オレンジペコ なんでなんでこんな展開になってるか不思議なんだけど全然ついていけないどうしよう 「あのっ!」 とりあえず状況を把握するためにオレに背を向けて机に向かっているつなぎ姿の男、スパナ?さん…に声をかける。 「なんで、」 「うるさい、いま大事なとこなんだ」 こっちも見ないで銃を突き付けるのは止めてください。 せめてオレの目を見て話してください。 「っ!撃たないのに物騒なもの向けないでくださいっ!」 「………」 なぜ撃たないと断言できるのか疑問らしい、不思議そうな目をオレに向けてきた。 あぁ、やっと目が合った。 「あなたはオレを撃てない」 「生の殺しはムリなんでしょ?」 「……」 スパナさんは無言で銃をしまってまた作業に戻ってしまった。 口にくわえてる飴玉の棒が上下に揺れている。 図星を突かれてとくに機嫌を悪くしたわけではないらしいのでオレはもう一度同じ質問した。 「あの、なんで?」 作業をする手がピタッと止まって今度は工具を置いてぐるりと全身をこっち向けた。 じっと見られると居心地が悪い。思わず身をよじった。 なんか、スキャナーにかけられてるみたいだな。 「さっき言った」 「え、」 「あんたがさっき言った、ウチは生の殺しはできない」 「でも、それは、」 オレを殺せない理由にはなるけど生かす理由にはならない。 敵のオレをこうして軟禁するのはなんで? 必殺技を手伝ってくれるのはなんで?敵に手を貸していいことがあるのか? なんで、なんで、あぁさっきから三歳児みたいに馬鹿みたいに同じ質問を繰り返すことしかできない。 「あなたは、どうして、」 「炎が、」 「……え」 「あんたの炎がすごくきれいなオレンジだったから」 ほんとにきれいだったから、 じっとオレを見ながら思い焦がれるような表情をしてスパナさんは言った。真っ直ぐな色をしている強い目だった。 (あ、これ、) 知ってる。 ふと頭に浮かんだのは、蒼色の髪に色違いな目を持つオレの霧の守護者。 優しくて綺麗な人。 オレが、好きな人。 (同じ目をしてる。) 瞬間的に気付いてしまった。 超直感、 こんなとき自分の能力を恨めばいいのか感謝したらいいのかわからなくなる。 きっとこの人も同じ、あのオッドアイの目をもつ霧の彼のように オレの炎に惚れた人 「あ、いま重ねたでしょ?」 「え?」 「いま、ウチを見ながら他の人見てたでしょ」 「、ごめんなさい」 「いいよ、代わりでも」 「ボンゴレ、あんたの炎、ウチはすきだよ」 あぁ、 なんて純粋な、すき、なんだろう すき、その一言には沢山の意味が込められていた。 溢れるほどの説明できない思いが込められていた。 でもオレの頭に浮かんだのは、赤と青がほほ笑む姿。 (会いたい、な) 「…ありがとうございます」 「うん、もうすぐ出来るから、これ食べて待ってて」 そう言って未開封の飴玉をオレに差し出してきた。 「これ、ウチがすきな味」 「あ、ありがとうございます」 お礼を言っときながら、オレはその飴玉を受け取らなかった。 スパナさんはオレの態度に気にした様子もなくオレに飴玉を押しつけて背を向けた。 そしてそのまま作業に戻ってしまった。 オレンジ色の飴玉が変に眩しく感じた。 オレンジペコ それは、とても優しい色だった。 |