思わずキスしてしまいました。
「いい天気だな、」
雲ひとつないって言ったら嘘になるけど綺麗な青い空は応接室に縛り付けられた俺にとっては遠いものに感じた。(実際すごく遠いのだが)
グランドから聞こえてくる体育の授業の声が羨ましい。
窓の外を見ながら、ため息ひとつ。
「散歩、行こっか」
ゆっくり微笑んで言ったら俺の前に座っている黒髪の少年に切れ長い綺麗な目で睨まれた。
分かってるよ、この書類に目を通せって言いたいんだろ。
「こんなの誰にだって出来るさ。」
書類を一枚つまんでピラピラと目の前で振りながら言ってのける。振ったって減ってくれないし優秀な委員は聞き入れてくれない。さっきから一言も発しないが言いたいことは伝わってくる。(痛いほどに)
「じゃあさ、見回り」
こんなにも空が青いんだ。きっと屋上でさぼってる生徒がいるかも知れないだろ?
授業中居眠りしてる生徒がいるかも。
「それこそ誰にだって出来る。」
…うーん、なかなか強情だな。(もっともそんなとこが好きなんだけど)
早くしろよ、と目で訴えられるがあえて分からないふりをしよう。
「お前が嫌でも行くよ。」
もう決めたんだから。
そう言って一方的に彼の手を引いて応接室を出る。
「ちょっ、と」
「分かってるから大丈夫。」
俺は何が大丈夫で何を理解してるんだろう。きっとなにも分かっちゃいない。
とりあえず俺は今、彼の手を引いている。(この事実だけで十分じゃないか)
「わかった、から…手、」
観念したのか息を切らしながら手を離すよう促してくる。歩く速度早いかな?(ゆっくり歩いてやる気なんかないけど、)
「いいじゃない。せっかくのデートなんだし、」
「っ見、回り」
「うん、だからさ、見回りデート」
微笑んで雲雀のほうを向いたら可愛らしく柔らかい頬を真っ赤にしていたので、
思わずその頬に触れてキスしてしまいました。
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