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紺碧の夜に




今度の日曜は休養日になると聞いた時に浮かんだ思いをそのまま実行に移したくなったのはもういい加減黙っているのに嫌気がさしたからかもしれない。
想いを秘めるなんて柄でもないことはやめると決めれば先へ進むのは簡単だった。


「デート?」
夕食後、食堂を出るところを話があるとひと気のない方に連れてきて言った台詞を聞き返した沢村はただでさえ大きな瞳をこぼれそうなほど見開いた。
「そ、デート。」
「誰と誰が?」
「俺とお前が。」
ひらひらと動く御幸の両手のあいだをオレンジ色の球体が行き来している。
誰かの差し入れらしく夕飯の時に食堂で一人一個配られた甘夏だ。
沢村の目が御幸の顔からそちらに移る。
「食う?」
「俺もう食ったし。貰いものなんだからちゃんと自分で食べろよ。」
生真面目な台詞に笑いを零す。
「うん。でどう?今度のオフ。」
「デートって……」
「恋人として、さ。」
そう言って笑むと沢村の顔がぼっと音が聞こえそうなほど赤くなった。
それに安堵に似た満足を覚える。
いつからか、交わす言葉に見つめる視線を受け止めて返される瞳に。
意識されていないわけではない。
そうは感じていたもののいざ行動に出れば自分でもおかしいほど動悸がしていた。
沢村は少しの間うろうろと視線をさまよわせたあげく、キッとこちらを睨みつけてきた。
「あんたずりいぞ。何にも言わないでいていきなりそんなこと言い出すなんて。」
「え、もっとはっきり言えばいいのか?俺は沢村とデートしたいです。キスしたいです。もっと正直に言えば押し倒していやらしいことしたいです。」
「……!」
仰け反って引き下がろうとする腕を掴んだ。
「逃げんな。ちゃんと言ったぞ。」
「う……」
「返事を聞かせろ。」
沢村は何と言おうか迷うようにこちらを見つめたまま沈黙していた。
しばらくして再び甘夏に目を移すとそれを御幸の手から取り上げる。
「何?」
「……これを、あっちの端から投げるから。」
「うん。」
「御幸がキャッチできたら一緒に行く。いい?」
「は?」
沢村が指差したところからここまでは18.44mよりも離れていない。
御幸が捕れないわけがなかった。
沢村の顔を見るとにやりと悪戯な笑み。
――それが答えか。
「ははっ。お前最高。」
手を離すとそのまま遠くに駆けていく。
「食いもんそまつにすんなよ。」
「誰に言ってるんだ。」
どうやら外すつもりもないらしい。
恋人になるためにしてはおかしな儀式だ。
それでもらしいといえばらしいのかもしれない。
腕を振りかぶって思い切り投げられた甘夏はボールと同じように本人は真っ直ぐのつもりなのだろうが、いつもどおり微妙な軌道の変化を見せる。
だがそれに対応できない御幸ではない。

夜空にパシッという小気味よい音とかすかな柑橘の匂いが漂った。





















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「月の満ち欠け」萱野のはら様よりいただきました。
キリ番33333を踏ませていただき、「強気な沢村とさらに強気な御幸でラブラブ」というリクエストでお願いしましたv
素敵過ぎてどうにかなりそうでしたv甘夏の使い方とか二人の会話とかにこちらが動悸がしてたまりませんv
本当に有難うございました!これからもよろしくお願い致しますv









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