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嫌いだなんて言わないけど
*騎士→←皇子(^q^)
無駄にえろがながいです





 我が騎士である枢木スザクは、主である俺に気がある。

 もちろん、それは自惚れなどではないし、そうであれば良いという願望でもない。
 それは事実であって、俺自身の確信だ。





嫌いだなんて言わないけど





「殿下、お身体をお拭きします」

 湯気と水滴が伝う裸体をまともに見たのか、翡翠の瞳が所在なさげに泳ぐ。
 いい加減、もう見慣れても良い頃ではあるのだけれど。
 だいたい同じ男の裸を見てそんな態度をされたら、意識してると言っているようなものなのに。

 真っ白な大判のバスタオルで水滴を吹きとっていく手つきはとても柔らかい。
 濡れた髪に優しくバスタオルを押しつけ、同じように首から腕、胸へとゆっくり降りていく。
 スザクは俺と決して視線を交えようとはせず、ただ黙々とその行為を続けていく。
 しかし、だからと言って他に目の遣り場もないのだろう、相変わらずその瞳は困ったように彷徨ってばかりだが。

「スザク、背中も拭いてくれ」
「殿下……っ」

 急にちょっとした悪戯心が顔を出し、俺は目の前の騎士の首に腕を回すと、身体をぴったりと密着させた。
 耳許でスザクが小さく息を詰めた音を聞いて、俺はこっそり口角をあげる。

「殿下、お戯れは」
「聞こえなかったのか? 背中を拭けと言ってる」

 焦ったような言葉を遮り、急かすように更に素肌を押しつける。
 感じる熱は果たしてスザクのものか俺のものか。

 暫くして観念したのか、背中をふわりと柔らかい生地が覆った。
 そしてその上からスザクの手が当てられ、全体を丁寧に撫でていく。
 しかし必然的に互いが抱きあうような形になり、そうなるように仕向けたのは良いものの、慣れない体勢に心臓が早鐘を打った。

「んっ、!?」

 一瞬、指先で形をなぞるようにすぅっと背骨を撫であげられて、唇を噛み締める前にわずかに声が溢れた。
 びくりとして思わずしがみつくと、「どうしました、殿下?」と極平静な声で囁かれる。
 まさか手つきがいやらしいなどと怒鳴るわけにもいかず、結局「なんでもない」と答えるしかなかった。

(わざと、なのか……?)

 この男は稀にこういう悪戯めいたことをしてくるときがある。
 そういう俺も、スザクが焦った姿を見るのが楽しくて、つい同じようなことをしてしまうのだけれど、この男に仕返しなんて器用な真似が出来るのだろうか。
 宮中ではお人好しすぎるだの天然だのと揶揄されているこの男に。

「はい。出来ましたよ」

 完全に水気がなくなったところで、きっちりとバスローブまで着せてもらった。
 しかも極上の笑顔のおまけつきで。
 俺は短く礼を言うと、いまいち何を考えているかわからない騎士をひとり残し、足早にバスルームを出て自室に向かった。



 我ながら、子ども染みたことをしていると思う。
 スザクが困っている様を見て喜んでいるなんて。
 だけど、あの童顔に見合った初な態度を見せるその瞬間が、俺の心をたまらなく擽るのだ。
 あいつの気持ちに気づいていながら、俺はそれを利用して弄んでいる。
 我ながら悪趣味だとは思うけれど、俺だってかなり『重症』なんだと思う。

「はあ……」

 無駄に広い室内に、ため息が大きく響く。
 キングサイズのベッドに未だ火照った四肢をぞんざいに投げ出すと、面白いほど身体が沈んだ。
 柔らかいその感触に、ふと先ほどの記憶が脳裏を掠める。

 ふわふわのバスタオル。
 あの布一枚越しに伝わる、手のひらの熱。
 スザクに心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思うほど緊張した。
 身体を撫でる手は優しく柔らかく、まるで壊れ物を扱うようだった。
 だけど、それは心地好さを感じるだけではなく、何か妙な擽ったさをも感じさせる。
 身体の奥がじんと痺れ、そこから熱が広がっていくような。

「ん……」

 先ほどの触れあいを思い出したら、下腹部のあたりがゾクッと疼いた。
 俺はベッドの上で背を丸めると、その昂りをやり過ごそうとしてきつく目を瞑った。

(あいつが、スザクが悪いんだ。あんな変な触り方するから……っ)

 閉じた瞼の裏側で、人好きのする笑顔がこちらに向いている。
 ゆっくりと唇が開き、ルルーシュ、と名前を呼ばれると、ビクンと身体が波打った。

「っ……くそ!」

 どこまでも俺の心を掻き乱す男に悪態をつくも、一度燻った熱はすでに収まりがつかなくなっていた。
 おそるおそる、バスローブの隙間から自分の身体に指を這わせる。
 胸のあたりで既にぷつりと存在を主張している突起を掠めると、小さく吐息が溢れた。
 バスタオル越しではあったけれど、スザクの指がそこに触れる度に、いつも直に触れてほしいと思っていた。

「は……ぁ」

 指の間で押しつぶすように転がせば、じんと快感が下半身に伝わる。
 無意識に、頭をもたげ始めた自身にもそっと手を添えると、ぴくぴくと脈打つように震えた。

「ぅ……、すざ、く」
「殿下?」
「ほあぁああっ!?」

 ギイと扉が開くのと、スザクが現れたのは同時だった。
 あまりに突然のことに、俺は叫びながら晒しっぱなしの下肢に大慌てでシーツを手繰り寄せた。

「なっ、な、お前っ、入るときはノックしろとあれほど……!」
「すみません。ノックしたんですけど、返事がなかったので」

 悪びれたように苦笑しながら、スザクがつかつかとこちらに歩み寄ってくる。

 ノックしただと?
 馬鹿な!
 俺が気づかなかったとでもいうのか!
 しかし、こんな状況でこんな姿を見られて、どう言い訳すれば……!

 ベッド脇に立ち俺の姿を見おろすと、スザクは状況を理解したように「ああ」と頷いた。

「溜まってたなら言ってくださればよかったのに」
「だ、黙れ! だいたい、お前に言ってどうするんだ!」
「自分がお手伝いいたします」
「は?」

 なんだ、こいつは一体何を言っているんだ。
 手伝うって何をだ!
 ぐるぐると考えていたら、スザクが「失礼します」と抵抗する間もなく俺の身体からシーツを剥ぎ取った。
 唯一隠れられる場所を奪われてしまい、心許なさにずりずりとベッドヘッドに身体を寄せる。
 スザクはそんな俺を追い詰めるように、片脚をベッドに乗りあげると、俺の身体の真横に両手をついた。
 乱れたバスローブはもう役立たずで、俺は剥き出しの中心を隠すように反射的に膝を擦りあわせる。
 スザクがそれを見て、クスリと笑いを溢した。

「殿下、もしかして恥ずかしいんですか?」
「っ、当たり前だ! こんなことしていいと思ってるのか、立派な不敬罪だぞ!」
「不敬罪って、周りになんて仰るんですか? 騎士に襲われたとでも?」

 男に襲われたなんて、そっちのほうが恥ずかしくないですか? とにっこり微笑まれる。
 いつもはおどおどしてるくせに、何故今に限って強気なんだこいつは。
 そうか、俺の恥ずかしい姿を見て弱味を握ったとでも思っているんだな!
 甘い、甘すぎるぞ、我が騎士枢木スザク。
 それで主導権を握れたと思うなよ。
 俺の上に立とうなど百年早い!

「……お前、俺が気づいてないとでも思っているのか?」
「え――ぅっ!」

 俺は低くそう告げると、徐に裸の足の裏をスザクの股間に押しつけた。

「お前がどんな目で俺を見ているかなんてお見通しだ」

 痛くない程度ではあるけど、ぐっと力をいれればビクリとスザクが腰を引く。
 苦しげに歪んだ顔に妙な興奮を覚えつつ、俺はさらに言葉を紡いだ。

「どうしても、というなら……させてやらないこともない」

 俺の発言に、スザクがゆるゆると翡翠の瞳を見開く。

「ただし、俺からはお前に一切触れてやらないし、お前が快楽を得るすべはない」

 どうする? とつけ足して、俺は余裕の笑みを浮かべてスザクを見つめる。
 ――これでチェックだ。
 自らは満たされないのに、それでも進んで他人に奉仕しようなんて奴はいない。
 これでスザクは諦める。
 もし俺が逆の立場なら、見返りを期待せずに他人に尽くすなんて真似はできまい。
 我ながら見事な人心掌握術だ。

「――じゃあ、僕頑張ります」
「ああ、そうしろ……って、なんだと!?」

 スザクはきらきらと効果音が聞こえそうな笑顔で、「殿下が気持ちよくなれれば本望ですから」と爽やかに言い放った。
 なんだ、俺はどこで間違ったんだ?
 やる気が失せるどころか、さっきよりノリノリじゃないかコイツ!
 いや、俺はまだ心の準備が……!
 不測の事態にどう切り返せばいいのか頭を悩ませていると、スザクが思い出したように「あ」と声をあげた。

「ちょっと失礼します」
「え……っおい、なに!」

 何をするかと思えば、スザクは俺の足の甲を掴むと自分の股間にさらに強く押しつけた。
 ごり、と性的な固さをそこに感じて、反射的に足を引こうとするも馬鹿力にはびくともしない。

「ば、馬鹿っ、やめろ!」
「ん……、殿下」

 あろうことか、スザクは俺の足の裏を使って自慰行為に耽りだした。
 しかも擦りつけるように腰を動かしてくるせいで、嫌でもそこの変化が感じられる。
 先に踏みつけたのは俺だが、まさかこんな変態じみたことをされるとは思いもしなかった。

「お、おい離せっ、そんな許可は与えていない!」
「は……、申し訳、ありません、殿下の足がちょうどいいところにあったもので、つい」
「うっ」

 息遣いも荒く、潤んだ瞳でしゅんと頭を垂れる。
 あるはずのない犬の耳がぺたりと伏せているのが見えた気がして、俺は狼狽えた。
 だからスザクが「今度は殿下の番ですね」と言って俺の足首を掴んだときに抵抗するのが一瞬遅れてしまったのだ。
 片脚はスザクの肩にかけられ、空いている方の手で反対の膝も掴まれ、脚をぱっくりと割り開かれる。
 スザクの眼前に晒されて緩く立ちあがったソコにあからさまな視線を感じて、俺は羞恥から逃れるように熱をもった顔を背けた。

「どんな風にされるのがお好みですか」
「しっ、しらな……ぅあ!」

 聞いてくるくせに答えを聞く気はないのか、早急な手つきで昂りを擦られて背中が跳ねる。
 だいたい、他人にこんなことをされた経験などないし、どうすればいいかと聞かれても返答に困るのに。
 スザクはいつも騎士服にあわせて白の手袋をしているのだが、その布越しの感触がなんとももどかしくて、俺は無意識のうちに腰を動かしていた。

「ぁ…ん、スザ、ク」
「はい?」

 もっと直接的な刺激が欲しいとは口に出せなくて、涙目になりながら目の前の男に訴えかける。
 しかしスザクはにこにこと微笑みながら、コテンと首を傾げるばかりで、それ以上のことをしようとしない。

(か、可愛いっ……じゃなくて!)

 焦れったくなった俺は、徐にスザクの手に触れると、手袋の端に指をかけてくいっと引っ張った。

「こ、れ……はずして、触って……っ」

 なくなりかけた理性では恥も外聞もない。
 自分の欲求を素直に告げれば、スザクののどがごくりと上下に動いた。













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