HAPPY VALENTINE!!(おまけ)
シャカシャカと軽快な音をバスルームに響かせながら洗髪する。頭に付いている泡が茶色に見えるが、それは決して綱吉君が髪を染髪料で染めているからではない。鼻腔に鉄錆の匂いが掠めているが、気にしない方向で。
「骸のプレゼントはねー、小さい島にしたよー。ボンゴレ引退したらそこに二人きりーフフフ」
「ありがとうございます」
『引退したら』って、何十年も傍にいてくれるんですねぇ…
嬉しさを感じつつ、一度泡を洗い流し再びシャンプーの容器を三回プッシュし洗髪する。今度は髪を労るように優しく梳いていく。ついでに頭のツボをマッサージすると気持ち良さそうにほんわりと表情を変えた。
湯を張った浴槽に浸かりこちらに体を向け縁に腕を付いて幸せそうに頭を洗われている綱吉君は今にも寝てしまいそうにとろんとしている。
「気持ちぃー……」
「それは良かったですね」
「骸も入れば良いのにー……」
そう言って僕の二の腕辺りの服をつんつんと引っ張った。実は未だ僕は服を着ていて腕まくりをしただけの状態だ。所々濡れてはいるが特に気にする程のものでもない。それに、一緒に入って何もせずに出ることが出来ないのは明白だ。のぼせられたら大変なことになる。
「お楽しみは取っておく派ですから」
「えー」
不満そうな声を無視してシャワーで泡を洗い流し軽くリンスをしてまた洗い流す。体は既に洗ってあるので、これでバスタイムは終了だ。
先程まで幸せそうにしていた表情は今や見る影も無くしかめっ面で恨めしそうに僕を見上げていた。たかが一緒に入らない位でそんな顔をされても困るのだが。
やれやれと溜め息を吐き腰を屈めて綱吉君の輪郭を右の人差し指の第二関節でつぅっとなぞる。するりと頬を滑り濡れた髪を一撫でし首の後ろ、後頭部より下の位置に移動させ指を髪に差し込む。くっと少し頭を持ち上げると静かに彼は瞳を閉じた。
ふっと笑みを零し、唇を寄せ浴室の湿った空気で濡れた彼の柔らかな唇の感触を啄みながら堪能し、少し開いた隙間から舌を滑り込ませる。ざらり、と愛撫するとお返しのように絡まってくる彼を弄びつつ上顎を刺激すれば舌を噛まれそうになった。必死に堪えたのだろう、歯を押し当てられた程度で痛みは無い。
ゆっくりと濡れた腕を伸ばし首に抱きついてくる綱吉君の舌を甘噛みすることで制止を掛けた。
ちゅ、と業と音を出して唇を離し行為に終止符を打つ。
「続きは食事が終わってからです」
「……はーい…」
少し残念そうに返事をすると首に回した腕を解き湯船に浸かった。
そんな行動に苦笑を漏らし、こめかみにキスをひとつ与え耳元で囁く。
焦らないでください、僕達のバレンタインはまだ始まったばかりですよ、と。
(チョコより甘い時間は始まったばかり)
end
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