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#3 唯我独尊な男





跡部景吾との仕事はまだ一ヶ月も先のこと





なので今は普通にお仕事です。





「名前ちゃん、こっち視線向けて」
「はーい」

寝転がりカメラに視線を向ける。 笑ったり拗ねたり色っぽい表情したり

撮られるのは好き
それで喜んでくれる人がいれば尚更嬉しいと思う。
あ、AVとは違うからね!





ザワザワ…


撮影が中盤に差し掛かったところで入り口が騒がしくなった。
皆さん、撮影中は静かにしましょうね?おかげてカメラマンさんの声が聞こえないでしょうが。

チラッと視線を入り口へ向けるとそこには今までいなかった、いるはずの無い人物が立っていた…。


「え…!なん、で
「名前!仕事中」
「…はぁい」

怒らせると怖いマネージャーの言うことを聞き撮影に戻るが、先程までの動きは何処へやら、体も表情も固くなる。


だって視線が気になってしょうがない――。












ギュルルルル…





突如撮影現場に響き渡った空腹の音

その音源は撮影の中心にいた。
昼休憩にするか、というカメラマンさんの言葉にすみません…と頭を垂らす名前だった。





「すげぇ音だな…」

クックッと笑いを堪えている跡部は口に手を当てとても楽しそう。

「…笑わないで下さいよ跡部さん」
「お前グラビア辞めて芸人になったらどうだ?」
「それは酷いです…!」

ムッと跡部を睨み付けるが、気にもしてないのか今だ笑い続けている。
普段TVに写る『跡部景吾』は俺様でクールなイメージがある。楽しそうに笑っている今の表情など想像できるはずもない。
こんな一面もあったのかと名前はその様子を眺めていた。

「面白い奴だな」
「いい加減笑うの止めてくださいっ」
「顔が真っ赤になってるぜ、名前ちゃん?」
「ッ…!?」

顎に指が触れたと感じた時には既に上を向かされていて、至近距離で跡部の素晴らしい綺麗な素肌。





「あの…跡部さん?」
「アーン?」
「入り口邪魔になってるみたいなんですけど…」
「チッ」

舌打ちをしながら入り口から退いたのはいいのだが、手首を掴まれズンズンと向かって行く先には、


楽屋がある――。



「…まさか楽屋に入るつもりじゃないですよね?」
「俺様に外で待てと言うのか?」
「待ってなくて良いです」


キッパリと言い放つ。

しかし聞いていないのか、はたまた聞くつもりがないのか止まることはなく楽屋に向かって進んで行った。








「…って違あああうっ!!何でここにいるんですか!」
「フッ…今更かよ」

こいつ馬鹿か、と言いたそうな跡部の視線。
いや、だって普通不思議に思うでしょ?私間違ってない!

「仕事の様子を見に来た」
「…私の、ですか?」
「他に誰がいんだよ」

なんで?という質問は跡部によって遮られ、早く支度しろと楽屋に押し込まれた――。





バタン

閉まった扉に、安堵の溜め息。





「早くしろって言ってんだろ?」
「ひっ!?」

何故ここにいる、跡部景吾



「何で入ってくるんですか!」
「黙って着替えろ、このままヤるぞ」
「き、着替えまーすっ!」
「3分だ」

そう言いながらどっかりと椅子に座った跡部の姿を睨みつつ着替えを手にした名前はふと考える。



何で待たれてんの?私…





唯我独尊な男

(3分たったぞ)
(ぎゃー!!開けないでくださいよっ!)
(……)
(な、んですか…?)
(…ヤらせろ)
(何盛ってんですかああ!)









あきゅろす。
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