赤い中の黒い人間(微グロ)
「雲雀さんとクリスマスを一緒に過ごせるなんて夢みたいです、嬉しいです」
「僕もだよ。でも、」
頭蓋骨が割れる鈍い音が響いた。雲雀にたった今トンファーで薙払われた男が数メートル先まで吹っ飛んで行った。
「綱吉と2人きりが良かったな。邪魔な奴がいない所で」
「あ、じゃあ雲雀さん、」
炎を灯したグローブで男の胸倉を掴み上げると一瞬にして燃え上がり、男は耳に五月蝿い程の絶叫を上げ絶命した。生きる上で大切な役割を果たすもの、今やただの燃えカスとなった骨を足下に捨て去り次は銃を持った男の腹部を手で貫く。
「さっさと片付けて2人きりになりましょうよ!」
柔らかな内臓を掴み手に炎を宿せばゴボリと血を吐き出し黒こげになりながら果てた。
「同感だよ、綱吉」
甘く低い声は男の顎が砕ける音に消されることなく綱吉の鼓膜を震わせた。そのまま雲雀は左手のトンファーで後ろにいた斧を持った男の目を突き刺し右手のトンファーでこめかみを抉る。男は地に伏した。
ヒュン、とトンファーを凪ぐと付着していた血液が振り落とされ床に飛んだ。
グローブに付いた肉片はハンカチで拭き取り床に捨てる。
「Merry Christmas!雲雀さん!」
「うん」
綱吉は雲雀の後ろから声をかけビチャビチャと靴音を鳴らせて雲雀の下へ向かう。綱吉を見た雲雀は緩やかに微笑んだ。
「俺達、全身真っ赤ですね!」
「そうだね」
返り血も気にせずに雲雀は綱吉の腰に腕を回す。引き寄せられながら綱吉の手は雲雀のネクタイを緩めた。シュル、と布同士が擦れる音と床を踏む水音、それだけが今、静寂なその空間に響く。
「何、ここでするの?」
変わった趣味を持ってるね、そうクスクス笑いながらされるがまま。
次はボタンを外し三段目で手を止めた。
「それも良いですけど、そうなると雲雀さんの顔に付いた血を舐めなきゃならなくなる。雲雀さんの血なら飲みたいけど他人の血は今は嫌」
「嬉しいことを言ってくれるね。じゃあ何しようとしてるの」
「心臓の音が聞きたいんです」
「なんで」
「気持ち悪い悲鳴ばっかりだったから、耳直しに?」
そう告げて晒した胸板に耳を当てる。じっと息を潜めて音に集中するとドクリドクリと少し早い心臓の音が聞こえた。
「まだ興奮してますか?」
「別の意味でしてる」
「やー、へんたーい」
「君に言われたくないね」
そこで会話は途切れ、綱吉はただ心臓の音だけを聞いた。そう言えばさっき誰かの心臓を握り潰したっけ、声に出さずに先程の記憶を読み返す。
「雲雀さんの心臓を手に持って、その脈打つ鼓動を直で感じられたら良いのに」
右手で胸板の恐らく心臓があるであろう場所をなぞる。血は乾いていて、皮膚にそれが付くことはなかった。
「最後は、俺の手でその鼓動を終わらせるんだ。嗚呼、なんて」
素敵、すり、と胸板に擦りよる。恍惚とした表情はまるで酔っているようだった。雲雀の心の臓、それが何よりも大切で、何よりも欲しいもので、何よりも壊したいものなのだと、綱吉は思う。雲雀の思考も行動も鼓動も瞳も鼻も口も耳も喉も肩も腕も指も爪も胸も腹も腰も足も血管も血液も筋肉も内臓も神経も骨も細胞に至るまで全てが自分のものなのだと。
ドクリ、ドクリと落ち着き始めていた心臓の音が再度活発に動き出した。それに気付いた綱吉は雲雀の顔を仰ぎ見る。
笑って、いた。
「そんなことを思ってたの?」
「雲雀さん、怒りました?」
「まさか」
ゆっくりと綱吉の頬に雲雀の掌があてがわれる。親指で頬を撫でると告げた。
「あんまりそういうことを言うと後で酷いよ」
「やっぱり怒ってる」
「違うよ」
「じゃあなんですか」
「欲情してる」
ぞくぞくと、背筋に感情が走る。その感情は、きっと、自分も欲情しているのだと、すぐに分かった。
「今日は加減出来そうにないね」
左手で足を抱え右手で肩を支えると雲雀は綱吉を抱き上げ扉を目指した。それが何を意味するかは綱吉には分かる。
「いつも加減してるんですか?」
分かるからこそ、綱吉は笑いながら小言を言う。
扉を抜ければ目の前には階段がありその先に石の通路があり門をくぐり抜けた右に車が停めてある。
「してないね」
階段に差し掛かる所で綱吉に唇を掠め取られながら雲雀も笑いながら歩みを進めた。
end
うちのへたれ雲雀が階段に差し掛かる所で唇を掠め取られたら階段から滑り落ちると思う。
そしてクリスマスが全く関係ない話になりました。まぁ、良いよね?クリスマス思いっきり過ぎてるしね?新年始まってすでに1月半ばだしね?うん、気にしない…………
ガタタタタタタタタ
「……………」
「……………」
「……俺を投げ出さなかった所は偉いですよ、雲雀さん」
「……………」
「……………………………………………………………………」
「……っ罵りたいなら罵れば良いだろ!冷たい視線だけを僕に向けないでよ!!無言が一番キツいよ!!」
「そうですか、無言が一番キツいですか、じゃあ鼻フックで背負い投げを」
「ごめん、それが一番キツい」
絵的にね。
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