[携帯モード] [URL送信]




分野問わず幅広い事業に成功、海外にまで進出した世界のウェステリアカンパニー。

その御曹司であり、名門第一大学を首席で卒業。ウェステリアカンパニー継承者
【藤堂 六実】(トウドウ ムツミ)

オレは周りからの重圧に耐える為、ストレス発散の対象として父親の秘書を虐めていた。

文句の言えない立場の秘書から少ない金を巻き上げたり、父に秘書のありもしない嘘を吹き込んだり。
それが効かないと分かれば、身体を武器に情けない性欲を試したりもした。


その所為で今まで、多くの秘書が耐えきれず辞表を出し辞めていった。

オレが社会人になって、当たり前の様にウェステリアカンパニーに入社。

レストラン事業の商品開発部に就いてから大体、20人以上の秘書が犠牲になっただろう。

最長一週間。
毎回、繰り返し変わる新しい秘書を虐めてオレは快感を得る。

だから今回はどんな奴が来るのだろうと呑気に考えていた。


父が大きな屋敷に帰って来るのと同時に猫かぶり。
純真な笑顔で新しい秘書を出迎えた。

それはもちろん、偽りの。これから始まる楽しいショーのための作り笑顔だ。



「六実、真面目に働いているのか?のちに会社を継ぐ人間なのだから少しはしっかりしたらどうだ。」

「へいへい、みんな優しくしてくれてるぜ?やっぱ息子のレッテルは強いよな。」



父は毎度帰りが早すぎるとオレを心配して注意する。

だがその通り。
仕事が面倒で行きは遅刻、帰りは早退をしていたのだ。

無論、上司は何も文句を言わない。いや、腹が立ったとしても注意できないのだ。

言うなれば社長の一人息子。何をチクられるか、考えただけでも恐ろしい。
こうして完璧に出来上がった周りの甘い環境。
オレは大変自由奔放な人間に育った。



「ぅああっと、親父!今日から秘書、変わったんだろ?」



わざとらしく、今思い出したかのように後ろに立つ長身の男に目を向けた。

ずっと黙ったまま、下を向いている男は前を撫で上げた黒髪に、体格はとてもよくボディーガードのような胸囲と肩幅。それに合わず目が悪いのか眼鏡をかけていた。



「ああ、紹介しよう。今月から正式に働いてもらう新しい秘書の【皆瀬 春彦】(ミナセ ハルヒコ)君だ。玄関ではあれだから…春彦君、中に入りたまえ。」

「はい、失礼します。」



中に入って来た男、上目づかいでちらりと見られたオレはその視線だけで身の毛がよだつ思いをした。

明らかに今までの秘書とは違う、意地悪そうな釣り上がった目つき。
深く整った目鼻立ち。


男なのに男を見て心音がドクドク早く波打ち、止まらない。

そして何故か、今までの悪行も全てを見られている気がして頬を赤く染めた。



「春彦君。コイツが息子の六実だ。どうしようもない不良息子でな。私が社長じゃなかったら絶対にこんな奴は雇わないな、ははは。」

「よろしくお願いします、六実様。」

「よ、よろしく…」



ぴくりと笑いもしないが、優しく大人しい喋り方。
無感情でロボットみたいな男だと思った。

つけ加えてこの堅物が取りみだす姿を是非見たいとわくわく胸が高鳴った。



「今日はもう遅いし…春彦君、泊まっていくといい。」

「社長、それは悪いです。」

「何を言っているんだ。おい、誰か!春彦君を風呂場へ案内してあげなさい。」



父に半ば強引に押し切られた皆瀬はメイドに連れられてのろのろと浴室へ向かった。

何故か、皆瀬を見ていると心にもやもやが残った。

だが、それは少し考えて直ぐ消えた。以降は深入りもしなかった。





[*Ret][Nex#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!