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Minase side.

物心ついた時から自分には親が居なくて、祖父や祖母に『ココが貴方の暮らす新しいお家よ』と言われ、施設に預けられた。

そこの友達はみんな、親の話は一切しなかった。したくても出来ないボクらはその施設の1番偉い人をお父さん代わりに見つめることしか出来なかった。



「みんな!お昼の時間だぞ!」

 『はーいっ!』

「ハル、今日は君が号令係だ!前に来ていただきますコールしなさい!」



施設の管理者【八巻 五郎】(ヤマキ ゴロウ)さんに呼ばれた俺はみんなの前でいただきますと号令をかけた。

そんな施設での日常はゆっくり流れ、時間があるから勉強もたくさんできた。
仲間も良い奴ばかりで、イジメなんか全く無く、のほほんと生きていた。



「みんなっ!紹介する!この人はこのひまわり園に特別支援してくれている【藤堂 庄三】(トウドウ ショウゾウ)さんだ!みんなのおかしやご飯、勉強道具も藤堂さんがくれたものなんだぞ!」

 『えっー!すげぇー!』

「藤堂さん、では一言お願いします。」



食堂の扉を開けて出てきた人は優しそうな顔をしていて、俺の“理想のお父さん像”がピッタリ当てはまる人だった。

白髪混じりの髪に高そうなスーツに身を包んだ藤堂さんは施設の皆の前ではきはきと自己紹介を始めた。



「ひまわり園のみなさん、ご飯はおいしいですか?」

 『はぁーいっ!』

「そうですか。おじさんは皆の笑顔が見れて嬉しいです!残さずもりもり食べてくださいね!」

 『はぁーい!』



明るくて太陽みたいな藤堂さんは庄三おじさんとして施設の皆に慕われた。

週に何回かは必ず顔を出して皆と遊んで、夜ご飯も一緒に食べていた。寝るまで本を読んで寝かしつけてくれる優しいおじさんが俺も大好きだった。



「ハルの夢は何かな?」

「俺の…夢?」

「ハルは大きくなったら何になりたい?警察官とか、スポーツ選手とか…」



俺が13歳になった日。

その時、俺は野球選手になるのが夢だった。

頑張っているハルにプレゼントだと言って、有名選手のサインが入ったバッドをくれたり、庄三おじさんはすごく優しくしてくれた。



「ウチにも小学5年生になる子が居るのだが、どうしようない奴でな…本当にハルみたいに夢に向かって一生懸命頑張っている子をおじさんは応援したくなるんだよ。」

「へぇー、小5か。名前はなんて言うの?」

「あぁ、“ムツミ”と言うんだがな。変な友達とボーリングに行ったり、ゲームセンターに行ったりしてロクに帰ってこない。本当だらしない奴なんだよ。」



とほほと呆れながら話すおじさんの娘さんを一度見てみたいと俺ははっきり思った。

こんな良いお父さんが居て、すごくお金持ちの家庭に居るのに何が不満なのか。ちょっとした嫉妬心を抱いたのを今でも覚えている。









2年間、コンビニや喫茶店でアルバイトをした俺は必死に勉強して国一有名な大学に進学した。

有名な割には適当な奴が多くて、サークルや飲み会などまどろっこしいものは全部断っていた。

施設の友達は親しくとも軽い奴なんて居なかった。みんな、ちゃんと周りのことを考えて生活していたし、親が居なくて育ちが悪くても思いやりがあって良い奴ばかりだった。


場所も弁えず、講堂にデカい声をあげて情事を語る下劣な奴もたくさん居て、こんな低レベルなここは合わないと思った。

努力した結果がこの様(ザマ)だ。一大には金持ち政治家の御曹司とかどっかの社長の一人息子、一人娘しか居なかった。だから話しも見た目も釣り合うはずなく入学当初のドキドキはとっくに消えていて、憂鬱な日々を過ごしていた。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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