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久しぶりの三連休。
その最終日にオレは皆瀬と映画を見に行った。
勿論誘ったのはオレ。
強引に時間を空けておけと命令した。


待ち合わせ場所に行くとおかしなことにプライベートでも皆瀬はスーツを着用。髪型も変わらず、周囲に威圧感を与えるオールバック。



本来の目的からズレたオレは皆瀬の笑う姿を見たい一心でコメディームービーを選択。
暗い映画館で隣同士。
ちょっと反応にドキドキしながら皆瀬を見ると、相変わらずのお堅い表情で映画広告に見入っていた。


本編に入っても皆瀬はくすりとも笑わない。
ただ眼鏡の奥の瞳を光らせスクリーンをじっと見つめるだけ。逆にオレは笑いすぎて腹が痛くなった。


お昼にはレストランでお互い、学生時代の事を話した。

皆瀬も同じ一大卒らしく、学内でオレは女好きで軽い奴と専ら有名になっていたらしい。



「お前…俺の2つ上だろ?同じ学年でも無いのに詳しいんだな。」

「いえ、私は六実様と同じく68期卒業生です。入学前の2年間は資金を貯めるためにアルバイトをいくつかしておりまして…大学は無事卒業出来ましたが、そこまで成績は良くなかったです。」



やはりお金に困っていたのか…と、しみじみ。前の二千円を思い出しホッとした。


それにしても意外だ。

男のオレが言うのも変だが、地味系にもこんな厳ついイケメンが居たなんて。
大学時代もチャラい奴としか絡んでいなかったから、同じ大学に皆瀬のような絵に描いた真面目学生が居たのかとちょっと驚いた。



「でも、何でウェステリアに就職しようと思ったんだ?しかも、夏休み明けなんて中途半端な時期に…」

「はい。卒業時も就職先はウェステリアカンパニーを第一希望で志願していましたが、今年は社員募集が無く、諦めていました。ここ以外は考えていませんでしたから…ちょうど見た秘書募集を受けたら受かりまして。」

「ここ以外はって…す、すげぇな。」



祖父より前からあって将来、自分がトップに立つとずっと言われつづけていた大きな会社。
ウェステリアカンパニーは有名なレストラン事業を筆頭に最近は機会製造を初めて成功を収めた。

だけどこの会社のどこが魅力なのか、入社してからも全くわからないオレは皆瀬の熱意に圧倒された。



「今はこうして、六実様にお近づき出来て…仕事も楽しくとても上々です。」

「そ、そうか…?」

「えぇ。」



良いことを言われてにんまりなオレ。皆瀬に見つめられると、何故か身体が張り詰める。

いつの間にか皆瀬の仕草や表情、優しい言葉遣いに魅了されて辞めさせてやるとか幼稚な事は考えなくなった。









さらにオレは皆瀬春彦と言う男が気になって、お前の部屋に行かせろよと軽く言ったら剣幕にそれは無理ですと断られた。

やはり仕事の関係だけであって、それ以上は深入りしてほしくないようで。
いきなり親しく話し掛けたのがいけなかったのか、仕事があっても皆瀬と会うことは無くなった。


そんな毎日が続いて気持ちはぼんやり濁っていた。
そして、その日もオレは早めに家へ帰った。


玄関で靴を脱いで目線を床に落とすと、親父じゃない大きな革靴がぽつり。

ジャケットを受けとったメイドに聞くと、皆瀬が来ているとのこと。


父も居ないなのに皆瀬だけ家に居るのはおかしいと思ったけど。
最近、見かけていなかったから久しぶりに話し掛けてやろうとオレは急いで階段を駆け上がり皆瀬を探した。

もしかしたら急用で父の忘れ物を取りに来たのかもしれない。



「みーなせっ!」



父の部屋、返事は無し。

オレはそのほかの部屋中、屋敷をぐるぐる回って探したが皆瀬の姿は無かった。


広い屋敷だし、迷子になったか。トイレか、と考えながら読み掛けの本を取りに自室へ向かった時。


扉を開けて愕然とした。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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