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たまちゃんがグウグウと喉を震わせ鳴いたので、怪しい気配を感じたさんほうちゃん達は近くにあった岩に隠れ歩み寄る人々を眺めました。

先頭を歩く白髪が混じった短い髪に豪華な耳飾り、朱と白を基調とした派手な僧衣を纏うその人は冷静な表情でみんなが隠れた岩を見ますが、気付かないフリでその場を去るようです。



『勒帋様…』

『あれが噂の?』

『…えぇ、確かに勒帋様です。あの僧衣は父のもので、生前好んで着ておりました。』



眉間にシワを寄せ、太い眉を吊り上げ歩く勒帋は壮年の風貌漂う素敵な男性でした。派手な僧衣もきっちり着こなしていて、お金も持っていそうです。

悪行をまだ知らないさんほうちゃんは洪草が勒帋様に何を伝えたのか気になる様子でした。



「とん平、洪草の手紙には何と書いてあったのですか?」

「えっと、確かもん吉の名前も手紙に書いてあったな、」

「…えっ?」



そのとん平くんの一言で自分の悪行を理解したさんほうちゃんは目を逸らし俯くもん吉くんを見つめました。

自分が洪草に言ってしまったこと。何も言えないもん吉くんは黙ったままです。



「もん吉とさんほうちゃんが一体何したっての?本当、頭の固い人の考えって分からないよね…」

「そうですね、もん吉はまだしも…さんほうちゃんは何も悪くないですから、」

「が太郎さん、とん平…」



仲間なのに本当のことを打ち明けられないさんほうちゃんは優しく罪を否定してくれた二人にとても悪い気がしました。

そしてさんほうちゃんはもん吉くんに対して煽情的になる身体を否と思っていたのでした。









咲都の隣にある兜率天(トソツテン)はさんほうちゃんのパパが言っていた夜灯の国の理想郷です。さんほうちゃんのパパが亡くなった今、兜率天の仏教信仰を勧めている勒帋は多くの僧侶と共に僧院に暮らしています。

洪草が送った手紙を読んで事を把握した勒帋はさんほうちゃんが自分の所に来たら僧院に隔離し、妖魔との旅をやめさせようと考えていていました。



「妖魔と旅を進め、挙げ句の果てに性交を犯すなんて問答無用だ。」

「はい、勒帋様の仰る通りでございます。」

「最終的な法繚の措置はお前が取れ、洪草。後は煮るなり焼くなり好きにするがいい。それが褒美だ、」



悪巧みをしてほくそ笑む洪草はさんほうちゃんを自分のものになるなら何にも尽くす性格でした。

さんほうちゃんを奪うことが彼の最終目標なのです。



「三蔵一族には苦労させられたもんだ。まぁ、今となってはどうでもよい話なのだがな…」

「えっ?」

「いや、お前には関係の無い話だ…早く法繚をここへ誘導しろ、洪草。」



嫌そうな顔で講堂から洪草を追い出した勒帋は前を向き、仏様に何度も祈り始めました。

過去に何かあったのか。
勒帋の思惑と洪草の欲望が交叉してさんほうちゃんの運命を大きく変えてゆくのです。





[*Ret][Nex#]

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