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石膏の骸骨

木場榎 昔話



むかしむかしあるところに、とてもうでの良い『ちょうこくし』がいました。

ちょうこくしは見た目はとてもこわいのですが、たのもしく、やさしい心をもっていたので町の人から、だんな、とよばれて好かれていました。

だんなはとくに『せっこう』のちょうこくがじょうずで、まるで今にもうごきだしそうだ、と言われていました。

ごつごつしただんなの手から作られるちょうこくはすべすべのはだをしたうつくしいものばかりです。

だんなの元にはたくさんのお客さんがきました。

少女のきょうぞうを匣にみっしりとつめてもらうおとこのひとや、だんなに作ってもらったおんなのひとのぞうにまい日キスをするきぞくもいます。

みんなとても幸せそうでした。

ある日、うわさを聞いた王さまがだんなにじぶんのかぞくのぞうを作ってほしいとたのみました。

その日からだんなはおしろに行き、まい日王さまやおきさきさま、王子さまをスケッチしてはぞうを作りはじめました。

だんなの作ったじぶんそっくりのぞうに王さまはとてもよろこんで、とうしんだいのそれをにわにかざらせることにしました。

王さまには王子が二人いました。

おとうとのほうの王子さまはとてもうつくしいことでひょうばんでしたが、なかなかスケッチをさせてくれません。

王さま、おきさきさま、兄の王子さまのぞうができあがってもおとうと王子さまのぞうはなかなかできません。

だんなはまい日まい日おしろに行きました。

おとうと王子は言います。

「おにごっこでぼくをつかまえたらスケッチさせてあげるよ」

王子さまはとても足がはやく、なかなかつかまりません。

それでもある日、だんなはやっとのことで王子さまをつかまえてスケッチをさせてもらいました。

だんなはぞうを作りはじめましたが、1日たつとおとうと王子がぞうをこわしてしまいます。

だんなはやめてもらえるようにたのみましたが、王子は聞いてくれません。

「ならお前がみはればいいじゃないか!」

だんなはおしろのとまることにしました。王子はごはんをわけてくれました。

だんながぞうを作っているとおとうと王子はいつもじゃまをしにきました。

ぞうはなかなかできあがりません。

そのうちに王子はせいちょうしてうつくしいせいねんになりました。

ぞうは作り直さなければなりませんでしたが、スケッチはひつようありません。

そのころにはだんなとおとうと王子はすっかりなかよしだったからです。

そうしてついにおとうと王子のぞうもかんせいしました。

うれしそうにほほえんでいる王子にまけないほどうつくしいぞうでした。

王さまはとてもよろこびましたが、だんなのすがたはどこにもありません。

それからだんなのすがたをみたひとはだれもいません。

おとうと王子はかなしそうでした。ふたりはとてもなかが良く、王子はだんなのことがだいすきだったからです。

おとうと王子はまい日じぶんのぞうをみつめていました。

ある夜、おおきなじしんがおこりました。かざんがばくはつして灰が町をおおっていきます。そうして町はながいねむりにつきました。



えらいがくしゃさんがいせきのはっくつをしていました。

がくしゃさんはいせきのなかからとてもうつくしいうでのないせっこうのぞうをはっけんしました。

ぞうはとてもかなしそうなかおでした。




石膏の骸骨
(ものがたりはこれでおしまいです)



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