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pulse cross



蕩けた顔に深くキスをされて中村に初めて愛してると告白された。ずっと友達として彼を見てきたオレは想いに答えることは出来ない。

それなのにわざと痙攣しっぱなしの疲れた身体を引き寄せ、荒く深いキスを繰り返された。
勿論、皆瀬が居る前で。



「はぁ、くちゅっ…んっ、」

「だ、だめっ…だ、なかむっんんぅ、」

「藤堂、愛してるよ…」



まだ収まらない緊張を解すように抱きしめられ、オレはふーっと息を吐いた。

背中に熱く感じるのはアイツの視線。今、アイツがどんな顔してるのかなんて考えたくもなかった。

それより何より、この期に及んで皆瀬に嫌われたくないなんて思っていた。



「…なぁ?かわいいだろ、オレの藤堂六実はよ。」

「・・・。」

「知ってたぜ。お前、4年間ずっと藤堂のこと好きで付きまわしてたろ?ストーカーして、必死に勉強してコイツの会社入って、やっと手に入れた相手とのセックスは楽しかったか?」



温和なはずの中村が酷く罵声を浴びせ、皆瀬のことをボロクソに文句を言う。中村が皆瀬をストーカーとして知っていて。

本人より本人の周りに居る奴の方が分かるなんて、な。



「この上とも無い幸せでしたよ。」

「へぇ、でも藤堂から聞いたよ。お前結婚したんだって?」



どっちにしろ悲しくなるのはオレだけなのに。

皆瀬はあの光景を見たのにも関わらず冷淡な表情で中村の質問に一つひとつ真面目に答えていた。

終わったはずの関係を思い出させるような話が胸を深く抉る。



「私が触れますと美しく身体を撓います、六実様は。」

「ふーん、でもそれって今言う言葉かな?」

「と…申しますと?」

「だから、結婚したくせにさっきから六実様、六実様って。お前、バカだろ。」



キツイ中村の一言に皆瀬は逆上するかと思ってオレはやめてくれと大きな声で叫んだ。

そのため静まり返った部屋はよりオレの心を痛め付けるだけ。


なのにそんな中、皆瀬は変わらず冷たい顔で裸のオレに歩みより、ぐちゃぐちゃの顔に、



「心は貴方にありますよ。」


と優しく一回、額にキスをして何も知らないような顔でその場から消えていった。









皆瀬のキスは俺の心ごとキツく縛り付けて離さなかった。

あの後、オレは中村に断ってすぐ家に帰った。
感覚を懐かしむ暇も無く家に帰って初めて声をあげて泣いた。

オレの顔を見るなり言うアイツの言葉は決まっていた。結婚しているのに本当、バカみてぇ。

いや、バカだアイツは。



(失礼します、)

「んっ?」

「…六実様、」



何の完備無しに無断で部屋に入って来たのはさっき別れたばかりの皆瀬だった。
泣きっ面を急いでこすりオレは黙って布団に潜った。泣いていたなんてバレたら超恥ずかしい。



「六実様、先程は突然申し訳ございませんでした。」

「…本当だよ。」

「はい、?」

「中村と良い感じになってたのに、お前の所為ですぐ萎えたもんな。」



強がりで言った言葉も全部自分の胸に跳ね返って来るようで痛く辛く、棘となって胸に刺さるだけであった。

確かに中村とは良い感じになっていた。だけどオレがしたいと、抱きしめられたいと望んでいるのは皆瀬だけ。

それ以外は全部カスも同然だ。



「いい加減、分かれよな。しかもこんな時間にこんなとこ来てんじゃねぇよ。会わないって約束したろ?さっさと帰って奥さんの手料理食ってろ。」

「六実様、」

「んだよ…」

「私より、私よりずっと幸せになってくださいね。」



ふと言われた冷たく震えた声にゆっくり布団をずらして、瞳に映った皆瀬の顔は今まで見たことのない、世界の終わりを見たようなうらぶれた顔で。

涙は流して無くても血涙を飲んだように孤独な瞳でオレを見ていた。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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