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victim sutra



妖魔3匹、人1人、馬1匹になった一行は辛い長旅で疲れた身体を癒すべく、山間にあった小さな山小屋で一休みすることにしました。

季節は変わり、寒い冬になったこの地方ではあまり人気が無く物寂しい雰囲気が漂っています。何でも昔、強い妖魔に生贄を捧げていた村が近くにあったとか無いとか。怖い噂を聞いたさんほうちゃんは思わず隣に居たが太郎くんの胸に顔を埋めてしまいました。



「と、とん平!もういいです!生贄なんて恐ろしい、そ…そんなの嘘に決まってますっ!」

「まぁまあ、さんほうちゃん。とん平も悪気があって話したわけじゃないですから。ねぇ?そうでしょ?」

「う、うん…」



そんな三人のやり取りを蚊帳の外で聞いていたのはまたもいけ好かない様子のもん吉くんです。ケイアイしていると言ってくれたのにさんほうちゃんがいつも頼っているのはイケメンのが太郎くんの気がします。

しかも狭い小屋で怯えるさんほうちゃんを優しく介抱しているが太郎くんは満更でもなさそうです。



「が太郎さんは私が生贄になってしまったとしたらどうしますか?」

「えっ、それは勿論…全力で助けに行きま

「うああああっ!!うっせー、が太郎っ!お師匠様とイチャイチャしてぇんなら外行け、外!!」



とうとう堪忍袋の尾がキレてしまったもん吉くんは寒いのに山小屋の戸を開け二人一緒に出ていけばいいと言い出しました。もん吉くんはさんほうちゃんを取られてが太郎くんに嫉妬をしているのです。

それでも出ていかない二人を見たもん吉くんはなら自分が出ると行って吹雪の中、山奥に飛び出してしまいました。



「も、もん吉!」

「待ってさんほうちゃん!こんな吹雪の中行くのは危険だよ。もん吉は妖魔だから平気だろうけどキミは人間だから、」

「で…でもっ、」



とん平くんに止められたさんほうちゃんは雪で見えない景色の先をずっと眺めていました。妖魔だからといってこの吹雪は危険であるととん平くんは分かっていました。

それでも道連れになることは無いと暖かい小屋の中でさんほうちゃんを落ち着かせることにしました。









吹雪が落ち着いて翌朝、日光の日差しで雪が幾分か溶けたため歩ける道が出来ていました。先に進みたい一行ですが、もん吉くんを探すことを優先に溶けて出来た道を道なりに歩みはじめることにしました。



「ったく、よくこんな中外に出たな。あのバカ猿、」

「しかもさんほうちゃんと話していただけであんなに怒られるとは。これで二回目だけどね、」

「えっ、が太郎さん。それはどういう意味ですか?」



二回目の意味。それはが太郎くんがさんほうちゃんを連れ攫って強引に婚約式を挙げようとしていた時のこと。

たまちゃんに連れられて河童村に辿り着いたもん吉くんはさんほうちゃんを好き勝手しようとしていたが太郎くんにとても腹を立たせていました。その時、が太郎くんはもん吉くんに『オレのお師匠様に触れんじゃねぇ!』と言われたらしいのです。



「それはそれは怖かったですが、貴方を守りたいという想いがひしひしと伝わってきましたよ。」

「…そ、そうですか。」

「もん吉は嫉妬深い性格のようですね。これからは気をつけないと。」



嫉妬なんて言うものは恋愛感情がある上での話しだと思っているさんほうちゃんには少し難しいことでした。まさか妖魔が自分にそんな感情を持つなんて最初から全く信じていません。

確かに性欲が旺盛であったり、感情的になりやすいと妖魔なのに不可解な点はいくつかありますが。



「さんほうちゃん、待って!」

「えっ?」

「この先は人の集落があるんだけど…俺、バレちゃうといけないから、ちょっと変装するね。」



とん平くんに引き止められたさんほうちゃんとが太郎くん。目の前には賑やかな人間の集落がありました。

彼が変身すると言うのは猪とバレないよう尻尾と耳を隠すことのようで、ピンク色の耳はお気に入り帽子、尻尾は下履きにしまえば誰がどう見ても人になります。それを見たが太郎くんも自分の蹼を気にしますが、隠せるものが無いのでそのまま進むことにしました。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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