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新月の頃



朝一番、目覚めて伸びをして緑のカーテンを開けた伯父さんはボクの顔を確認してお風呂場へ向かいます。つられてボクも目覚めますが、伯父さんがシャワーを浴びている間はソファーに座って一点だけ見つめてボーッとしています。

お風呂上がりでほかほか、湯気立つ伯父さんが下着姿で体を拭きながら寝ぼけたボクにおはようのキスをしました。



「今日は翼も出勤だよ。」

「うぅーんっ…」

「朝比奈常務のアシスタント、期待してるから頑張ってよ?里仲クン!」



実は今日から、伯父さんの紹介(斡旋とか言わないでね)でボクはヨルヒフードと言うビールや清涼飲料水を作っている大手企業に常務取締役の秘書として働くことが決まりました。何もやったことがないボクでも出来るお仕事と伯父さんが言うので、やってみようと思ったのがキッカケです。

伯父さんは仕事が出来なくても仕事場に翼が居てくれるだけで幸せとキザなことを言ってくれます。



「スーツ似合わないね、」

「えぇっ?!」

「翼ちっちゃいから…子供が頑張って大人っぽくしてるみたいでカワイイよ。」

「カワイイって…、伯父さん。ボクのこと子供扱いしてるでしょ?」



上手くネクタイを結べないボクのネクタイを慣れた手つきで結んでくれた伯父さんは新調したのにダボダボのスーツを見てくすりと聞こえないくらい小さな声で笑いました。

確かにスーツに慣れていないのでおかしいかもしれませんが、今までも今もずっと伯父さんはボクのことを子供扱いするのです。



「さて、今日は朝からYHD開発部との会談があるよ。」

「わ、わいえっち、でぃ…?」

「まぁ、行けば分かるよ。翼は俺の隣で笑ってさえくれたらいいから。」

「う、うんっ…」



今日は早速何かの財団法人?組織?の会談があって忙しい伯父さん。

アシスタントがボクなんかで上手くやっていけるのか。未だに仕事内容を理解していないボクはアシスタントのくせに助手席に乗って伯父さんが運転する車で会社に向かいました。









伯父さんをセンターに横ずらりと並んだヨルヒフード各部署の人々、そんな中入社したてのボクはセンターに座る伯父さんの隣であたふた。何も出来ないため下を俯き誰とも目を合わせないようにします。

しかし、初めて見る顔だと隣に座った明るい関西弁の社員さんから突然、馴れ馴れしく話し掛けられてしまいました。



「こんにちわ、はじめまして!キミが新しい常務さんの秘書やね、」

「は、はいっ…」

「朝比奈さん、男性秘書なんて初めてやないの?朝比奈さんはびっくりするほど優しいから、よかったなぁ!新人クン!」

「…百瀬課長、後5分で始まりますよ。それに朝比奈常務に失礼です。」

「チッ!うっさいわー、ムキムキ浅井!俺やて親交を深めるために…」



しつこい関西弁社員の隣に居たイケメンさんのお陰でなんとか会話から逃れられたボクは隣でクスクス笑う伯父さんの腿をペシッと叩きました。

ただ面白おかしく見ていただけじゃなく間に入って助けてくれたってよかったのにとボクは怒ります。



「おじさんはホントに、

「里仲クン?おじさんとは上司に失礼だね。私のことは“朝比奈常務”と呼びなさい。」

「なっ!」

「はい、では今からヨルヒフードハイパードライ…新プロジェクトについて皆さんにお話したいと思います。」



おふざけの顔から突然、仕事の顔になった伯父さんはプロジェクターや資料を使ってヨルヒフードのヒット商品『ハイパードライ』の新プロジェクトについて話しはじめます。

うんうんと頷き真面目に聞く社員に紛れてボクも知ったような顔で真剣に議会を進める伯父さんを見つめていました。





[*Ret][Nex#]

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