあいつも通り。

「オース」

いつもと同じ挨拶をしていつもと同じように側に来る。
ただ、俺が正座なんていつもと違う事してるせいで訝しげに見つめて来る。

「どした?何かしこまっちゃってんの?お前」
「い、いや別に」

あ。吃った。最初から吃った。もう自信ない。

「なんか真面目な話?」
「あ、ちが、違くて」

焦る俺に御幸が口角を上げニヤリと笑う。

「何、もしかして、待ってた?」
「ばっ…!ち、ちげーよっ」

待ってたと言えば待ってたけどそういう意味じゃねえし。そういう意味って何だ。
御幸が隣に並んで座り、肩を引き寄せ耳元で囁いた。

「待ちきれない程会いたかった?」
「…違っ…!」
「正座してイイコで待っちゃうくらい?」
「い、いや、あのっ違くて…!」

クソッ!こんな事で熱くなるな、顔!
肩にまわした手を腰に滑らせて引き寄せられて正座が崩れた。もう片方の手は頬を撫でてる。
もうパンクしそうだ。だが余裕のある男を実践するなら今だ。
頑張れ、俺。

「つ、つか、あんたもさ、」
「ん?」
「来て早々にこんな事するなんてさ、」
「うん」
「よっぽど、お、俺に惚れてんだろ」
「うん、惚れてる」
「…………っ!」

俺の決死の台詞を即答で認めるだと!?
何それ!そんなのもアリなの!?
え、もうどう返すのかわからねえ。とりあえず顔が熱過ぎて赤面したのはわかった。
頬を撫でる手が耳の横の髪をかきあげて後頭部に添えられた。
唇が触れ合う程に近付いて吐息でくすぐるように囁かれる。

「会ってすぐにキスして押し倒してお前んナカに入ってめちゃくちゃにしたいくらい、惚れてる」

パンクした。
頭の中のマグマが飽和状態になって、てっぺんから噴き出したような感覚だ。
あれ。いつの間にかキスされてるし、押し倒されてる。
実践してる。御幸が言葉通りに実践してるよ。
あんたじゃなくて、俺が実践するはずだったのに!


俺の男前化計画、初日開始5分で挫折。

道のりは遠そうだけど、次こそは。
熱く絡み付く舌に翻弄されながら誓った。



end






第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!