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Birth






「……誕生日?」
「そう」
「……今日?」
「今日」
「……マジかよ」

消灯前の僅かな時間。
沢村は俺が差し入れたプリンを味わいつつ、俺の落ち込みようが理解出来ないのか首を傾げた。
取りあえずその、スプーンくわえて首傾げるのは俺以外の前ではやめなさい。
ああ、でも。
小さくついた溜息に沢村がますます訝しんでいる。

「どうかした?」
「……いや、あのさ。まあ調べてなかった俺が悪いんだけど…」
「うん?」
「プレゼントあげて祝いたかった、って事」

それを言うと、沢村は少し困ったような顔になった。

「うーん。俺そういうのあんまり気になんないと言うか…、うちの家のせいなんだけど」
「何が?」
「いや、小さい頃からなんだけどさ、」
「うん?」
「誕生日ってのは両親に"生んでくれてありがとう"って言って、自分で貯めたお年玉で好きな物を買ってもいい日、だったんだよね」
「………………」

沢村の両親て、色んな意味でスゴイ。
すげぇ笑いたいけど、ここ笑っていいところだろうか。見極めが難しい。

「親父も誕生日はずっとそうだったらしくて」
「へ、へぇ」
「大きくなって皆ん所の誕生日のシステム聞いた時はショック受けたぜ」

堪え切れずに噴き出した。
何か、いいよ。
疑問なんて抱かずに素直に"生んでくれてありがとう"と両親に礼を言って。
貯めた自分のお年玉を持って、キラキラした瞳でオモチャを選んでたんだろ?
最高に可愛いじゃねぇか。
その頃の沢村に会って見たかった。いやでも見たらさらっちまうな。
また、その過去を恥ずかしいとか思ってないところがコイツらしい。

「なあ、沢村」
「ん?」
「今日は言ったの?ご両親に」
「………あー…さっき、電話で」

言ったんだ。男子高校生が言っちゃったんだ。何コイツ可愛い。可愛すぎる。
口元を手で覆い心の中で悶えてると、沢村がさすがに照れたのか残りのプリンを乱暴に口に入れた。

「仕方ねぇよ。もう染み付いた習性なんだよ」

そう言う沢村の耳が赤い。だからそういうの、可愛すぎるから。
あんまり俺の前で可愛い事するとどうなっても知らねぇよ?
移動して沢村の後ろに座り、包むように腕をまわして背中からそっと抱き締める。

「沢村」
「ん?」
「生まれてきてくれて、ありがとう」
「…………っ」
「誕生日おめでとう」
「………あ、…さ、サンキュ…」

抱き締めた身体が少し熱くなった。その理由を物語る、目の前にある真っ赤な耳にキスをした。
そして、沢村を見習いご両親にも感謝を。

コイツを、生んでくれてありがとうございます。
おかげで俺は幸せです。コイツももっと幸せにします。だから、コイツを。

そこまで考えてまた少し噴き出した。これ後半、結婚の挨拶みてぇになってるし。

「……何?」
「いや、何でもない。その時は給料三ヶ月分のアレを渡すから」
「………は?」
「心配すんな。かなり貰ってる筈の年俸を月割りにして考えるから、それなりのが買える」
「話が見えねぇぞ?」
「ん?これから毎年、お前の誕生日は俺が祝うって話だけど?」

また少し熱くなった身体を抱き締めて小さく笑う。きっとお前以上に、お前のご両親に感謝してるよ。
沢村、生まれてきてくれて、俺と出会ってくれてありがとう。





end





10月5日、お誕生日を迎えられたまるりさんへ捧げます^^
お誕生日おめでとうございますv 日付を跨いでしまいすみません!
いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いしますv



あきゅろす。
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