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揺らぐ心



俺はお前を見て生きてきた

お前は俺の全てだった

それがなくなった今

俺に残っているものなんて何もない


寂しさ、虚しさ、空虚感

それさえも感じなくなっちまったんだ










【揺らぐ心】










目を開けて最初に見えたのは、真っ紅な世界だった

一面に広がっている紅は自分のものではない
血に染まった刀を見るとウズウズと身体の中から負の感情が沸き上がる

自分の中で殺し好きの獣が今だにのたうち回っているのだろう


殺シ足リナイ…


辺りを見渡せば、紅く染まった屍が幾つも転がっていた

すると
一つから唸り声が聞こえた
近寄るため、歩くたびに紅い地面がベチャベチャと不快な音を立てる

それの首を掴み上げると、口から血を吐いた


「クククッ、まだ息の根があったのか…テメェもしぶてぇ野郎だなぁ。」


「ゲホッ、ッ…高、す…ぎ。」


「あぁ、早くあの世に逝きてぇってか?今すぐ逝かしてやるよ。」


「ッー…お、前…何故、人…殺、す?」


絶え絶えになりながら聞こえてきた言葉に高杉は手を止める
目は虚ろで此方を見ているが、焦点が合っていないようだ

最後の足掻きなのか、着物を掴んで離そうとしない


“お前は何故人を殺す?”


「…そんなこったぁ、決まってんだろぉ。」


ニヤリッと上がった口元にゾッと寒気を感じた
その鋭い瞳は、何も映してないような冷たいものだった


「快楽を求める為だよ。」



ザシュッ



肉が千切れるような音と共に、ゴロンッと崩れ落ちた
其処にまた生暖かい紅い血が広がっていく


「…汚ねぇなぁ。」


真っ紅に染まった刀を振り払い、腰に収める
懐から取り出した煙管に火を点け一服すると、獣の呻き声が納まった

彼はそのまま暗い路地裏へと姿を消した



*****



「…またか。」


通報があり駆け付けてみれば、其処は血の海だった
忙しなくサイレンの音が響く中、一人内心が揺らいでいた

周りの音や声が、全く耳に入ってこない


「…−ちょう……−副長!!」


ビクリッと身体を揺らし、呼ばれた方を見る


「…山崎。」


「どうしたんですか?ボーッとして。」


「いや、何でもない。」


治まらないざわめきを、必死で抑えてあくまでも冷静さを保つ


「でも、顔色が…最近、同じような事件が続いていますからねぇ。」


「…あぁ、そうだな。」


最近、同じような事件が立て続けに起きていた
それが始まったのは、丁度今から三ヵ月ぐらい前の事
それは、人を無残にも切り刻んでいくというものだった

早くも肉の腐れた悪臭が、辺りに漂っている

そして、微かだが残っているのは…


(…煙管の匂い。)


その事件では、何時も微かに煙管の匂いが残っている
それは、自分が今から三ヵ月前ぐらいに嗅いだ匂いと同じもの


「なんて、顔してんでィ。」


「うるせぇ。」


隣で事件現場を眺めていた栗色の短髪の青年が話し掛ける
土方の様子を見て、眉を潜めバズーカを構える


「アンタがそんなんじゃ、俺が副長の座を頂きまさァ。」


「…仕事しろ。」


そう言い残して、土方は現場へと入っていった
その後ろ姿を沖田は睨み付ける


「仕事に集中してないのは、どっちでさァ。

…アンタがどぉにかしなきゃ、この事件は解決しやせんぜ。」


沖田の言葉は土方の耳に入る事はなく、騒がしい周りの空気に溶け込んだ

土方は煙草に火を付け、空へと上がっていく煙を見ながら彼の後ろ姿を思い出す


(…晋助。)


その後ろ姿は、振り向く事無く消えてしまった














思い出される見慣れた後ろ姿は儚く消えてしまう

それの繰り返し


俺はお前と二度と会わないと決めた

だが
どうしても忘れる事が出来ないでいる


そんな俺を見て、お前は嘲笑うだろうか

それとも、涙を見せてくれるだろうか



俺は、お前がまた笑顔で振り返る日を夢見てる










★FIN★





はい、続きます。
ってか、続かせます(笑
まぁ、何時になるかは…;

三ヶ月前二人の間に何があったんでしょうねぇー…。


By.黒蝶 紗紅桜



あきゅろす。
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