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さんほうちゃん、たまちゃん、洪草と再び合流した3人は街の中央にある洪草の家へ入りました。洪草は山都とココ、咲都(サクト)に一つずつ自分の僧院を持っているらしく、いずれも多くの信仰者が来ることでとても有名な僧院です。もちろん僧院なので泊めるのもご飯も全て無料。人々のためとボランティア精神が強い洪草は利益など考えていません。

ですから、顔もよく性格も良いと評判でもん吉くんもかなりいけ好かないようです。



「しばらくこの部屋で休んでいるといいよ。旅での焦りは禁物だからな、」

「ありがとうございます!」

「じゃあ三蔵…また夜にな、」

「はい、おやすみなさい!」



2階の畳部屋に案内された一行は身体を広げくつろぎ始めました。ゴロゴロと転がるさんほうちゃんの隣にぺったりくっついたもん吉くん。寂しそうな声で一言、自分が思っていることを言いました。



「お師匠様。夜、ヤツのところには行かないで下さい。」

「んな、何も貴方じゃないのですから。変なことはありませんよ…洪草とは長い付き合、

「やだっ、絶対にやだっ…やだやだっ…!」



が太郎くんととん平くんがお風呂に入っている隙に横たわるさんほうちゃんをぎゅうっと抱きしめたもん吉くんは涙が出ません。

妖魔も動物と同じよう、感情も無いのが一般的なのですが、さんほうちゃんに出会ってから彼は人のようにさんほうちゃんを“愛せたら”と言う想いが強くなっているのです。



「オレが妖魔だからですか?」

「へっ、?」

「オレがアイツみたいに格好よく、頭も良い…美しい人間だったら良かったですか?」



心中も坦々と語るもん吉くんに抱きしめられているさんほうちゃんは自分の胸が痛む感覚を理解しました。

彼に何も言えない自分の弱さを、妖魔として生まれてきた彼の運命を…―口籠もり、もん吉くんを振り切ってゆっくり立ち上がったさんほうちゃんは口惜しい顔を見せないよう部屋を後にしました。









夜半、洪草のところに向かったさんほうちゃんはお風呂上がりで藍色の浴衣を身に纏っていました。高梨村は冬でとても寒かったのですが、咲都は砂漠の側でもあり夏のような暖かさがあります。

書斎で守り札を丹精込めて作る洪草の顔つきは真剣そのものでした。



「ああ!三蔵、来たな。」

「えぇ、洪草…お話とは一体なんでしょうか?」

「そんな畏まるな。ほら、お前の大好きなワラビの塩漬だ。この季節に新芽は珍しいんだからな!」



と言ってさんほうちゃんが渡されたのは春から初夏にかけてしか食べられない山菜“わらび”でした。昔の時代でも今の時代でも食する人は珍しく、主に新芽の部分を天ぷらにして食べられます。

旅中ではけして食べられなかった大好物を目の前にテンションが上がるさんほうちゃん。匂いを嗅ぎながらもぐもぐ食べはじめました。



「うまいか?」

「はいっ、とってもおいひぃですぅ!ありがとぉ、洪草!」

「ははは!本当にお前は可愛いな。いつでもその笑顔を見ていたくなるよ、」

「んぅうっー、わらびっ!わらびっ!!」



頭をよしよししながらさんほうちゃんの無垢な笑顔に魅了される洪草。実は彼、多くの女子に好かれても他に好きな人が居るからと悉く交際を断っていました。

その相手は同じ男でしかも後輩僧侶と誰にも言えず、想いを大切に育ててきました。



「それで…だな、三蔵。朝言ったこと。真剣に考えてくれないか。俺、本気で三蔵と一緒に僧院を有名にしたいと思っているんだ。」

「ん、」

「それに…お前とずっと一緒に居たいんだ。俺、不安だよ…妖魔に襲われたお前が妖魔と旅をしているなんてっ、」



想いを打ち明けたと同時に引き寄せられ暖かい人の温もりに触れたさんほうちゃんは洪草の胸の中抱かれていました。

さんほうちゃんが気になった襖に影。握り拳を震わせながら会話を聞いていたそれは風のようその場から逃げて行きました。





[*Ret][Nex#]

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