大好き大好き雲雀さん!!(骸語り) 今日は犬と千種と三人で新しく出来たアイスクリーム店に行く予定を立てていた。そこのキャラメルアイスは濃厚でチョコソースとフレーク、そしてフルーツをあしらってカップで食べるのが評判だった。二番人気はチーズケーキのソフトクリーム。甘い中に仄かな酸味が舌を撫ぜ溶けていく柔らかい味が人気を呼んでいる。もちろん僕としてはチョコアイスにホワイトソースをかけてフレークをあしらい最後にクッキーを添えた三番人気のチョコアイスカップを食べたい。トッピングに生クリームも欠かせない。 「ちょっと、僕の話ちゃんと聞いてる!?」 「聞く耳持ちませんよ…右から左へです」 「ちゃんと耳に入ってるんだね、じゃあ続けるけど」 なんで僕は雲雀君の恋人の愚痴(もといノロケ)を聞いてるのでしょうか…!! 「確かに可愛いし愛しいし手離すつもりも無いけどグローブ使って僕に突っ込んでくるのはどうよ!?無様に悲鳴を上げる訳にもいかないし、かと言って受け止めきれないんだよ!!あれがどれだけ力強いか知ってる!?ゴリラに抱き締められるよりもアナコンダ(蛇)に巻き付かれるよりも強いんだよ!?」 「キャラが壊れてる上に自分の恋人をゴリラやアナコンダ(蛇)と比べて良いんですか。あと受け止める君もどうかしてますよ。ゴリラやアナコンダ(蛇)の強さで突っ込まれておきながら骨折しないとかどんだけ丈夫なんですか」 ここは並盛の隣の町にある住宅街の道端である。はっきり言って何故こんな所で愚痴(もう一度言うがノロケだ)を聞かされているか分からない。僕はアイスクリーム店に行きたいのに!!チョコアイスカップが食べたいのに!! そもそもの始まりは僕が歩いていたら彼がバイクに乗って僕に突っ込んで来たのだ。間一髪で避けた僕は(もしも避けれなかったらどうするつもりだったのだろうか)彼に文句を言おうと近寄ると声を荒げて『ちょっと聞いてよ!!』といきなり愚痴(何度も言うがノロケだ)を言ってきた。道端で男二人が喋くっているのは奇妙なことこの上ない。なんなんだ!!僕が何をしたと言うんだ!!今日は厄日か!! 「昨日なんか気持ち良く群れを咬み殺してる所を邪魔されたんだよ!?いくら可愛いくて愛しくて大切で仕方ないとしても僕の至福の時を奪うのは頂けないよ!!」 「そもそもそれが『至福の時』ってどうなんですか。だから君の恋人は怒ったんじゃないですか。そして僕の『至福の時』を奪っているのは紛れもなく君だ!」 「そんなの知らないよ」 「理不尽過ぎる!嗚呼、僕はなんでこんなことに付き合わされてるんでしょうか…大体、なんで僕に愚痴(しつこいようだがノロケ)るんですか。一々隣町まで来なくても良いじゃないですか」 「並盛にいたら綱吉が来るかもしれないでしょ。それにこんなこと言える人間なんて並盛にいないからね」 「…ようするに僕は君の体の良い愚痴(だからノロケ)相手なんですね…」 上手く利用されてる訳だ。 だが、確かに彼の恋人に見つからないこの町は最適だろう。何せその恋人は確かな理由があって彼に突っ込んで行くのだから。 恋人は決まって彼が誰かの傍にいる時にしか突っ込んで行かない。それは彼の部下だったり彼が言う『至福の時』の相手だったり。彼は群れを嫌う。その彼の為に群れから遠ざけようとしたり周りの者から彼が『群れている』などと噂されない為にやっている訳ではない。 「別に僕は君を体の良い愚痴相手なんて思ってないよ」 「え…………」 いきなり言われた彼の言葉に僕は目を見開いた。 今何と言った?あの彼が?まさかそんなことはない。あの彼が… 「僕は少なからず君に興味を抱いているし、その辺の草食動物よりずっと頭も切れる。僕は君を認めてるんだよ」 「…っ……!!」 大変だ、大変なことを聞いてしまった…!! 僕は一気に血の気が引くのを感じた。彼が有り得ないことを言ったことに対して血の気が引いたのではない。彼の言った言葉にこそ重要性があるのだ。 「雲雀君、今のは嘘ですよね、嘘と言ってください、それ以外の言葉は受け付けませんっ…!!」 「は?何言ってるの?」 「お願いです早く取り消してくださいっ…!!もしも君の恋人に聞かれていたらどうしてくれるんですか!!」 「馬鹿なこと言わないでよ、そんなことある訳ないじゃない。並盛からどれだけ離れてると思ってるの?」 「そ、そうですよね、そんな訳ないですよね…」 ドクドクと鳴り出した心臓を鎮める努力をする。そう、彼の言う通りだ。こんな隣町まで来ない。絶対に! 「大体なんでそんなにビクついてるの?いくら綱吉でも僕以外の他人に突っ込んで行きはしなばぶぅっ」 「!?」 ずざざざざああぁ!! ききききききききききてしまったっ…!! 今まで目の前にいた彼は僅か一秒で40m先まで飛んでいた。土煙であまり良く見えないが確実に誰が彼をそこまで飛ばせたのかは分かる。分かってしまえる。 「雲雀さん、探しましたよ!」 「や、やぁ、綱吉…」 彼の上に跨っているのは疑いようもなく彼の恋人の沢田綱吉だ。 一体どうやってここに辿り着いたのかは…まぁ、見当はつくのだが(超直感だろう)、それよりも気になるのは今までの会話が聞こえていたかどうかだ。もしも聞こえていた場合は…どうなるか分からない… 「ごめんなさい雲雀さん、俺、雲雀さんの邪魔したんですよね?だから怒ってこんな隣町まで来ちゃったんですよね?すみませんでした…」 「いや、確かに怒ってたけど…別にそれが最大の原因じゃな」 「ごめんなさい雲雀さんっ!だから、嫌いにならないでくださいっ……!!(涙目)」 「……っ!!綱吉ごめん、僕が間違ってたよ!君を泣かせるつもりはなかったんだ…」 バカップルよろしく抱き締め合った二人は僕の存在を忘れたらしい。それで良い。これで僕は無事にアイスクリーム店に行け… 「ところで骸、良かったね、雲雀さんに認められて!!なかなか雲雀さんが認める人って少ないんだよ?」 ピタリと立ち去ろうと動かした足を止めた。壊れたロボットのごとくギギギとゆっくり首を回し彼らを見る。 「すごいね骸!おめでとう!」 睨んでるめっちゃ睨んでる!! 顔は笑顔だが目が口程にものを言っている! 『てめぇ俺の雲雀さんに認められるたぁ良い度胸だな後で9/10殺しだからな』 9/10殺しとか限りなく死に近い!! そう、彼の恋人はただ嫉妬しているだけなのだ。彼の為に突っ込んで行くのではなく、彼の傍にいる奴らが気に入らないから彼を奴らから引き離し彼の傍にいるのは自分なのだと主張したいだけなのだ。はっきり言って歪んでいる。 そして守護者には手加減しない。一般人よりも丈夫だからだ。そう来ると話は簡単だろう。僕の命が危険に曝されている。 だが、一番の問題は彼が全くを持って恋人のその感情に気付かないことだと思う。嫉妬していることも気付かないし、今の過々しいオーラにも気付かない(こんなにドス黒いのに!!)。 きっと僕はアイスクリーム店に行けないまま病院で過ごすことになるのだろう。 end [*前へ][次へ#] [戻る] |