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藤堂六実の全てが欲しい。だけど、どうすれば彼を手に入れることが出来るのか方法が見つからなくて俺は彼のストーカーとして存在した。

学内で彼を見つければ必ずカメラを片手に姿を捕え何枚も何十回もシャッターを押していた。もちろん、帰りも同じバスに乗り込み遠くから姿を写真に残した。その切ない日々は何年も続き、卒業の時まで俺は藤堂六実を必死に追いかけていた。



「ハル、君は先月ウチの会社に面接に来たらしいじゃないか。何でおじさんに言ってくれなかったんだい?」



大学も卒業してしまい何もすることの無かった夏休み。ウエステリアカンパニーのレストラン事業部に就職希望を出した俺はありえない倍率の前に就職することが出来なかった。

ウエステリアカンパニーはレストランの海外事業を始めオシャレなカフェバーを経営している今大注目の企業であった。もちろん藤堂六実目当てで入社するつもりだった俺に突き付けられたそれは現実だった。

そうなれば噂が広がる。庄三おじさんから久しぶりの電話。もしかしたら、と思いつつウエステリアカンパニーについて熱弁した。



「そうか。今年は就職氷河期と言うこともあってな…受け入れてあげられなくてすまなかったね。」

「いえ、構いません。また来年チャレンジしますから大丈夫です。」

「…ハル、何故キミはそんなにウチにこだわっているんだい?」

「えっ?」

「おじさんも素直に嬉しいよ。小さい時を知っているキミがウエステリアに就職したいと思ってくれているなんて。もしよかったら私の秘書になってくれないかな?」



それはまさかの転機だった。庄三おじさんの一言が嬉しくて、俺は涙ぐみながらよろしくお願いしますと言っていた。同時に秘書と言う重要なポストに就くことで息子の六実に一歩でも近づける…―そんな気がした。









六実は大変我が儘な奴だったが、徐々に関わるうち自分に心を開いてくれた。そんな狂おしいほどの愛おしさを抱きしめ帰宅すれば毎日のよう、溜まった欲望を慰め彼を犯す。

またも寂しい日々が続いて心が苦しくなった。



「六実のタイプは私と同じで小柄な娘さんだろうな。パウロニアカンパニーの令嬢、亜美さんなんかストライクだろう。」

「そうですか、」

「孰れ提携を結ぶ会社だからな。それぐらいの娘さんと結婚してもらわないと困るんだよ。」



幼い時から憧れていた庄三おじさんの本性。金には抜目ない悪のような姿。金の為なら息子の相手は誰でもいいのか。

俺は徐々に不信感を抱くようになっていた。



「六実!今日はパウロニアカンパニーの桐谷さんとお食事だ。」

「六実!今日はヨルヒフードの常務さんとお食事だ。」



次期社長の彼も大忙し。
庄三おじさんに振り回される六実は本当に憐れで可哀相。それでも彼の将来のため、彼の幸せのために俺は精一杯尽くしていたはずだった。

しかし結婚後、揺れる心が何処かで六実への思いと後悔に飲まれていた。理由は明確に分かっている…―俺は自分の幸せを1mmだって考えたことが無いからだ。

それでも引き返せない運命に慟哭するしか出来ない俺は何度も瞳に愛しい姿を浮かべて想いを慰めていた。





[*Ret][Nex#]

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