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誰も居ない居間でさんほうちゃんは徐に腰を上げ洪草の講堂に行きました。しかし、洪草は不在で待ちぼうけ。いつか帰ってくるだろうと新しく着直した浅葱色の僧衣を纏い正座します。

もん吉くんと洪草との間に起こった出来事を知らないさんほうちゃんは目の前に居る仏様に手を合わせ、これからの旅路の安全を祈祷しました。



「釈迦様、この先…無事に全員で辿り着けますよう、見守っていて下さいませ。」

『さんほうや、』

「しゃ、釈迦様!?」

『大切なお告げじゃ、よく聞きなされ。そなたはこの先人生で大きな壁にぶつかるであろう。が、残念なことにそれを回避する術(スベ)はもう残されていないのだ。』

「そ…それは一体どういう意味ですか?」



深刻そうな表情でさんほうちゃんの行く末を心配した釈迦様は手を合わせながら輝く未来を願います。釈迦様の力でもどうにもならないこと…―それは洪草が知ってしまった悪行のことです。

心当たりの無いさんほうちゃんは首を傾げながら釈迦様を見つめますが、良い反応は返ってきません。



『一生懸命…自分の信じた道を歩むのだぞ。儂からはそれしか言えぬ。』

「は、はいっ…」

『そなたが選んだ仲間を信じて進むのだぞ、さんほう。』

「はい、釈迦様。ありがとうございます!」



にっこり笑顔の釈迦様に見守られたさんほうちゃんはきっと仲間を裏切らず、信頼していれば乗り越えられることだろうと安易に考えていました。

そんな彼を差し置いて洪草は破門の話を進めています。洪草は真実を1番に考える優秀な僧侶でもあり、さんほうちゃんが自分のモノになるよう願っている…―悪い意味でとてもひたむきな性格です。

回りはじめた歯車を止められないさんほうちゃんともん吉くん。二人のお互いを思う切ない気持ちは果たして叶うのでしょうか?









1日泊まったさんほうちゃは泊めてくれた洪草にお礼を言いたかったのですが、街の人々の救済に忙しいのでまたいつか会おうと素っ気なくあしらわれてしまいました。一緒に僧院を発展させるお話も断ったためなんだか気まずくなってしまいさんほうちゃんもブルーな気持ちになります。

手紙を見てしまったとん平くんは“洪草は悪いヤツかもしれない”とさんほうちゃんに伝えたのですが、さんほうちゃんはそんなことは無いと言ってとん平くんのことを信じませんでした。先程、釈迦様に言われた託けを早速守れないさんほうちゃんは悠々自適に荷物をまとめます。



「さんほうちゃん!もう一度あの人に会った方がいいよ?会って手紙のこと…確かめた方がいいんじゃないかな?」

「もぉっ!!とん平は洪草を悪い人と決めつけすぎですっ!何度も言いますが洪草は私を守ってくれた命の恩人ですよ?悪行や破門なんてするわけありま

「いや、悪い…お師匠様。オレの所為だ。オレがあんなことしたばかりに。」

「えっ?もん吉、それは一体どういうことですか?」



荷物をまとめていたさんほうちゃんの隣で暗い表情をしていたもん吉くんは洪草に見られたあの出来事を思い出していました。でも、が太郎くんやとん平くんが居るため打ち明けられない悪行の内容に口を噤んでしまいます。



「もん吉!言って下さい!」

「や、言えねぇよ…」

「もぉっ!みんなしてなんですか?貴方達の考えが私にはよくわかりませんっ!」

「さ、さんほうちゃん…」



誰にも話せない関係。
知られてはいけない想い。
妖魔と人間との違い。

仲良く旅をしていた一行の信頼関係が徐々に崩れ、これから先の旅路で試されることになるのでした。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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