[携帯モード] [URL送信]


もうちょっと、いいだろうか。

臨也が機嫌良さげにニコニコしているので、静雄はもう一度唇を重ねた。
何度かついばむようなキスをして、気持ちが良さそうな臨也の反応を見ながら舌を入れる。
大丈夫だろうと思いそのまま舌を絡めたのだが、お互いの舌が触れた瞬間、臨也はビクリと肩を震わせた。

「んんっ!」
「……あっ、悪い。嫌だったか?」

慌てて離すと臨也はパチリと瞬いて、それからようやく気付いたかのように「シズちゃん、えっちしたいの?」と言った。

「……したい」
「シズちゃんえっちしたいの?」
「嫌なのか?」

ストレートに聞いてみれば臨也は口を閉ざして、なんだか途方に暮れたようにじっと押し黙っている。
嫌なのか、と静雄はもう一度聞いた。やはり臨也は答えない。

このままだといつまでもそうしていそうなので、静雄は触れるだけのキスを優しくして、催促するように名前を呼ぶ。
すると臨也は困ったような顔になって、「でも」と口ごもった。

「嫌か?」
「いや、とかじゃ、なくて……」
「……臨也?」
「……うー、だって、シズちゃんのばかぁ……」
「俺は好きだ」

いつもなら絶対に言えないようなセリフが、不思議とスルリと口を出た。
自分でも驚きだが、臨也はもっと驚いたような顔をする。

「なに、なに」
「好きだ、臨也」

また口から滑り出た。
臨也はパクパクと口を開閉して、それからまた「ばか」を繰り返す。
でも拒絶も抵抗もしなかった。
それを自分の都合の良いように解釈して、静雄は再び臨也と唇を重ねる。

「ぁ、ふ……っ」

切なげに声を漏らして、縋るように腕を掴まれた。
ゆっくりと唇を開かせて、臨也の反応を見ながら慎重に舌を絡めていく。

口内はひどく熱かった。
酒のせいだろうか。
気持ちが良くて、頭が蕩けそうで、でも熱い。
火傷しそうだ、と馬鹿なことを考えながら、臨也が抵抗しないのをいいことに更に深く犯していく。

「あ、や……っ」

くるしい、と掠れる声で訴えられて、静雄はようやく臨也を解放する。

荒く肩で息をしながら、臨也は涙目で静雄をじっと睨んだ。
それは駄々を捏ねる子供のような拗ねた表情で、不覚にも笑ってしまいそうになる。

「嫌だったか?」
「……ばか、ばか、シズちゃんのばか」
「臨也。俺は、お前と、セックスがしたい」

ぎゅうっと左手を握る。
臨也は相変わらずむすっとした表情で静雄を睨んで、だけどやっぱり、嫌だとは言わない。

臨也、と名前を呼んだ。
臨也がそうされるのが弱いことを知っていてやるのだから、もしかしたら卑怯かもしれない。
だけど、ちょっとくらい卑怯なことをしても許されるくらいには、今まで静雄は色んなことを我慢してきたはずだ。

「臨也」
「……だって、シズちゃん」
「嫌じゃないんだろ?」
「……いやじゃない」

やっぱり拗ねたように臨也は言って、むすくれたまま唇を尖らせている。
かわいいなあ。
これは口に出なかった。でも、顔には出ているんじゃないかと思う。

「じゃあ、いいか?」

言いながら、臨也のベルトに手をかけた。
わざと音を立てて、外すような仕草をする。勿論フリだけだ。
だが、臨也は抵抗しない。

「……いいな?」

静雄の問いには答えず、臨也はまた「ばか」と言った。
それを都合よく受け取って、静雄は右手だけで今度こそ本当にベルトを外していく。

臨也はただされるがままで、ただ、握ったままの静雄の左手をぎゅっと握り返した。













--------------------
夢見がちな君に恋


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!