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busy man!





御幸はいつも忙しい。その忙しい合間を縫ってでも沢村に会いに来る。

5号室に入ると消灯にはまだ時間があるにも関わらず沢村がベッドで寝息を立てていた。
倉持ら同室者はいない。そっとベッドに近付き端に腰を降ろす。
疲れているのかと顔を覗き込むと汗で前髪が張り付いている。

「ガキかよ……」

柔らかな表情を浮かべ額の髪をそっと払い枕元のタオルで汗を拭った。
すると沢村が身じろぎしてムニャムニャと寝言らしきものを呟いている。
ますますガキだと吹き出しそうになるのをこらえ沢村の口元に耳を近付けた。
微かな寝言を聞き取った途端御幸の表情が凍り付く。

「…くすぐったい…やめろよ、金丸…」



途中出会った寮生が御幸のあまりにも険しい表情と殺気に横に飛びのいて道を譲る。
目的の部屋の前まで来るとノックもせず蹴破る勢いでドアを開けた。

「金丸うぅぅぅ!!」

思い切り開けたドアの騒音を掻き消す程の声で呼ぶと、部屋にいたクリスと金丸がびっくりして御幸を見た。

「は、はいっ!何ですか!?」

慌ててドアの方にやって来た金丸の胸倉を掴んで尚も声を荒げる。

「テメェ! 何しやがった!?さ…」

そこまで言ってはたと気付く。今何があったか聞くべき相手は沢村で金丸を締め上げるのはその後だ。
胸倉を掴んでいた手を離し解放する。

「あー…スマン。間違えた」
「………は?はぁ、いえ…」
「クリス先輩、お騒がせしてすみませんでした」

クリスが片手を上げ挨拶するのを確認すると会釈してドアを閉め胸を撫で下ろした。

(危ねー、もうちょっとで自分を見失う所だったぜ)

御幸が出て行ったドアを見つめながら金丸が首を捻る。

「クリス先輩、何なんスかね?御幸先輩は…」
「どうせ沢村の事だろう。完全に自分を見失ってたな」
「そうですね。いつものですかね」



御幸が5号室に戻っても沢村はまだ寝ていた。
ただ一度起きようとしたらしく床に座り込みベッドに頭を突っ伏した態勢に変わっている。
また近付いてしゃがみ込むと頬に口付けた。今度は起こすつもりで。
顎を掴み少し上向かせるとそのまま唇を塞ぎ半開きのそれに舌を捩込んだ。
起こす為だけの行為の筈が沢村の唇と柔らかな舌の感触につい夢中になる。
膝を付きベッドに凭れ掛かる沢村に覆いかぶさるように包み込んだ。

(あー…止まんねぇ)

そのまま首筋に唇を滑らせて舌を這わせた。舌先を細くし擽るように今度は感じさせる為の行為に変わる。

「…は、…あ?…ええっ!?」

くすぐったい感覚で今度こそ覚醒した沢村が首筋を押さえて御幸を跳ね退けて起き上がる。

「うわっ!何してんだよっ人が寝てる間に!」
「起こそうと思ったら止まんなくなっちゃった」
「なっちゃった、じゃねぇよっ」

ニッコリと笑う御幸に沢村が食ってかかるが動じる筈もなく、さらに笑顔で言う。

「続き、しよっか」
「……!バカかっ!何か用があったんじゃねえのかよ」
「あ、思い出した…」

急に不穏な顔付きになる御幸に怯む。

「お前、さっき寝言言ってたぜ……すげえムカつく内容の」
「ムカつく?ど、どんな」
「"くすぐったい、やめろよ金丸"って」
「……は?金丸?何で」
「こっちが聞きてえっつーの」
「………夢、かなぁ。さっきクラスの奴らとプロレスの試合する夢見たんだよね。俺優勝」
「さすが夢は都合よく出来てんな」
「準優勝が金丸だったからそのせい?としか思えん」

今だに憮然とした表情で御幸が見詰めて来るのに納得がいかず尋ねる。

「夢だろ、だからとやかく言われる事じゃねぇ」
「……お前なに金丸の夢とか見てんだよ」
「はあ!?そこ!?」
「じゃあ聞くけどよ、お前俺の夢とか見た事ある?」
「ない」
「何ぃ?ふざけんな金丸の夢見るくらいなら俺の夢見ろ」
「うるせー!夢に嫉妬してんじゃねぇ!」

沢村が立ち上がり吠えた所でバンッと音を立ててドアが開いた。
振り向くと倉持が腕組みして立っており冷たい視線を投げ掛けている。

「うるせえ、消灯だ。御幸テメェの部屋に戻れ」
「「………」」



翌朝、グラウンドで沢村を後ろから羽交い締めにして技をかけようとしている倉持と必死で抵抗する沢村、そしてその二人を鬼のような形相で引き離そうとしている御幸がいた。

そして午後練。
休憩中の倉持に御幸が近付いてきて文句を言う。

「俺は忙しいんだからさ、あんま余計な仕事増やすなよ」
「何だよ?沢村の事?」
「当たり前。余計なちょっかいかけてんじゃねえ」
「ヒャハッ、忙しいなら寛大な心でほっとけよ」
「……出来たら苦労しねぇ」
「あれはいいのかよ」
「ん?」

倉持が顎で指した方向を見ると降谷が後ろから沢村におんぶのように覆いかぶさり、沢村が重いだの離れろだの騒いでいる。
確認した瞬間に御幸が叫びながら走り出した。

「コラそこーーー!!何してやがる!!」

高見の見物をしながらヒャハハと笑う倉持に金丸が寄って来た。

「倉持先輩」
「おう金丸、オメーも大変だな」
「いえ……でも御幸先輩が忙しいのって…」
「そーそー!半分以上自分で作ってる仕事だよ。バカだよなアイツ」
「はあ……いえ、まあ」
「あの眼鏡に度が入ってねぇのかっつー位盲目だからよ、楽しませてもらおうぜ」

グラウンドを見ると尚も離れない降谷と暴れる沢村、そしてその二人を鬼のような形相で引き離そうとしている御幸がいた。


御幸は、今日も忙しい。




end


13000hit あこさんへ  リクエスト:御沢(嫉妬深くて独占欲の塊の御幸 倉持と金丸登場希望) 
ご本人様のみご自由になさってくださいv リクエストありがとうございましたv



あきゅろす。
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