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deport sutra



ふてくされたさんほうちゃんに優しく話し掛けていたのは何も言われていないが太郎くんでした。が太郎くんはいつも周りを見ながら判断していて一行の中では1番しっかりしています。

何も言えないもん吉くんと今後を案じているとん平くんはお互い口を噤んだまま、ただ或る道を歩んでいました。



「さんほうちゃん…洪草さんとはいくつの時から知り合いなんだい?」

「えっと…私が6歳で父と勒帋様の僧院に入った時からです。当時から勒帋様の1番弟子だった洪草は私に良くしてくれていました。」

「そうなんだ。じゃあ長い付き合いだね。」

「えぇ、だから洪草はあんな酷い人じゃないはずなんです…私を守ると言ってくれて、」



しんみり語るさんほうちゃんは洪草に襲われそうになった場面を思い出し、落胆してしまいました。その所為もあり帰りは素っ気なく…さんほうちゃんは洪草と仲直りしたかったのです。



「“守る”なんて言葉…あの人には合わない言葉だよ、」

「とん平…?」

「…何回も言うけど洪草さんはこれから偉い人にさんほうちゃんの罪を伝えに行くんだって。さんほうちゃんが洪草さんを信じたい気持ちは分かるけど、これは俺がちゃんと目で見た事実だから…、さんほうちゃん、俺を信じてくれ。」



強く自分が見た事実をもう一度伝えたとん平くんは優しいさんほうちゃんに全てを知って欲しかったのです。それに嘘ではないと賛同したが太郎くんもさんほうちゃんにニッコリ微笑みかけていました。

仲間が嘘をつくはずないとさんほうちゃんも分かってきたようようです。



「とん平の言うことを私は信じますが、まだ少しだけ洪草を信じたい気持ちがあるのは確かです。」

「さんほうちゃん、」

「でも貴方たちは私にとって1番大切な仲間です。ですから何かあった時は全て曝け出して下さい。問題はみんなで共有しましょう!」



少し大人になって辺りを見渡したさんほうちゃんは今ここに居る彼等が1番であると再認識しました。

しかし、浮かない顔をしているもん吉くんはまださんほうちゃんが知らない真実を言えずに居ました。









勒帋様に破門の願いを出した洪草はあの場面を見た後の出来事を思い出していました。

鋭く輝く妖魔の瞳が思ったより美しく真っすぐでさんほうちゃんを奪われた洪草はさらにいけ好かない様子だったのです。



『もしかして三蔵に“恋愛感情”があるんじゃないか?』

『はぁ?』

『そうか、じゃあお前にとっての三蔵はただの性欲処理か。勃起した陰茎を収めるためだけ、間違った感情でいるのなら旅なんか止めろ、』



胸倉を掴んでも動揺しない猿の妖魔の瞳は威圧感を与える色で洪草を見つめていました。“レンアイカンジョウ”を知らないはずの妖魔はたださんほうちゃんを守りたいだけ…―それだけの強い意志がある気がしました。



「アンタがお師匠様のこと…偉い人に言いたいなら言えばいい。それでもオレの意志は変わんねぇから、」

「ッ、」

「レンアイカンジョウだか何だかよく分からねぇけど…オレ、命を懸けて誰かを守りたいって思ったのは初めてなんだ。」



何も分かっていない妖魔のそれは確実に人間が持つ恋愛感情でした。

命を懸けて守りたい気持ち以上に身体を重ね愛を説く妖魔の姿をはっきり捉えた洪草はどうすればさんほうちゃんを自分のモノに出来るのか考えても答えは見つかりそうにありませんでした。





[*Ret][Nex#]

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