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あなたには私が絶対必要なこと、知ってる?
京関 現代パロ 大学生






「君が馬鹿なのは知っていたがね、ここまでとは思わなかったよ」

「……」

「それともこれは消極的な自殺なのか?僕はお邪魔だったかい?」

視線の先で関口が怯えた様に首を横に振った。自分が今、どれほど険しい顔をしているかは解らないが、それが更に険しくなっていくのをハッキリと自覚した。
ほんとにこの馬鹿が。眉間の皺が消えなくなったら責任を取って貰おう。

「なら何故もっと早く連絡してこなかったんだ!君の枕元にある電子機器はパコパコして遊ぶための玩具なのかい?」

そういって睨みつければ布団に潜って逃げようとする。引き摺り出す際に触れた身体はまだ熱い。それにまた苛々して関口の額に貼った冷えぴたを乱暴に付け替えた。

「病人は大人しくしてい給え」

「…病人ならもっと優しくしてくれてもいいじゃないか…」

「生憎、風邪を放置して死にかけている愚かな男に与える優しさなんて持ち合わせていないのでね」

ほんとに馬鹿野郎だ。三日間薬はおろかろくに水分も取らずに寝て居たって良くなる筈ないじゃないか。今日僕が訪ねて居なければどうなっていたことやら。想像するのも怖い。

「ほんとに何で連絡してこなかったんだ」

「だって…」

風邪で嗄れた声はいつもに増して聞き取りずらい。顔を近付けると思いっ切り避けられた。苛々する。
前髪を掴んで顔をこっちに向けさせると観念したようにぼそぼそと話し始めた。

「だって…君とは喧嘩中じゃないか…。それにすぐ治ると思ってたんだ。君にうつしても悪いし…」

「じゃあ僕じゃなくても違う奴に差し入れ位頼めば良かったじゃないか」

「あ、そうか」

何だか溜息が出た。怒る気にもなれない。
掴んでいた前髪を離すと即座に布団に潜っていった。お前は亀か。
もごもごと拗ねたような声が聞こえる。

「き、君にだって責任があるんだぞ。君が勝手に出て行くから、何が何処にあるのかよく解んないし、部屋はどんどん汚くなるし。この風邪だって君が居留守を使うから僕はあの寒い中ずっと君の家の前で突っ立って居る羽目になって…」

ごほごほと咳をする。布団の上から背中らしき所を擦ってやればそろそろと頭が出てきた。
やっぱり君は亀か。

「…ごめん、中禅寺。僕が悪かったよ。だから、戻って来てくれないか…?僕は君が居ないと駄目みたいなんだ」

もう一度溜息を吐く。そんな顔で頼まれて断れる人間が居るとしたら堂島教授くらいだろうさ。

「もう寝たまえ。君が起きていると何時までたってもコンビニに行けないじゃないか。プリンが食べたいのだろう?」

馬鹿みたいな顔で、中禅寺はやっぱり優しい、などと笑うから頭から布団を被せてやった。
嗚呼もう馬鹿だ。本当に馬鹿。
関口の余りにも人任せなところにイラついて喧嘩した筈なのに、頼られないと寂しいなんて思う自分か一番馬鹿だ。



あなたには私が絶対必要なこと、知ってる?
(僕にだって君が絶対必要なのだけれど)




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