[携帯モード] [URL送信]
あー夏休み(A)
「ごめんね…跡部」

「名前…」

「私のせいで…、こんな…こんなっ…」

「お前のせいじゃねぇよ…」

「跡部…」

「名前……












引退したテニス部の3年生達は、後輩指導のため夏休みも部活に顔を出していた。
マネージャーである名前も後輩指導…をすることはなく”快適な部室”を目的に来ていた。

しかし、その日事件は起きた…。





電源の入らないクーラーに苛立ち殴るという行為に出た名前。

結果、
壊してしまったのだ…

しかも電源が入らない原因がコンセントが入っていなかった、と気付いたのは壊れた後だったのだ。








そんなことがあり、新しいエアコンを付けて貰うため跡部に報告をしなければならない。

「あの…跡部…」
「アン?」
「クーラーがね…、」
「…何だよ」
「忍足のせいで壊れちゃったの…」
「何!?」

ちなみに忍足さんはというと、名前が部室に入る前から鳳君と試合をしていました。

「ったくしょーがねぇ野郎だな」

しかし跡部さん全く気付いてません。



すぐに新しい物を持って来るよう電話で指示をしたのだが、流石跡部家御用達の電化製品店。特別製故に時間がかかるらしいです。


「あーつーいー!」

子供のようにソファーの上で転がりながら駄々をこねる名前を横目に跡部は溜め息を着くと宥めるように名前の頭を撫でていた。
嫌がらせではなく行為で、だ。

しかしそんな跡部の想い虚しく、顔を見上げニッコリと微笑む名前。

「跡部」
「なんだ?」
「暑い。触るな」
「……」


どうやら跡部さん、名前さんには形無しなようです――。









「持ってきたぜー扇風機!」

岳人が持ってきたもの。
それは金持ち学校には不似合いな一般家庭にある扇風機だった。
エアコンが届くまで、ということで急遽自宅の電気屋から持ってきたのだ。しかし安いエアコンでも持ってくれば良かったのでは、と気付くものは残念ながら誰一人としていなかったのだ…。

「やったあ!ガックンありがと、私の為に!」
「いや、部室が暑いから…」
「〜♪」

まったく話を聞かずに扇風機の前を陣取っている名前の為ではなく、男が集まる密集地帯でエアコン無しの状態に堪えられない、と考えた為である。
いくらイケメン色男の集団だろうと汗だくになった男達が一つの部屋に集まったら堪えられないだろう。








「何だそれは…?」

明らかに不審な物を見るような目付きで扇風機を見つめる跡部。

「扇風機だよ〜跡部知らないの?」
「ほぉ、これがあの扇風機か。初めて見たぜ…」

扇風機に興味を持ったのか、跡部は触ったりスイッチを押したりとまるで子供のような行動をとっている。
他の部員は笑いを必死で堪えているが、それに気付いた跡部の一喝で静まり返ったのだった。





「あ〜…気持ちいい…」

先程から風邪の当たる真正面に座り涼んでいる名前。
勿論、他のメンバーも涼みたいのだが名前の周囲は危険区域だった――。








「俺も涼ませてや〜」
「名前に触るんじゃねぇええ!」





跡部の踵落としが炸裂

このように名前の周囲に用もなく近寄ると跡部の嫉妬という名の恐ろしいが攻撃が向けられるため部員達は用心しているのだ。












――そして冒頭へ戻る。



「ごめんね…跡部…」
「名前…」
「私のせいで…こんな…こんな……」
「お前のせいじゃねぇよ…」
「跡部…」
「名前……



いい加減扇風機の前から退け!!」
「や〜だ〜!あ〜つ〜い〜〜〜!!」

震えている名前の声。
扇風機の前で話している為である。

「風が部屋中に行き渡らねぇだろうが!」

ずかずかと扇風機へ近付くと名前の襟首を掴みひょいと持ち上げるとそのまま自分のソファーへ投げ飛ばした。

「にゃっ!?」

しかし、着地地点はソファーではなく…



「投げたら可哀相やんか〜」





忍足だった。








「触るなって言ってんだろうがあああ!!!!」
「グハッ!!」

跡部の回し蹴りが炸裂


そして跡部は忍足の胸倉を掴む。

「そういえば、テメェがエアコンが壊したんだってなぁ…?」
「……何のことや??」

身に覚えのない話をされ忍足は首を傾げる。それを惚けているのだと思った跡部はかなりお怒りのようだ。

「テメェのせいで俺様が!名前が!暑ぃんだよ!!」
「知らんわ!みんな暑いっちゅーねん!」
「黙れエセ眼鏡」
「黙れるか!俺ずっと試合してたやん」
「デタラメ言うんじゃねぇ!テメェは……





……コートにいた…な」
「そやろ?」

先程の光景を思い出し、首を傾げた跡部に忍足は縋り付くように同意を求める。
そして何かに気付いた跡部は、名前の方を向くと…


「名前…まさかお前……」
「…プイッ」
「無視すんな」

擬音声付きで無視をし続ける名前。
しかし広いとは言っても隠れることはできない部室内で逃げる名前と追う跡部のせいで室内温度は上昇していくのだった…。





あー夏休み

(侑士!暑いからプール行こうぜ!)
(えぇな〜、美脚見放題やし)
(……宍戸行こうぜー)
(あ!私もプール行く!)
(名前の美脚拝めるなら尚更行くで!)
(このエロ眼鏡野郎がっ!!!)
(跡部も行く?)
(……家に来い。プールくらいある)


――――――――――
実は皆さんそのつもりだったり(笑)




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!