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50年に1度の周期でやって来て妖魔を崇めるこの村の名前は高梨(コウリ)村、自然が多く食料も豊富に採れる人間にとって住みやすい環境にある村です。

ある妖魔が自然も食物も齎してくれたと言うことで昔から綺麗な娘を生贄に捧げる儀式が行われています。しかし、今年は例外のようで前回から20年しか経っていないみたいなのです。



「妖魔が村を作ったなんて作り話よ。私は知っているわ、妖魔は人間をも殺す極悪非道な奴なの。法師様もそう思うでしょ?妖魔なんかこの世界に必要の無い恐ろしい生き物だわ!」

「おぉ、酷い扱いだな…こりゃあ。」

「・・・。」

「チェ、チェンさんっ、」



話を聞く限り生贄として捧げられるのが嫌なチェンさん。妖魔との儀式を断固として拒否しています。確かに誰しも想い人が居る居ないにも関わらず身体を見ず知らずの妖魔に捧げたいとは想いません。

高梨村では先住していた人と若者の意見が真っ向から食い違っている。そんな様子が見受けられました。



「法師様!が太郎様、とん平様…どうか、どうか私を救って下さいっ!」

「チェンさん…」

「お願いします!なんでもします!なんでもしますから…この儀式だけは、この儀式だけは本当に!お願いしますっ!!」



全力で縋る彼女の意志に強く心を打たれた三人はチェンさんの未来のため、今回のおかしな儀式をぶち壊してしまおうと計画を立てました。二人の妖魔も何一つ文句を言わず、差別も気にせずさんほうちゃんの言う通り急いで会場に向かいました。









妖魔を一丸に嫌な奴と決め付けるチェンさんがさんほうちゃんは苦手でした。自分にも過去、妖魔に対しては嫌な思い出がありますが、もん吉くんもが太郎くんもとん平くんも皆素直で優しい妖魔です。

さんほうちゃんを誠心誠意守ってくれますし、何より道を開いてくれたさんほうちゃんを三人とも尊敬しています。ですから妖魔嫌いな若者に伝えるべきことがあると強く思っていました。



「あ、あれが妖魔様…?」

「えぇ、今日お越しになった妖魔様は猿(マシラ)の妖魔様です。美しく逞しい体つき、綺麗な翠の瞳。彼が高梨村をお守りしてくださっている神々しい存在です。」

「へ、へぇっ…」



村人に奉られて派手な衣装に身を包んで居たのは何も知らないさんほうちゃんの旅供、もん吉くんでした。確かに妖魔にしては人間のように美しい体つき、綺麗に輝く瞳を持っています。

彼が古代から崇拝されている妖魔だなんて。馬鹿馬鹿しくてさんほうちゃんは思わずプッと吹き出してしまいました。それにしても頭に被った王冠も赤いマントもなんだかかなり不自然です。



『んあぁっ…ガミガミお師匠様が居ねぇから何でもやりたい放題だぜっ!おーいっ、人間!そこに置いてある黄色い果物、それよこせ!』

『はい、畏まりました…』

『んんんめぇー!なんだコレ、やばうまじゃんっ!おーいっ、人間!その黄色いのもっとたくさん持ってこいっ!』



ガミガミお師匠様が居ないことで完璧に調子ずいているもん吉くんを遠くから見ていたさんほうちゃんと妖魔の二人。これはある意味大変な儀式になりそうだと思っていました。

それにこれでチェンさんは救われたなと安堵したのも事実です。まぁ、絶倫性欲妖魔もん吉くんも素敵な女性が生贄…なんて聞いたら喜んでしまうでしょうが。



「チェンさん、大丈夫です!彼は私達の仲間です!」

「えっ…?」

「絶対何も変なことはしません。彼はバカです。普通の妖魔と違ってアホですから、」

「はははっ、さんほうちゃん…バカだのアホだのもん吉が居ないのを良いことにぼろくそ言うねぇ、」



笑顔になったチェンさんは村の人に連れられもん吉くんが寛いでいる塔に上りました。

もん吉はそんなことしないだろう安心している妖魔の二人。しかしさんほうちゃんはもん吉くんがどう出るのか…少し不安に思っていました。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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