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waste cross



輝く銀色縁の眼鏡に、上にかきあげられた黒髪のオールバック。育ちの良い綺麗な立ち姿と、切れ長の紫眼。

皆瀬が奥さんと社長へ挨拶に来たのは結婚式が終わった翌日。

まずは順番を間違えましたと、皆瀬が詫びを入れる。
それに対してめでたいことだから気にすることはない、と父が一言。


オレは呼び出された理由も分からず、俯いて皆瀬の前に座っていた。



「昨日はすまなかったね。急用で顔を出せなくて、」

「いえ、社長。お気になさらず。コレを、」

「わぁ、引き出物か。コレは素晴らしいカップだね。」



父は御祝儀をたんまりやっているだろうから、皆瀬は気を使って来たに違いない。

オレには全く関係の無いやり取りが続き、嬉しそうに笑う皆瀬の声と隣の女の声がムカついてムカついて…仕方なかった。



「亜美さんは、どうだい?今度ウチに来て食事でも。」

「えっ、藤堂さんのお宅に私が…ですか?」

「あぁ、六実も居るが宜しければ一緒にお食事でもと思ってな。」



余計な事をペラペラ話す父はオレが結婚式の日に起こした失態を知らない。

それだけで亜美さんとは大分気まずいのに、父は平然と食事を誘う。
その答えに亜美さんは気を遣って申し訳ありませんと断っているが、父が推しているため否定出来ず。



「シェフにおいしい料理を作らせて待っていよう。」



と、食事会開催が決定した。

その話が決定した瞬間、オレはその場に居られなくて足早に社長室から去った。









結婚式の前日、オレは皆瀬と一緒に過ごしていた。

その日ばかりはセックスを強請る皆瀬に呆れながら身体を渡し、何度も激しく繋がった。



「なぁっ、もっとぉっ、もっと奥に挿れろよ…へたくそぉ、」

「す、すいません…」

「んっ!や、みな…せ、だめだっ、お前の…お前の良すぎるっ、」



デカいのぶち込まれて、圧迫されるオレの身体のある器官が、ごりゅごりゅ中に押し上げられてなんとも言えないこの快感。
一度体験したら病み付きになる皆瀬とのセックスはオレを簡単に虜にした。

だからその証も、この関係もずっと永遠に続くものだとお互い思っていたはずだった。



「六実様、」

「な、なんだよっ…」

「私の心は貴方のモノです。」

「あ?」



不意にキスされたオレ皆瀬の告白に胸をときめかせた。

普段から好きとか愛してるとか、たくさん言うと気持ちが減っちゃうとか。
お互い好きと当たり前に分かっているから、心は貴方のモノですなんてキザなセリフ言われたのも初めてだ。



「もし、私が離れても。貴方の心が変わりませんよう、貴方の心を私にください。」

「は?」

「私は貴方に心を捧げました。だから、貴方の想いを私に預けて欲しいのです。」



その時は気づかなかったけど、要は騙されたわけだ。コイツは自分勝手で最低な男だったんだ。

自分の心はオレにやるとか言って、知らない女と結婚した。彼は利潤、オレにとってはなんの利益にもならない。



「仕方ねぇな、」

「んっ、」

「お前に、全部やるっ。」



キスして皆瀬の様子を覗き込めば、笑顔でオレを見つめてくれるから。

その笑顔を絶やさないよう、一生一緒に居たかった。
一文無しで遠くに飛んで、二人きり。一から新天地でスタートしてもよかったんだ。



「これで貴方も救われます。そのために私達は巡り会ったのかもしれませんね。」



意味深な言葉を残して。
叶わない理想を抱いて。

オレ達の関係は終わった。





[*Ret][Nex#]

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