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クリスマスにクッキーとか


「何をしているのですか、ボンゴレ」





視線の先には何を思ったのか僕の家の台所でクリーム色の粘土のようなものをこねているドン・ボンゴレがいた。
僕は彼を家に招いてはいないし部屋に通した覚えもない。何故いる。不法侵入は犯罪だと言えれば楽なのだが生憎彼はマフィアという立派な犯罪者だ。

「クッキー作ってんの。骸は今まで何処にいたんだよ?せっかく会いに来たのにリビングにはいないし」

「リビング以外の部屋を探そうとは思わなかったのですか。自室で読書してましたよ」

物音が聞こえたので台所まで来たのだ。泥棒だとか敵対マフィアが侵入してきたとかは考えていたがまさか自分のボスが侵入していたとは思わなかった。

「どれくらい前からいたんですか?」

「二十分位前じゃない?」

そんな前からいたのに気付かなかったとは…自分の感覚が鈍ったのか彼が気配を消すのが上手いのか…前者だとしたら困りものだ。

「ちなみに生地は既に作ってあったものを持ってきました」

「……そうですか」

彼の手にある星型の型も自宅から持って来たのだろう。その他に人型や花型、動物型もある。ちなみにハート型が無いのは彼が嫌うからだというのを知っている。
小さな皿にはチョコチップが入っていた。それを2つ取り人型に型取った生地の真ん中に間隔を少し開けて埋め込む。ボタンの代わりだろう。
作ったものはクッキングペーパーを敷いたトレイの上へ。そこにはお菓子やその他の食べ物や動物や所謂精霊と同じような生き物達が住まう世界のキャラクター達がクッキーにされていた。子供に愛されるその世界のヒーローは空飛ぶパン菓子だ。大の男(彼の容姿からして『大の男』と言うのは余りに似合わなさ過ぎる)がそんなファンシーなものを作っているなどとは他の誰にも言えないだろう。

「骸も作ってみる?」

「手が汚れるから嫌です」

「んじゃ、手洗って小麦粉手に付けて」

「やらせる気満々じゃないですか」

なんで聞いたんだ、なんてことをぼそりと呟きながら手を洗った。素直に従う自分を情けなく思うが、まぁ………許容範囲内だ。
手に小麦粉を付け生地をこねる。さて、何を型取るか…

「骸、骸、見て見て!」

「なんですか?」

「パイナップル作った!!」

「死にたいですか」

「ごめんなさい」

丸く平べったい型を作りその上の方にギザギザとした生地を付けてあった。ご丁寧に手の平で細い棒のようなものまで作って平べったい方に左右斜めに置いてパイナップルの表面を表している。手の込んだことを。
お返しにと魚を型取り胴体の上と下の方にギザギザを付けた。

「………なに、それ」

「シーチキン、所謂マグロですね」

「………なんかすごく屈辱的…」

「僕の気持ちが分かりましたか」

「もうしませんごめんなさい」

そう言いながらもクッキングペーパーの上にはしっかりとパイナップルのクッキーが乗っていたので僕もマグロを上に置いた。焼けた後が楽しみだ。









「ずっと聞きたかったのですが」


オーブンに入れて待つこと15分。そろそろ焼ける頃だろう。
オーブンのサイドに椅子を持ってきて2人で温かい紅茶を飲みながら焼けたことを知らせる電子音を待つ。使ったものはまな板と小麦粉、型、小皿、伸ばし棒だけだったので片付けるのは簡単だった。

「んー?」

間延びした声が返ってくる。コクリと紅茶を飲んでいる音が聞こえた。

「何故、此処に来たのですか」

彼の服装はスーツだ。仕事をした帰りに寄ったのか、はたまたサボって来たのか。

「んー…実はさ、この後会食があるんだ。同盟ファミリーと。クリスマスなのにね」

「クリスマスだから、じゃないんですか」

そのファミリーのボスからして見たら願ってもないことなのだろう。クリスマスを共に過ごせるなど。
彼は気付いていないのかもしれないが、ドン・ボンゴレはファミリー内ばかりでなく他所のファミリーにも絶大な人気を誇っている。そんな中でクリスマスの予定を勝ち取ったのだ。そのボスは。

「本当はケーキとかの方が良いんだろうけど、時間もないし、それに、骸と一緒に、作りたくて…」

「だからこんな幼い子供が考えるようなクッキー作りにしたと、そういうことですか」

「幼いって言うな…」

顔を赤らめて彼はそっぽを向いてしまった。
しばらく黙って彼を見つめていると彼は顔の火照りが治まったのか、今度は悲しげな顔を向けた。

「……仕事ばっかりで、ごめん…」

「…………………」

ふぅ、と溜め息を吐き出し、僕は背にしていたシンクに紅茶のカップを置いた。彼のカップも奪い取りシンクに置くと、腕を引き膝の上へ座らせた。

「たかだかクリスマスでしょう。僕はキリスト教徒ではありません。行事なんてものは有って無いようなものです。クリスマスを祝う気も僕にはありません。それでも、」

電子音が響いた。クッキーが焼けたのだろう。
彼がオーブンに視線を向けたので顔に手を添えこちらを見させる。

「君が祝いたいと言うのならば、夜中でも待っていてあげますから、此処に来ると良い」

少し手に力を入れ彼の顔を近づけて触れるだけのキスを。
彼は驚いた顔をしてから顔を綻ばせ再度キスを強請った。






end










【おまけ】


「食べて行く時間はありますか?」

「ううん、それは俺が帰ってきた時に一緒に食べたい」

コートを羽織り出る準備をする。こちらはクッキーを皿に移している最中だ。焼き加減は良いが、問題は味だ。何せ彼が作ったのだから。
ふと目に入ったものを手に取る。形は崩れなかったようで安堵した。

「ボンゴレ、」

「んー?」

「これ、食べて行きます?」

差し出したのはマグロのクッキー。知っての通り、僕が作ったものだ。

「………どうせならパイナップルが良い…」

「……は?」

「だってお腹の中に骸がいるみたいでい」

気持ち悪いこと言わないでください






おわり






クリスマス過ぎたけど…まぁ、良いですよね…?

骸は嫌味で綱吉にマグロクッキーを食べさせようとしたんじゃなくて、自分が作ったクッキーだから綱吉に食べてもらいたかったんです。

てか、これどう見てもツナムクじゃねぇかっ…!!
とりあえず言っておきます。綱吉は明日、喉とか腰とかが酷いことになってます。








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あきゅろす。
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