origin sutra
空に龍が飛んでいた頃。
文明は栄え、いろんな生物が生き延びるため苦難を乗り越え過ごしていた時代のお話です。
ある僧侶がありがたいお経をもらうため天竺(現インド辺り)へ供の白馬と旅をしていました。その僧侶の名前は三蔵法師、みんなからは“さんほうちゃん”と呼ばれ慕われています。小柄な体形の彼は男の子なのに女の子とよく間違われ、同じ男性の僧侶にモテモテ。優しい喋り方とふわふわした容姿が特徴的なプリティ法師さんです。
そんな彼は自分の能力と限界を試すため天竺へ向かいましたが、旅先では苦難ばかり。共に戦ってくれる強い仲間が欲しいと感じていました。
『さんほうや、』
「はいっ、お釈迦様!」
『大切なお告げじゃ、よく聞きなされ。そなたはこの先、大きな妖魔に襲われるであろう。それを回避するため五行山の奥にある岩石の前で己の邪気を解くのだ。』
途中、薄暗い道を歩いていたさんほうちゃんに語りかけたのは誰もが崇拝する釈迦様です。釈迦様は仏教の創始者で有名な世界四聖の一人です。さんほうちゃんの大先輩でさんほうちゃんももちろん崇拝しています。
突然平和に旅を進めていたさんほうちゃんに悪い知らせ。この先大きな妖魔に出会うと釈迦様に預言されてしまいました。釈迦様のお告げは絶対なので、さんほうちゃんは言われた通り五行山へ歩いていきました。
『五行山で何があっても必ず耐えるのだ、さんほう。未来はきっと輝いているぞ。』
「分かりました。お告げをくださりありがとうございました、釈迦様!」
『うむ、よろしい。おぬしの旅が成功するよう儂は天から応援しておるぞ。』
釈迦様からありがたいお告げを聞き、消えていく釈迦様に手を合わせたさんほうちゃん。
白いお馬の玉龍、(さんほうちゃんは“たまちゃん”と呼んでいる)唯一の旅供と一緒に歩き進み、辛く険しい五行山の合を越えます。体力が果てたさんほうちゃんを乗せながらたまちゃんも山を登ります。
「たまちゃん、もう疲れたでしょう?あの洞窟で一休みしましょうか。」
「コクコク、」
「空も暗くなってきましたし、これ以上は進めませんね。」
へとへとの二人が行き着いた先は大きな入口の洞穴でした。そこが実は大きな妖魔が眠っている怖い洞窟と知らずにさんほうちゃんと白馬のたまちゃんは休む場所に決めてしまいます。
真っ暗闇に入り、何歩か進んだところで休憩。落ち着いたさんほうちゃんは下に敷いた岩の冷たさに抱かれうとうとします。
『ゴッー、ゴォッー、ゴー』
「ん?」
『ゴー、ゴォッー、ゴッー』
すると突如、自分達が居るより奥に風の流れるような音がしました。最初はたまちゃんのいびきかと思ったさんほうちゃんですが、何かあると気になって起きてしまいます。
立ち上がったさんほうちゃんに気付いたたまちゃんも目覚め、音を聞き分けます。
「たまちゃん、貴方はここに居てください!きっとこれは哀しい痛みを抱いた動物の泣き声でしょう。私が経を唱え助けに行きます!」
ダッと駆け出したさんほうちゃんはたまちゃんを置いて洞窟の奥に消えていきました。それを危ないと感じたたまちゃんですが、駆けて行くうちに暗闇に包まれさんほうちゃんを見失ってしまいます。
一方、さんほうちゃんは視界も碌に照らされていない道を真っすぐ進み、青白く光る岩を見つけました。
「この岩が…もしかしたら釈迦様がおっしゃっていた邪気を振り払うお岩でしょうか。」
『ゴッー、ゴー、ゴォッー』
「分かりました、今から私が経を唱え助けますからね!」
悲痛な叫び声にも聞こえたさんほうちゃんは釈迦様に言われた通り、手を合わせ邪気を振り払うお経を唱えはじめました。
しかし、この岩は釈迦様の言った岩ではありません。その前に言った大きくて恐ろしい妖魔が眠る岩なのです。
『ガタガタッ…、』
「おっ、岩がだんだん崩れていきますね。これで一安心で、・・・い、あっ…やああっ!」
そうとも知らずに出てきた妖魔は両腕に茶色の毛皮を纏い朱く錆びた鎧、背丈も高く、それは理性を失っているのか目の前に居た獲物(さんほうちゃん)に飛び掛かりました。
加減の知らない獣に襲われたさんほうちゃんは動転して何も言えず、ただふと合わさった瞳が思ったより美しいと客観的に考えていました。
[*Ret][Nex#]
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