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HAPPY VALENTINE!!



事の始まりはリボーンが面白半分に『ボスのハートを手に入れろ大戦争〜バレンタイン編〜』なんて言うふざけた催し物を開催しやがったことだ。
ボンゴレファミリー総出でボスである俺との鬼ごっこが始まってしまった。広い屋敷内を逃げ回り俺を捕まえようとする部下を蹴散らし(ボスを捕まえた優勝者には一週間の休暇とボスの、所謂俺の所有権が与えられる。なんで俺が所有されなきゃならないのか分かんねぇ。俺が骸と付き合ってるの知ってるだろリボーン!!てか、部下に負けるつもりなんてサラサラ無い)、何故か任務を放棄して帰ってきた守護者達の相手もしながら(さすがに守護者の相手はツラい。特に雲雀さん。でもあの人は俺の所有権よりもただ俺と殺し合いがしたかっただけだきっと。隼人は一発KOだった。武はしつこい。了平さんは普通に部下と戦ってた。何しに帰ってきたのか…。ランボは泣いてたし)、ひたすら骸を探した。部下や守護者達は探さなくてもワラワラと虫のごとく湧いて出てくるのに骸の姿だけが見つからず、いつの間にか参加していたヴァリアーとキャバッローネの相手、更にミルフィオーレまで出てきたものだからその対応に忙しくて結局見つけられず、今に至る。




「ハァ…ハァ…」

誰もいない廊下を独りで走る。ある程度の奴らは片付けたけど、まだ白蘭とか雲雀さんとかが残ってる。(ヴァリアーは面倒なので一気に片付けた)武は多分…まだ残ってるかもしれない。以外に頑丈だから。ディーノさんは雲雀さんに殴られて倒れてた。この10年であの師弟の立場は逆転したらしい。雲雀さん超すげぇ。

突き当たりを左に曲がってから壁に背を預けて一休みする。バレンタインなのに何やってんだろ、俺。
ていうか、なんで骸は探しに来てくれないのかな。これだけ屋敷内を走り回ってるのに一回も見かけてない。

すれ違いでもしてるのかな?

それとも、ミルフィオーレの誰かの相手をしてて俺の所に来れない?



思考は骸のことばかりで、他は何もない。寂しい、会いたいと心が泣いている。こんなバトルなんて早く終わらせて、二人きりで過ごしたい。
整った息を大きく吸って、吐いた。気合いを入れる為にスーツの上着を脱いで床に落とす。ネクタイを緩めてシャツのボタンを二個外した。その時だった。




ぞわり、




背筋に悪寒が走る。背中にぞわぞわと痺れが走ったその瞬間、前方へと頭を抱え込んで体を倒れさせた。すぐに今まで体と頭があった所の壁が破壊され、振り返って見ればトンファーを構えた雲雀さんがそこにいた。壁を破壊したのも雲雀さんだ。

「見つけたよ、沢田」

不適に笑ったその人はなんとも楽しそうな顔だった。誰だよ、こんな戦闘狂をボンゴレの守護者にしたの!!いや、俺だけど!!

「っ、雲雀さん、今の避けられなかったら死んでましたよ…!」

「避けられたじゃない」

「だって死んじゃいますもん!!」

「避けられたんだから良いじゃない」

「そうじゃなくて!!」

ヤバい、超不毛だこのやり取り。
倒れていた体勢から起き上がり身構える。すると更に笑みを深くした雲雀さんが獲物に死ぬ気の炎を灯した。どうやらそろそろ本気で来るらしい。こちらも動き安くなった身なので、本気で行かせてもらうことにする。
グローブに炎を灯し、ぐっと右足に力を入れ床を蹴った。トンファーを防御に使おうと雲雀さんは右手のトンファーに炎を集中する。左手の方はカウンター用だ。先ずは一発、と拳を振り上げ






「綱チャン見ーけっ!!」

「ふごっ!!」





ずざざざざざと床の上を滑る。絨毯が引かれているので摩擦が強く、擦れる腕やら尻やらが熱くて痛い。ついでに抱きつかれた腰辺りが重い。

「やったぁ、綱チャン捕まえたー!」

「白蘭…」

ぐりぐりと腹に頭を押し付けてくるのはミルフィオーレの白蘭だった。ちくしょう、タイミングが悪い。雲雀さんの相手だけでも相当大変なのに!不意に雲雀さんを見やれば物凄い怒っていた。そうだよな、殺し合いの最中に邪魔が入ったら怒るよな…

「ちょっと邪魔しないでよ白髪」

「えー、嫉妬してるの?男の嫉妬は醜いんだよー?」

「とりあえず退いて、重い」

上にいる白蘭を退かせて起き上がれば白蘭も起き上がった。腰に回った手は払い落とす。

「君から先に咬み殺してあげようか?」

「綱チャンとこれから運動するから無駄な体力使いたくないんだけどなぁ」

すでに咬み殺す気満々の雲雀さんはトンファーを構えてた。このまま二人で潰し合えば楽なんだけど、どうせ俺に矛先が向くのは時間の問題だ。なら、早めに終わらせるに限る。

「悪いけど、俺は早く骸を探しに行きたいから二人共潰させてもらう」

グローブに再び炎を灯して二人を見据える。
すると、きょとん、と可愛らしい擬音が鳴りそうな顔をした。え、何か変なこと言った?


「骸君…?」

「あいつは参加してないよ?」









「え…………?」

「骸君がいるとどうせ綱チャンは骸君に捕まりに行っちゃうから面白みが無いって黄色のアルコバレーノ君が言ってたよ?」

「この催し物も知らされてないんじゃない?知ってたら意地でも来るだろうし」

さらりと語る二人は最早視界に入って居なかった。



骸が見つからないのも、探しに来てくれないのも、俺が寂しい思いをしてるのも、全ては、…………………












リボオオォォォォオンンンンンンン



「「ひっ………!!」」



ゴォッと殺意と怒りが入り混じった気が溢れ出し死ぬ気の炎が増長され辺りをジリジリと焦がして行く。気に当てられ二人は後退した。顔には焦りが見える。白蘭は笑顔が引きつっていた。

「ぼぼぼぼぼくは用事があるからっ…!!」

「そっ、そうだ、ボクにも用事があるんだったー!ごめんね、また今度ねー!」

くるりと反転し早足で逃げ去ろうとする二人に待てよと制止を掛ける。ぎぎぎと首を後ろに向かせ作り笑いを見せた。この10年で(白蘭は数年で)二人は本気で怒った俺は関わらないに限ると学んでいる。しかし、既に遅い。

「お前等そのこと知ってたんだよなぁ?」

「「……………」」

決して頷きはしない。こちらは返答を期待しない。何故なら確信しているからだ。

てめぇらも同罪だああああぁ!!

「綱チャン!?」

「そんな理不尽なっ!!」

「「ギャアアアアアアアアアァアァアァアアァァ!!」」


















(また今回も遅刻ですかねぇ)

リビングのソファに座り読書をしながらクリスマスのことを思い出した。あの時は時刻が完全に日付を跨いでから彼はやっと来た。今回も日付を跨いだ頃に来るだろう。
ガラス製のテーブルの上にはラッピングされた長細い箱が置かれている。中身は綱吉君に渡す万年筆だ。指輪もブレスレットもペンダントも既に贈ってしまっているので、次は身の回りの用品を固めて行こうと思ってそれにした。やはり毎日使う物と言ったら万年筆だろう。

そこまで思考した所でガチャリと玄関の開く音がした。おや、と目を見開く。予想に反して来るのが早かった。もしかしたら早く会いたくて仕事を放り出して来たのかもしれない。愛しさを感じつつ、もし放り出して来たのなら追い返さなければとソファから立ち上がり彼を出迎える為、玄関に向かった。

「お疲れ様です綱吉君、仕事を放り出して来てないです、か、って血まみれ!?な、何があったんです!?襲撃でもされたんですか!?今すぐドクターを呼びますからっ!」

「大丈夫だよー、全部返り血だから」

明らかに一人分の血の量じゃないですよね!?一体今まで何やってたんですか!しかも無傷で!いや、怪我が無くて何よりですけど!」

「まぁ、ちょっとお仕置きをね」

「お仕置きでこんなに血が飛び散るのって普通無いですよ!」

怪我が無いことに安堵し、とりあえず雨にでも打たれたのかと言いたくなる程に血で濡れたワイシャツを脱がせバスルームに突っ込む。風呂の準備をしておいて良かったと思いながら着替えを取りに自室に向かおうとバスルームを出た。

「骸ー!俺、骸のこと愛してるー!」

「はいはい」

バスルームから聞こえてくる愛しい声に苦笑しつつ、一先ず甘い時間はおあづけにして血まみれの綱吉君を綺麗にすることに専念した。

万年筆は全てが終わってから渡せば良いですね。

















後日、ボンゴレ邸に行くと部下が殆ど居らず、どうしたのか聞くと「入院中」と返ってきた。いや、そんなまさか。
アルコバレーノに会いに行ったらベッドに包帯ぐるぐる巻きになって寝ていた。驚いてどうしたのか聞くと口を噤んだ。
雲雀君も同じような状態だった。山本武は逃げた。笹川了平は「知らん!」と言っていた。多分本当に知らないだろう。獄寺隼人は「10代目すみませんすみませんすみません」と精神に異常をきたしていた。とりあえずベッドに運んで休みを取るように言っておいた。


バレンタインの日、一体何が起こったのか、図らずしも分かってしまったが、触らぬ神に祟りなし。

我関せずを貫こうと心に決めた。




頭を洗ってあげている時の満足そうな笑顔が眩しかった。
今、改めてそう思う。







end






バレンタインに血まみれとかっ…!!

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